熊野御幸の道・熊野古道紀伊路④藤原定家が「よじ登る」と記した藤白峠から拝ノ峠を越える
熊野御幸(くまのごこう)とも呼ばれる熊野詣(くまのもうで)は平安時代中期、宇多(うだ)上皇によって始まったとされており、その後、白河上皇、鳥羽上皇など上皇たちによって毎年繰り返され、活況を呈することになる。紀伊路(きいじ)はこの熊野御幸の道として利用され、江戸時代には武士・農民をはじめ一般庶民による熊野詣でが盛んに行われ、「蟻の熊野詣」と形容されるほどにぎわった。
写真・文=児嶋弘幸、トップ写真=拝ノ峠近くから下津湾を望む
裏見の滝に立ち寄り、拝ノ峠を越える
地蔵峰寺に戻って、ミカン畑の間を農道と交差しながら南下する。県道に出る直前、路地を右にとって福勝寺(ふくしょうじ)へ。福勝寺には滝の裏側に回りこめる裏見の滝があるので、ぜひ立ち寄りたい。
福勝寺への分岐まで戻った後、加茂川にかかる土橋を渡り、市坪川(いちつぼがわ)沿いの道に入る。橘本神社、山路王子(やまじおうじ)神社を経て、ミカン畑の急坂を登りつめれば拝ノ峠だ。白倉山(しらくらさん、 しろくらやま)西側の水平道を進むと、右手に下津(しもつ)湾の展望が開けてくる。
蕪坂(かぶらざか)王子跡を経て蕪坂の古道を一気に下る。太刀の宮を過ぎたあたりにはミカン畑が広がっており、早春の頃には花の香りが漂う。
急坂を下り終えた公園の一角には山口王子跡が祭られている。Y字路を左に向かい、かつて旅館宿が軒を並べたという道を直進。熊野古道ふるさと広場前の四ツ辻を直進して踏切を渡り、すぐの分岐を右にとれば紀伊宮原駅はすぐだ。
ちなみに、熊野古道ふるさと広場前の四ツ辻先にある分岐を斜め左へ進んでいくと有田川の渡し場跡に出るので、寄り道して駅に向かうのもよいだろう。
プロフィール
児嶋弘幸(こじま・ひろゆき)
1953年和歌山県生まれ。20歳を過ぎた頃、山野の自然に魅了され、仲間と共にハイキングクラブを創立。春・夏・秋・冬のアルプスを経験後、ふるさとの山に傾注する。紀伊半島の山をライフワークとして、熊野古道・自然風景の写真撮影を行っている。 分県登山ガイド『和歌山県の山』『関西百名山地図帳』(山と溪谷社)、『山歩き安全マップ』(JTBパブリッシング)、山と高原地図『高野山・熊野古道』(昭文社)など多数あるほか、雑誌『山と溪谷』への寄稿も多い。2016年、大阪富士フォトサロンにて『悠久の熊野』写真展を開催。
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