ロウバイの甘い香りが満ちる宝登山と長瀞アルプス・ハイキング
読者レポーターより登山レポをお届けします。上町嵩広さんは秩父・長瀞(ながとろ)アルプスを縦走し、ロウバイ咲く宝登山(ほどさん、497m)へ。
文・写真=上町嵩広
そろそろロウバイが見頃を迎えそうかなと思い、秩父の宝登山へ行ってまいりました。秩父鉄道・野上駅から長瀞アルプスの稜線を縦走して宝登山に登頂し、山頂域のロウバイ園を観賞してから麓の宝登山神社へ下山します。帰りは秩父市街に寄り道する、観光半分の山旅です。
秩父鉄道・野上駅からスタート。国道140号(秩父往還)を渡り、しばらく道なりに進むと萬福寺(まんぷくじ)にやってきます。その手前を左の路地に入ると登山道入口です。森の中の登坂を上がっていくと、やがて稜線に出ました。
丘陵の林はクヌギやコナラなどの落葉広葉樹が中心でしょうか。木枯らしに吹かれて葉をすべて落としています。この日は大きく青空が広がり、冬の日差しが林の樹幹の合間を通り抜けてまぶしいくらいです。
このあと稜線に沿うように登山道が続きます。波打つように多少の起伏はありますが、なだらかな尾根歩きは快適です。おしゃべりでもしながらハイキングするにはうってつけの道のりでした。小鳥峠を過ぎると舗装された林道にいったん合流して右手へ宝登山に向かいます。
やがて左手に「毒キノコに注意」の看板が現われるとふたたび登山道となります。ここからは山頂まで長い階段道が断続します。けっこうキツイ! 4つほど階段を上がりきると宝登山の山頂です。南西方向に秩父の山並みが広がっています。武甲山の尖った山容そして横にギザギザと延びる両神山の稜線が一目瞭然です。冬の澄んだ空気のおかげですばらしい眺望に恵まれました。
山頂の南側の斜面にロウバイ園があります。15,000㎡に約3,000本のロウバイが植栽されており、関東では代表的なロウバイ園のひとつだそうです。このときはおおよそ四分咲きといったところでしょうか。慢性鼻炎気味で鈍い私でもその甘い香りがよくわかりました。
山頂の北側には宝登山神社の奥宮があります。宝登山はヤマトタケルゆかりの山です。ヤマトタケルが東征の際にこの地を訪れ、野火に巻かれて危機に陥ったところ、ヤマイヌ(オオカミ)がこれを食い止めてヤマトタケルを救ったとされています。そこから「火止山」(ほどさん)と呼ばれ、やがて「宝登山」と転じたようです。そのため奥宮の狛犬はヤマイヌ(オオカミ)を模しているそうです。
ロウバイの斜面をゆっくりと観賞しながら下っていくと宝登山ロープウェイ山頂駅です。ロープウェイ駅の脇の登山道から下山します。砂利交じりの道がうねうねとつづら折で麓の宝登山神社まで続きます。花や眺望などもなく楽しみがないので速足気味にブレーキをかけずに一気に下り切りました。
宝登山神社に出て、登山の無事を感謝してお参りします。下の社殿の狛犬は普通の狛犬でした・・・なぜ? 社殿はたいへんみごとです。いわゆる権現造りといわれる様式で日光東照宮と同様。まさに東照宮さながらの彩色された彫刻の装飾は絢爛豪華です。宝登山神社は秩父三社として秩父を代表する神社のひとつ。こちらを拝観するだけでも来訪する価値アリといえるかもしれません。
さて、この日は下山したのが12時過ぎ。後半は秩父観光を楽しみます。参道を東に進み秩父鉄道長瀞駅を越えて荒川の川岸に足を延ばします。岩畳といわれる有名な景勝地があります。ミルフィーユのように薄い膜を積み重ねた様相の岩礁と、その間をゆっくりと流れていく荒川の奇景はなかなかみごとです。秩父・長瀞が紹介されるときによく使われる風景ですね。
このあとは秩父市街に出ました。まずは名産品である豚の味噌漬けを使った“豚味噌丼”を新世界さんでいただきます。この日は豚肉3枚乗せの大盛を注文。丼からはみ出すサイズのボリューム感。味付けは意外にもサッパリしており飽きることなく最後までおいしくいただけました。
秩父鉄道・秩父駅から西武鉄道・西武秩父駅へ番場通りを抜けて向かいます。この通りは秩父の古くからの商店街。個人的には古い造りの建物が残っているところがお気に入りです。洋館や和洋折衷様式の建物など大正時代を彷彿とさせてくれます。旅の最後に西武秩父駅併設の“ちちぶみやげ市”でしゃくしな漬けを購入して帰京しました。
東京生まれ東京育ちの私は、親戚がいる神奈川や千葉には比較的なじみがありますが、埼玉は縁があまりありません。そのため秩父あたりに来ると小旅行に来た気分がぐっと高まります。だから登山だけでなくちょっと観光を楽しみたくなってしまいがちです。
宝登山と長瀞アルプスのハイキングは冬でもお手軽に山を楽しめて、合わせて秩父観光も堪能できるお得な登山です。今度はもう少し暖かくなったころに来て、天然氷のカキ氷を頬張り、荒川の川下りとセットでさらに秩父を楽しみたいなと思いました。
(山行日程=2025年1月30日)
MAP&DATA

上町嵩広(読者レポーター)
登山歴は15年ほど。普段は奥多摩や丹沢周辺に出没し、八ヶ岳や北アルプスにも出張ります。好きな山は八ヶ岳の編笠山。山の抱負は「ちょっとだけ背伸びした山を登ってみる」。
この記事に登場する山
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