熊野古道小辺路。果無峠を越えて、熊野本宮大社へ
読者レポーターより登山レポをお届けします。naobonさんは熊野古道の小辺路(こへち)へ。
文・写真=naobon
十津川温泉から果無峠へ
2024年の年末山行は、実家のある神戸への帰省途中に、熊野古道の小辺路へ。小辺路は、高野山から熊野本宮までをつなぐ古道ですが、今回は、奈良県の十津川(とつかわ)温泉から果無(はてなし)峠を越え熊野本宮大社へ詣でる、最終部のルートを歩きます。十津川温泉に前泊し、翌朝に宿の部屋で朝弁当を食べ、日の出前から山行を開始しました。
十津川の集落を過ぎたころ、夜が明けてきました。徐々に明るくなりつつある道を登ると、台地上にぱっと開けた、果無集落に到着しました。ここは「天空の郷(さと)、奈良のマチュピチュ」と呼ばれているエリアです。集落内の生活道路が熊野古道となっていて、この道がいにしえから人々の生活と近い存在であったことがうかがえます。
果無集落を抜けると、果無峠へ向けて、本格的な登山道に入ります。ここから果無峠の急登を越えて八木尾(やぎお)バス停まで、西国三十三所の第三十番観音石像が設置されています。30番目からの逆順で、さまざまな表情をした観音様が道中を見守ってくれます。
途中、昔は稲作を行なっていたという「天水田跡(てんすいだあと)」を越え、観音堂前に到着し小休憩します。12月の山の空気は冷たく、水場の水が、美しい氷柱を作っていました。じっとしていると冷えるので、早めに歩き始めます。
さらに進むと、視界が開けて、熊野の山々を一望。秋に登った大峯山(八経ヶ岳、はっきょうがたけ)はすでに雪化粧をしていました。遠くから信仰の山を仰ぎます。さらに30分ほど登ると、この日の最高地点の果無峠(1043m)に到着です。
果無峠から道の駅に立ち寄り、本宮へ
果無峠から先、八木尾バス停までは、長い下りが続きます。道中を観音石像様が見守ってくれるのがなんとも言えない安心感があります。昔の人も、観音様を参りながら歩いていたのだと思うと、タイムスリップしたような不思議な気持ちになります。途中、地元の方々とすれ違いました。年末なので清掃と榊などのお供えをされているそうです。こうした地元の方々に守られ続けて、今の古道が残っていることに感謝します。
三十丁石を過ぎたあたりで視界が開け、蛇行する熊野川とめざす本宮方面が見えました。この熊野川を昔の人も見て、本宮に思いをはせたのでしょうか。
麓の集落に着くと、八木尾バス亭までもうすぐです。2番の観音様までお参りできたのですが、あろうことか1番の観音様を見つけることができませんでした。後で地図を確認すると、バス停から少し離れたところにおられたとか。次回の課題です。
八木尾バス停からは道の駅までは車道歩きとなります。道標に従い、熊野川沿いの道をしばらく歩くと、道の駅「奥熊野古道ほんぐう」に到着です。ここは、お土産のほか地元の食材なども置いてあり、年末ながら買い出しの地元のお客さんでにぎわっていました。ここで遅めのお昼ごはん、名物・めはり寿司とうどんで、腹ごしらえをします。
道の駅からは、いよいよ今日のゴール、そして小辺路のゴールでもある熊野本宮大社をめざします。道標に従い古道に戻り、さらに10分ほど歩くと、三軒茶屋跡に着きました。ここが中辺路(なかへち)との合流点、いよいよ熊野本宮大社まであと少しです。
先を進み、「ちょっとより道」の看板に従い、大斎原(おおゆのはら)を見渡せるビューポイントに立ち寄ります。大鳥居が鎮座している壮観な風景が目の前に広がり、気持ちも高まります。元の道に戻り、しばらく下ると、熊野本宮大社に到着しました。
熊野本宮大社は、新年の準備中で、詣でる人も絶えず、にぎやかでした。熊野本宮大社で1年のお礼をお伝えしたあと、バスで十津川温泉まで戻り、湯泉地(とうせんじ)温泉で旅の汗を流しました。冬の穏やかな熊野詣で身も心も爽やかな気持ちになった2024年末でした。
(山行日程=2024年12月30日)
MAP&DATA

naobon(読者レポーター)
東京都在住、神戸市出身。夏山シーズンは日本アルプスの稜線縦走を、冬は低山・里山ハイキングや山城巡りを、気ままに楽しんでいます。山行後の温泉とビールにこの世の極楽を感じる、週末ハイカーです。
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