フィット感と汗抜けのよさが秀逸な小型バックパック ラブ/ベイルXP20|高橋庄太郎の山MONO語りVol.117
フィールドテストへ
では出発! 今回のレポートのために僕はベイルXP20を背負って何度も山を歩いてみたが、ここで使っている写真の大半は沖縄の亜熱帯ジャングルである。
この日は薄曇りだったが気温も湿度も高く、本州であれば真夏のようなコンディション。ベイルXP20をテストするにはちょうどいい状況であった。
登って、下って、また登る……といった複雑な地形を長々と歩いていった。だが、胸元のポケットの収まり具合はつねに良好だ。
伸縮性の高いポケットは、水を飲むごとにしぼんでいくソフトフラスクをつねに包み込み、ポケット内に確実にキープして揺れ動かない。腕が当たったり、視界をさえぎるようなこともなく、使い勝手がいい。ただ、ショルダーハーネスにパッドが入っていないので、ペットボトルは胸に当たって、少し違和感もあった。
腰元のポケットも使いやすかった。さすがトレイルランニングなどのアクティビティに合わせたデザインになっているだけあり、わざわざ荷物を下ろさなくても背負ったままで左右のポケットへ楽に手を伸ばせる。
腰のポケットは左右で仕様がわずかに異なる。写真の右側はファスナーがなく、僕はここにウインドシェルを押し込んでおいた。一方、左側はポケットの上へさらにファスナー付きポケットも設けており、僕はここに紛失しやすい虫刺され用の小型ボトルをキープした。
このポケットがよくできていると感心したのは、その裏側に位置するモノメッシュ製のウエストハーネスと分離されていることだ。
上の写真を見ればわかるようにハーネスとポケットのあいだには隙間がある。そしてこのポケットは外側には伸縮するが、内側には伸縮しない。そのためにポケットへいくら荷物を押し込んでも、バックパックの腰へのフィット感を損なわないのである。
行動開始時点からバックパックのフィット感には大きな問題なかった。だが、何度か微調整を行なってみると、やはり体へのなじみ方はいっそう向上した。
伸縮性のあるドローコードは使っているうちに傷みやすいパーツの筆頭だ。しかしベイル20XPの胸元のコードは縫い付けられているのではなく、ループの部分へ通すように引っかけているだけ。だから簡単に自分で取り換えられるのがいい。
ウエストのハーネスの微調整も簡単である。
この日はずっとTシャツのままで行動していたが、次の写真は別の日に途中で雨が降ってきたときのものだ。
このときはレインウェアなどを着込んだためにウエストを少し緩める必要があったが、そんなときも一般的なウエストハーネスより簡単にフィット感を調整でき、なかなか快調であった。
このままいったん「雨」について話を進めよう。
ここまで説明を省いていたが、じつはベイルXP20の生地は撥水性が高いうえに防水性に富んでいる。しかも生地の縫い目にはシームテープが張られていて、内部に水分が浸透しない。
その防水性はなんと「IPX4」。これは「あらゆる方向からの飛沫に対して内部に影響がない」ことを表している。つまり台風のような暴風雨の中でも中身の荷物が濡れないのだ。また、もともと分厚い背面パッドによって背中と本体は仕切られているとはいえ、たとえ背中の汗で本体が濡れたとしても、内部のものが汗で濡れることがないわけである。
ただし、この防水生地自体は超薄手で穴が開きやすい。傷まないように注意しつつ、穴が開いたときにはすぐに補修しておかないと「IPX4」の機能性はキープできない。
雨がやんだ後、僕はレインウェアを本体のフロントのポケットに収めた。
ベイル20XPには外側と内側に合計10個のポケットがあるが、この部分がいちばん大きなポケットだ。伸縮性が高く、ヘルメットも収まるサイズ感である。
話を戻そう。この後も僕は歩き続け、場所によってはトレイルランニングのように小走りでも行動してみた。だが、荷物が内部で過度に揺れ動くこともなく、ストレスは感じない。
それに加えて感銘を受けたのは、気温が高いときでも“暑苦しくない”という点だ。もとからフォームパッドやスポンジのように熱気をため込む高密度なタイプではないとはいえ、背中と本体のあいだには厚み1cmほどの背面パッドがある。そしてこのパッドは驚くほどの弾力性と反発力をもつが、繊維が粗く絡んでいるだけで隙間だらけで、驚くほどの弾力性と反発力がある。そのために背面パッドがポンプのような作用をもたらして背中付近の換気を促し、湿気と熱気を効果的に排出してくれるのだ。だから背負ったまま歩いていても、背中が暑くない。
ただし、背面にポンプ的な換気性を感じるのは、あくまでも歩行中に体が前後左右に動き、背面パッドが押しつぶされるような動きがあったときだけだ。休憩中は荷物を下ろしたほうが涼しいのは言うまでもないが、荷物を下ろさなくてもボトルなどの必要なものが取り出せるのがベイルXP20のよさのひとつなのでもあった。
まとめ:最先端を行く超高機能な小型パック
トレイルランニングやスピードハイク用のバックパックの流れを汲んだデザインが印象的なベイルXP20。
僕がいちばん感心したのは背面パッドの機能性だ。ベイルXP20のような背面パッドは初めての体験だったが、疎水性のモノメッシュとのコンビネーションで非常に快適。暑苦しいコンディションでも背中に熱や汗がたまりにくく、クッション性も上々だ。大いに気に入ってしまった。
気になる点があるとすれば、コンプレション機能が弱いことだろうか。今回は20Lパックに充分な量の荷物を入れていたために内部での荷物の揺らぎはほとんど感じなかったが、荷物の量が半分程度だったら下部に荷物がたまり、重量バランスが崩れて行動しにくくなったと思われる。この「ベイル」シリーズにはランニングベストタイプならば6Lや12Lもそろえられているが、バックパックタイプはほかに30Lしかない。バックパックタイプにももっと小さいサイズ、たとえば15L程度があれば、荷物が少ない人にはますます使い勝手がよさそうだ。
ともあれ、ベイルXP20は軽量でいて体へのフィット感がすばらしく、背負ったままで使えるポケットが充実。しかも防水性までが非常に高い。これはまさに現代の最先端を行く超高機能な小型バックパックである。今後ますますこのようなタイプが増えていく気がしてならない。
今回のPICK UP
ラブ
ベイルXP20

| 重量 | 463g |
|---|---|
| 価格 | 27,500円(税込) |
プロフィール
高橋庄太郎の山MONO語り
山岳・アウトドアライター、高橋庄太郎さんが、最新山道具を使ってレポートする連載。さまざまな角度からアウトドアグッズを確認し、その使用感と特徴を余すことなくレポート!
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