アジサイの山・六甲山で「幻の花・シチダンカ」を楽しむハイキング。神戸市森林植物園から摩耶山へ
六甲山は「アジサイの山」といわれている。雨が少ない瀬戸内式気候のエリアにありながら、海が近くて急峻な斜面は上昇気流が発生しやすく、特にアジサイが開花する季節は、霧が発生することも多い。また花崗岩を母岩とする地質は、水はけがいい。六甲は、気候的にも土壌の面でもアジサイの仲間にとっては生育しやすい環境なのである。また弱酸性土壌のため、アジサイは美しい青色に発色し、その花色は「六甲ブルー」と呼ばれている。
文・写真=根岸真理、トップ写真=色とりどりのアジサイ
山田道から、アジサイの宝庫・神戸市立森林植物園へ
六甲山地西部の摩耶山(まやさん)の北西に、森林をテーマとする日本で唯一の植物園・神戸市立森林植物園がある。広大な園内にさまざまな樹木が植えられているが、この時期特に人気なのが「あじさい園」だ。六甲山の幻の花といわれたシチダンカをはじめ、25種350品種、約5万株のアジサイが育成され、日本でも屈指のアジサイの名所として知られている。開花期の6~7月には、全国からアジサイ好きの方が訪れる。一方、摩耶山上には摩耶自然観察園があり、標高が高く冷涼なため山麓や中腹より少し遅れてアジサイが開花する。
今回は、六甲山のこれら2箇所のアジサイの名所を巡るコースをご紹介。本コースを歩けば、アジサイの咲き加減の違いを楽しめ、また途中の登山道にも自生種のアジサイの仲間が点在しているので、多彩なアジサイが見られるのも魅力だ。
起点は、神戸市営地下鉄で三宮(さんのみや)駅から約10分の谷上(たにがみ)駅。かつて六甲山地の北側と海側を結んでいた山田道(やまだみち)をたどって、森林植物園をめざす。
駅から線路の北側を西に向かい、川沿いに上流側へ続く登山道に入る。阪神高速7号北神戸線の高架をくぐると、やがて山道になる。大きな堰堤を右から越え、ダムがせき止めた平坦地へ。橋がかけてあるところもあるが、増水時には登山道が水没したり、まれに橋が流されることもあるので、大雨の後などは注意が必要だ。
少し上流側でももう1回川を渡るが、現在は石を詰め込んだ大きな蛇籠が設置されて、渡りやすくなっている。
山田道は、とても歩きやすい道で特に危険な箇所もないのだが、大雨の後などにはたまに通れないコンディションのこともある。徒渉箇所で無理だと思ったら引き返し、西側から小倉台の住宅地を通り抜けるコースへ迂回するといい。
山田道の後半は造成地の縁を通って、西六甲ドライブウェイを横断し、森林植物園の正門へ。園内では、あじさい園へ向かう前に、せっかくなのでこの時期だけ公開される北苗畑(きたなえはた)と、アナベルなどの西洋アジサイが多く植えられている西洋あじさい園へも足を延ばしたい。
ところで、筆者は森林植物園に来ると必ず、カフェ「ル・ピック」のミルクソフトクリームをいただく。近くにある弓削(ゆげ)牧場のおいしい牛乳を使った名物メニューで、繁忙期には長い行列ができることもある人気商品だ。
アジサイのオンパレード
ひと休みしたら、いよいよあじさい園へ。園路の両脇にたくさんのヒメアジサイが植えられたあじさい坂を下り、つつじ・しゃくなげ園の分岐の先からシアトルの森へ向かう坂道を登っていくと、あじさい園の上部へ出る。下りながら、いろいろな種類のアジサイをたっぷりと楽しもう。
アジサイは、品種によって咲く時期が少しずつ異なる。比較的早く咲くのがシチダンカ、続いてクロヒメ、ヤマアジサイやアマチャ、その次にヒメアジサイやベニガクなどが続く。品種によって1カ月以上見頃が違うので、何度も訪れたくなる。
東門から直進して川を渡ると「トエンティクロス」に合流するが、東門を出たところから左手にある北へ向かう小さな踏み跡を進むと、川の上流側からトエンティクロスの登山道へ合流できる。生田川(いくたがわ)右岸のなだらかな道を進むと、約30分で桜谷(さくらだに)出合だ。
桜谷出合の対岸に渡り、右へ。ちなみに左へ進むと徳川道(西国往還付替道)で、幕末の頃に西国大名の参勤交代の一行が、黒船が来ている神戸の港を通らずに済むように突貫工事で作られた道だ。時間に余裕があるなら、この道を経由して、穂高湖へ寄り道してもいい。
プロフィール
根岸真理(ねぎし・まり)
六甲山西端の神戸市須磨区生まれ。現在は六甲山東端の宝塚市在住。アウトドア系を得意とするフリーライター。親に連れられ、歩き始めると同時に須磨の山に登っていたため六甲登山歴60年。アルパイン歴は約30年。 神戸新聞「青空主義」欄で月に1回六甲山の情報(六甲山大学)を発信中。主な著書に『六甲山を歩こう!』『六甲山シーズンガイド春夏』『六甲山シーズンガイド秋冬』など。兵庫県立六甲山ガイドハウスで「山の案内人」ボランティア活動中。
今がいい山、棚からひとつかみ
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