南アルプス南部調査人、四国遍路を歩く⑪香川県の遍路道 概要と特徴

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弘法大師・空海が修行した地・四国と、ゆかりの八十八寺をお参りする巡礼・四国遍路。南アルプス南部を主なフィールドとして長らく山歩きに傾注してきた筆者が、数カ月にわたって通い続け、歩き遍路を結願(けちがん、すべての霊場を回り終えること)した。その記録とともに、登山経験豊富な筆者ならではのアドバイスをつづっていく。

写真・文=岸田 明 カバー写真=結願寺・大窪寺へ向かう女体山の山頂付近から讃岐平野を見下ろす。中央左の平野部が高松市、中央右の台形が屋島、さらにその右の突出している山が五剣山

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弘法大師ゆかりの地・香川県

弘法大師・空海は香川県善通寺市の生まれで、県下にはゆかりの地が数多く存在する。よく知られた場所としてはまず、第七十三番出釈迦寺がある。出釈迦寺の奥には、捨身ヶ嶽禅定(しゃしんがたけぜんじょう、禅定とは修行の場のこと)のある我拝師山がそびえている。弘法大師が7歳の時、衆生(しゅじょう、生命のあるものすべての意)を救おうとして命をかけて我拝師山から飛び降りたところ、釈迦如来と天女が現われ真魚(まお、弘法大師の幼名)を抱きとめたとされる。

続いては、弘法大師が幼少の頃、経典の修学をしたと伝えられている弥谷寺がある。弥谷寺は弥谷山の中腹200m超の所にあり、獅子が口を開いたような獅子の岩屋と呼ばれる岩窟があり、弘法大師が窓からの光で学問修行に励んだという。弥谷寺は岩峰に張りつくように立っていて非常に神秘的な雰囲気があり、諸説あるが恐山(おそれざん)、臼杵磨崖仏(うすきまがいぶつ)とともに日本三大霊場の一つとされている。

そして弘法大師誕生の地である善通寺市には、真言宗善通寺派の総本山・善通寺がある。誕生の地に建てられたとされる御影堂(みえどう)は、弘法大師の家系である佐伯氏の邸宅跡地にある。なおほかの霊場では弘法大師を祀ったお堂を大師堂と呼ぶが、善通寺では御影堂と呼ばれ、本堂とは小路を隔てた別の敷地にある。

〉善通寺の御影堂入口の仁王門
善通寺の御影堂入口の仁王門

弘法大師は、仏教のみならずあらゆる領域において長けた才能を持ち、八十八霊場には弘法大師作と伝えられる仏像も多い。科学技術分野においてもその能力を発揮し、善通寺の奥の讃岐山脈の麓にある満濃池は、821年に空海が別当として再構築したため池である。堰堤は北アルプスにある黒四ダムと同じアーチ型で、弘法大師の技術力の高さをうかがわせる造りだ。湖畔には、満濃池を見下ろす弘法大師像の立つ別格第十七番神野寺(かんのじ)がある。

〉満濃池の護摩壇岩
満濃池の護摩壇岩。堰堤構築時、弘法大師が毎日護摩をたき、仏陀の加護を祈ったとされる場所だ
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プロフィール

岸田 明(きしだ・あきら)

東京都生まれ。中学時代からワンゲルで自然に親しんできた。南アルプス南部専門家を自認し、今までに当山域に500日以上入山。著書に『ヤマケイアルペンガイド南アルプス』(共著・山と溪谷社)、『山と高原地図 塩見・赤石・聖岳』(共著・昭文社)のほか、雑誌『山と溪谷』に多数寄稿。ブログ『南アルプス南部調査人』を発信中。山渓オンラインに記事多数投稿。また最近は四国遍路の投稿が多い。

四国遍路の記事:https://www.yamakei-online.com/yama-ya/group.php?gid=143/

歩き遍路旅の魅力と計画アドバイス

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