低山だけど侮れない険阻な岩尾根から、ミツマタ咲く金色の花園へ。丹沢・三峰山から不動尻
読者レポーターより登山レポをお届けします。上町嵩広さんは丹沢の三峰山(みつみねやま、934m)からミツマタが見頃の不動尻(ふどうじり)へ。
文・写真=上町嵩広
丹沢・不動尻のミツマタが見頃を迎えたと聞き、三峰山から不動尻に向かいました。歩き応えのある三峰山登山の締めくくりに、かわいらしいミツマタの花の群落をゆっくりと心ゆくまで満喫できる山行でした。
小田急線・本厚木駅から路線バスに乗り、煤ヶ谷(すすがや)バス停で下車してスタートです。この日は平日なので、下車したのはポツンと私ひとりだけ。ちょっと心細い。丹沢の三峰山は標高1000mに満たない低山ながら、岩場やヤセ尾根など険路の登山ルートとして知られています。
バス通りの県道64号から横道に折れて畑の脇の道を進み、森に入ります。シカ除けの柵があり登山道が始まります。柵のそばに置かれているヤマビルの忌避剤がありがたい。針葉樹の林をしばらく登っていくと雑木林に変わっていきます。春を迎えて広葉樹も若葉を芽吹かせていました。
物見峠への分岐に差しかかると「無理をしないでこの先へ進まずに引き返す勇気が必要です」との警告看板が立っています。岩場の通過に慣れていない方が初めて訪れると、面喰うかもしれません。今回は分岐を右手に進み、物見峠を経由して三峰山への稜線に取り付きます。
山腹をトラバースするように道が付けられていますが、ところどころ道が荒れています。崖下への路肩が崩れていたり、崖上から砂礫が流れ落ちてきていたり。しばらくすると尾根を人工的に掘ったかのようにえぐれている物見峠に到着です。
峠からは左手へ三峰山への稜線への本格的登りです。なかなかの急傾斜の階段道が続きます。無理せずにマイペースでゆっくりと小さな歩幅で上がっていきます。いったん上がり切って稜線に出るとホッと胸をなで下ろします。東側には視界が開けています。相州アルプスのほうだと思われますが、春霞でぼんやり。そういえば、前日には黄砂が飛ぶとの予報が出ていました。
しばらくはなだらかな稜線歩きとなり、先ほどの分岐との合流点までやってきます。三峰山まであと2.2km。やがて三峰山と思われるピークが、木立の向こうに姿を現わしました。西側にも視界が開け、塔ノ岳や丹沢山などの丹沢主脈らしき山並みが見えてきます。
この先は小刻みにピークが連続して登降を何度も繰り返し、露岩帯の稜線の始まりです。鎖やロープが張られていますが、高度感はあまりなく、スタンスやホールドもしっかりとあります。ただ狭かったり、足を置くときに体の方向を入れ替えたりとけっこう歩きにくい。
一番手前の北峰の横を通過して中峰、最後の南峰へ。木の根がバリケードのように張り出したヤセ尾根や宙に浮いた揺れる橋を渡り、まるで障害物競走のような道が続きます。最後にピークをぐるりと巻くように上がれば青空が見えて南峰に登頂です。
残念ですが三峰山はあまり眺望がありません。ちょうどお昼ごろだったので一つだけのベンチに腰掛けてピザパンを頬張ってエネルギー補給を済ませます。一休みしてからミツマタの群生地が広がる不動尻に向かって下山開始です。
下山もしばらくは山頂までの登りと同様に急傾斜の岩尾根が続きます。三峰山頂上の前後2kmくらいは似たようなシチュエーションの印象です。下りではザレているところもあるので足さばきにちょっと慎重になりました。
岩尾根が終わるとなだらかな広めの稜線に出ました。その先に分岐があり、不動尻へは左手にある斜面を下る道に入ります。開けた明るい谷をつづら折りで急降下。鎖が架かった一枚岩の壁を下ると、その先から沢沿いの道となります。
しばらく進み、森の様子が濃くなってくると、ぽつぽつとミツマタが現われます。不動尻の広場に着くとミツマタの群生が広がっています。球状のミツマタの黄色い花がほぼ満開です。多くの人が写真を撮り、花に顔を寄せて甘い香りを楽しんでいました。
さらに右手の斜面にはミツマタの大群生を見上げることができます。大群生に入るとそこは四方をミツマタに囲まれた庭園のようです。下山したところでまた斜面を上がらなければならないところがちょっとネックですが。
不動尻で花を楽しみ一息入れて、二ノ足林道を東へ。山神隧道と広沢寺温泉を経て県道64号に出ます。時計を見るとバスが来る時刻まであと3分。急いでコンビニエンスストア近くのバス停まで走り1分前に到着。本厚木駅行きのバスに運よく乗り込むことができました。
丹沢の三峰山は思いのほか険阻で、なかなかの歩き応えとおもしろさがある登山ルートです。丹沢の山の魅力の奥深さと妙味を感じられる山稜ではないでしょうか。さらに東京近郊では有数のミツマタの群生のお花見も満喫できます。ミツマタの花は例年ですと4月初頭まで楽しめるそうです。
(山行日程=2025年3月27日)
MAP&DATA

上町嵩広(読者レポーター)
登山歴は15年ほど。普段は奥多摩や丹沢周辺に出没し、八ヶ岳や北アルプスにも出張ります。好きな山は八ヶ岳の編笠山。山の抱負は「ちょっとだけ背伸びした山を登ってみる」。
この記事に登場する山
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