装備品の携行と使い方を熟知して安全を最優先した行動を 島崎三歩の「山岳通信」 第397号

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長野県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。第397号では、北アルプス霞沢岳における道迷い遭難について言及。アクシデントに対する準備と冷静な判断の大切さを説明している。


6月3日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第397号では、期間中に起きた9件の山岳遭難事例と、以前に起きていた行方不明案件について説明。以下に抜粋・掲載する。

  • 5月26日 (月)、北アルプスの奥穂高岳で、単独で入山した50歳の女性が、北アルプス涸沢から奥穂高岳に向けて登山中に滑落して負傷した。

  • 5月27日(火)、北アルプスの霞沢岳で、単独で入山した30歳の男性が、入山後に道に迷い、行動不能となった。

  • 5月28日(水)、北アルプスの蝶ヶ岳で、2人パーティで入山した79歳の女性が、横尾から蝶ヶ岳に向けて登山中に転倒して負傷した。また、同行者である84歳の男性は、疲労により行動不能となった。

  • 5月29日(木)、諏訪市と伊那市との境にある守屋山で、2人パーティで入山した81歳の男性が、下山中に疲労により行動不能となった。

  • 5月30日(金)、北アルプスの蝶ヶ岳で、単独で入山した49歳の男性が、蝶ヶ岳から下山中に滑落して負傷した。

  • 6月1日(日)、北アルプスの北穂高岳で、単独で入山した77歳の男性が、北穂高岳から下山中に滑落して負傷した。

  • 6月1日(日)、北アルプスの槍ヶ岳で、2人パーティで入山した30歳の女性が、槍ヶ岳から東鎌尾根を下山中に滑落して負傷した。また、同行者である40歳の男性は技量不足により行動不能となった。

<行方不明者の発見>

  • 5月19日(月)、1月初旬(1月5日に認知)に単独で戸隠連峰に入山したまま行方不明となっていた39歳の男性は、なんらかの原因で転落して遺体で発見された。

  • 5月26日(月)、単独で雨飾山に入山し、5月19日から行方不明になっていた52歳の男性は、なんらかの原因で行動不能になり、遺体で発見された。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

先週、長野県内では、9件の山岳遭難が発生しました。昨年の発生件数を上回る早さで前年同期比+7件となっています。

北アルプスなどの標高の高い山域では、いまだ多くの残雪があり、ピッケルやアイゼンなどは必須装備です。5月27日に発生した北アルプス霞沢岳における道迷い遭難は、3日後の29日に捜索中の消防防災ヘリに発見、救助されました。

遭難者は、チェーンスパイクのみで、ピッケルは所持しておらず、残雪期の登山装備としては準備不足の感が否めません。しかしながら、アクシデントに備えた装備(防寒着、ガスバーナー、レスキューシート、食料)を携行していたこと、サバイバルの知識があったこと、また臨機応変に落ち着いて判断できていたことなどが生還の要因となりました。特に、沢の水が確保できたことや無闇に動かずに体力を温存し、持っていた装備をフル活用して諦めずに救助を待ち続けたことは適切な判断でした。

救助後、遭難者からは、「スマホの地図アプリだけでなく、紙地図やコンパスの携行は必要。登山講習や雑誌などで学んだことが生かせたので、山を歩くための知識や技術の大切さを実感した。とはいえ、登山する山に適した装備品が足りておらず、雪がそんなに多くないと思って過信してしまった」との反省の弁がありました。

このように登山中はどんなアクシデントが待ち受けているかわかりません。装備品の携行と使い方を熟知し、山を甘く見てはいけません。登山中は、冷静な判断と何よりも安全を最優先した行動をお願いします。

 

長野県山岳遭難防止対策協会からのお知らせ

信州登山案内人が「一期一会」の山旅をお手伝いします!

初めて登山をされる方、久しぶりに登る方、山をもっと知りたい方――。長野県が実施する筆記・実技試験に合格し、知事の登録を受けた山岳ガイド「信州登山案内人」と一緒に山旅を経験してみませんか。信州の山に精通した山岳ガイドが、楽しく、安全・安心な登山のお手伝いをいたします。詳細は、長野県Webサイト(山岳情報)をご確認ください。 
 ⇒信州登山案内人名簿はこちら 
 ⇒長野県内の登山案内人組合・山岳ガイド協会はこちら

あまとみトレイル(長野駅~斑尾山)西野発電所の吊り橋は、通行止め継続!

5月下旬に開通予定だった西野発電所(新潟県妙高市杉野沢)の吊り橋は、冬の間の大雪のため、手すりなどの破損が確認されました。管理元の東北電力によると、復旧の見通しは立たない状態だということです。迂回路等の詳細は、あまとみトレイルのWebサイトをご確認ください。

山小屋情報ポータルサイト~山小屋の開設(営業)期間を更新しました

春山シーズンの幕開けに合わせて、営業が始まった山小屋や夏山シーズンの営業を予定している山小屋の開設期間を順次、更新しています。長野県ホームページ(山岳情報~山小屋情報ポータルサイト)でご確認ください。 
 ⇒山岳情報~山小屋情報ポータルサイト

「山岳遭難の現場からNo.9」が発行されました!

長野県警山岳安全対策課では、春の大型連休中に八ヶ岳連峰で発生した実際の遭難事例を掘り下げ、その原因や背景を検証しました。リポートは、登山の抱えるリスクや遭難の実態を大勢の登山者に知っていただくとともに、遭難という最悪の事態を回避する具体的な対策について考える迫真の内容となっています。ぜひ、ご覧ください。 
 ⇒八ヶ岳連峰阿弥陀岳で発生した滑落遭難、救ったのは登山計画書だった

 

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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