富士とサクラを眺めながら、三ツ峠山を歩く

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読者レポーターより登山レポをお届けします。東武さんは、山梨県富士吉田市にあるサクラと富士山の共演が外国人にも人気の新倉山浅間(あらくらやませんげん)公園から、三ツ峠山(みつとうげやま)へ。

文・写真=東 武


新倉山浅間公園は近年、海外からの観光客に大人気と聞きました。公園内にはサクラと富士山と五重の塔があり、一目で「これぞJAPAN」といった景色が楽しめるので評判らしいのです。おかげでサクラのシーズンは大混雑なのだとか。

とはいえ朝なら人も少ないのでは? と考えて、新倉山浅間公園をスタート地点にして三ツ峠山まで縦走する予定を立てました。

新倉山浅間公園では期待通り、サクラはほぼ満開でした。

サクラ満開の新倉山浅間公園
サクラ満開の新倉山浅間公園

天気は快晴でサクラもきれい。訪れたタイミングはよかったものの、噂通り来訪者はかなり多いようで朝8時の時点で交通整理が始まっていました。展望台もすでに長蛇の列です。

あとで知ったのですが、新倉山浅間公園はサクラの時期の交通渋滞が問題になっているようです。地元のためには渋滞する車ではなく電車で来訪し、景色を楽しませてもらったらあまり長居はしないほうがいいのかもしれません。並んで展望台に入らなくても、公園内では大きな富士山とサクラの共演が見られます。

新倉山浅間公園 サクラと富士山
展望台に入らなくても、サクラと富士山が楽しめます

公園から直結の山道で新倉山の山頂をめざします。それまでのにぎやかさが嘘のように山道は人も少なく、静かな山歩きが楽しめます。

景観に優れた浅間公園と違い、新倉山の山頂は木々に覆われてほとんど景色が見えません。山頂から5分ほど歩いた御殿という場所では富士山が見えるので、景色を目当てに登るなら御殿まで進むのがよさそうです。

新倉山 御殿直下の急坂
御殿直下の急坂。転落防止のロープが張ってあります

御殿からは一度大きく標高を下げて、しばらくはまた平坦な道が続きます。あまり危険な箇所はありませんが、御殿からの直下と尾根道に戻る登り坂は急勾配で注意が必要でした。

道中、木々の隙間から河口湖が見えました。

木々の合間から見えた河口湖
木々の合間から見えた河口湖。葉の生い茂る時期になったら隠れそうです

スタートしてから3時間ほどで三ツ峠山に到着です。

「三ツ峠」という名前はひとつの山の名前ではなく、三つの山の総称で、それぞれ開運山(かいうんざん)・御巣鷹山(おすたかやま)・木無山(きなしやま)と名前がついています。

最初に到着したのは木無山で、木無山からは三ツ峠山の最高峰である開運山がすぐ目の前に見えました。

正面に見える電波塔のあたりが三ツ峠山の最高峰・開運山
正面に見える電波塔のあたりが三ツ峠山の最高峰・開運山

木無山には山小屋もふたつあり、自動販売機まで置かれていてるのでもし水分が足らなくなっても買い足せそうです。

木無山で休憩をして、三ツ峠山の最高点である開運山に向かいます。整備された登りやすい階段を上がるとすぐに開運山の山頂に到着です。

三ツ峠山・開運山の山頂
開運山の山頂

開運山の山頂からは富士山に御坂山地、南アルプスに八ヶ岳と絶景がどこまでも広がっています。

この日はどこを歩いていても、ほとんどずっと富士山が見えていましたが、不思議なことに何度繰り返し眺めても富士山が視界に入るたび「あっ、富士山が見える!」と感動しました。

三ツ峠山から眺める富士山
三ツ峠山から眺める富士山

富士山と自分の距離がちょっと変わるだけでも雰囲気が違って見えるので、新鮮な喜びを感じるのかも知れません。

景色を充分に堪能したら、三つ峠駅に向かって下山開始です。

開運山の山頂付近は片側が急斜面の崖になっています。道幅は充分にありますが、斜面側にずっと富士山が見えるのでついよそ見をしながら歩きそうになりました。景観のよさにうかれきっていたので、つまずいて転落しないよう気を引き締めました。

山側は大きな岩壁で、岩壁付近には水が滴っています。冬の時期であれば表面を伝う水が凍り付いて氷瀑のように見えるのだとか。この日は暖かく氷もほとんど溶けていました。

三ツ峠山 岩壁付近に溶け残っていた氷
岩壁付近に溶け残っていた氷

山頂から登山口まで2時間弱かけて下りました。

三つ峠登山口の看板が見えてこれで今日の登山は終了……ですが、ここから三つ峠駅までさらに1時間、歩いていかなければなりません。

三つ峠登山口
ここから三つ峠駅まで、あと1時間は歩きます

山道の1時間は平気なのにコンクリートで舗装された道の1時間歩くのはなんだか疲れます。仕方がない、これも登山の一部だ、と思って歩きましたが、うれしい誤算がありました。登山口から駅への道中の憩いの森公園にもたくさんのサクラが咲いていたのです。

登山を終えたあとも頭上を見上げれば絶景で、まだまだ景色を楽しむことができました。

この日は一日絶景続きの、すばらしい登山日和になりました。

憩いの森公園で見上げたサクラ
憩いの森公園で見上げたサクラ

(取材日=2025年4月16日)

MAP&DATA

高低図
ヤマタイムで周辺の地図を見る
最適日数:日帰り
コースタイム: 7時間20分
行程:下吉田駅・・・新倉山浅間公園展望デッキ・・・新倉山・・・御殿・・・霜山・・・送電線鉄塔・・・木無山・・・三ッ峠山(開運山)・・・達磨石・・・山祇神社・・・三つ峠駅
総歩行距離:約14,200m
累積標高差:上り 約1,329m 下り 約1,466m
コース定数:32
東 武(読者レポーター)

東 武(読者レポーター)

晴れた日は山に出没し雨の日には本を読む、そんな暮らしにあこがれる文系山男。文学サークル・ペンシルビバップを主宰している。山と文学と相模原市を愛してやまない。

この記事に登場する山

山梨県 / 富士山とその周辺 御坂山塊

開運山 標高 1,785m

 三ツ峠山は岩登りのゲレンデとして古い歴史がある。大正13年6月1日、沼井鉄太郎らにより試登され、その記録が発表された。昭和4年には富士山麓電気鉄道(現富士急行)が営業運転を開始し、新聞輸送を兼ねて、早朝3時前後の電車を運転していた。休暇の少なかった勤労青年も夜行日帰りが可能となり、多くの岳人を迎えた。  それ以前は、唯阿大和尚の開山になる信仰の山であった。富士急行の三ツ峠駅からの表登山道には今も数々の旧跡が残っている。  三ツ峠は、3つのドッケ(突起)から成り立ち、三ツ峠の字をあてた。これに二説がある。岩登りのゲレンデ、屏風岩のピークを開運山といい、二等三角点が埋設されている。これに北側の電波塔のある御巣鷹山、南の木無山を加えた総称。もう一説は、開運山の東のやはり電波塔のある中峰、東峰を含めた三峰の称。どうも後者の方が山名の由来にふさわしい感じがする。  ここから眺める富士山、南アルプス、北アルプス、奥秩父、八ヶ岳、道志の山など、眺望は絶品の一語に尽きる。  表登山道の三つ峠駅から4時間30分で山頂へ。最短コースは御坂トンネルの先の三ツ峠登山口バス停から1時間30分で山頂に達する。

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