ちょっとドキドキ探検気分の青木ヶ原樹海でコケの森ハイキング
読者レポーターより登山レポをお届けします。上町嵩広さんは富士山麓の青木ヶ原(あおきがはら)樹海へ。
文・写真=上町嵩広
「青木ヶ原樹海」というと、子どものころに「方位磁石がくるくると回って使い物にならなくなる」とか「一度迷い込んだら二度と出てこられなくなる」などと恐ろしい都市伝説を聞かされた影響で、なかなか近寄る気になれない場所というイメージがありました。
しかし、実際の青木ヶ原樹海は、遊歩道や東海自然歩道が整備され、また風穴・氷穴などの観光スポットもあり、ハイキングを楽しめる場所です。梅雨入りしてしっとりと潤った新緑の森を歩きに行ってみました。
河口湖駅から路線バスに乗り、今回のスタート地点となる「コウモリ穴入口」バス停まで移動、と予定しておりましたが、トラブル発生。バスが全然来ない……。なんとイベント開催のため運休でした。事前にきちんと調べておけという教訓ですね。仕方なくタクシーで移動。想定外の出費でイタい!
気持ちを切り替えてハイキング開始。まず西湖ネイチャーセンターに隣接したコウモリ穴を探検(?)です。レンタルヘルメット着用して入洞します。入口からすぐに冷気がひんやりと漂ってきました。内部はゴツゴツとした岩肌が全面に広がっています。薄暗いなか体をかがめて両手を使い、はいつくばるようにしなければ進めない狭い空間もあり、探検感が高まります。
洞窟内は寒い! 学生時代にホテル併設の大きなレストランで働いており、そこには食材をストックする6畳くらいの冷蔵室がありましたが、それを思い出しました。まさに天然の冷蔵庫。洞窟から出たときの外気温との落差が大きいため、メガネがしばらく曇ってしまいました。
15分程度の洞窟探検に続いて、青木ヶ原樹海ハイキングです。前日から降り続いていた雨はこの日の朝にやみ、洞窟を出て外を見上げれば青空を見ることもできました。青木ヶ原樹海はヒノキ、ツガやモミなどの針葉樹を中心に大木も多く、深い森が静かに広がっています。溶岩や朽ちた木を覆うコケたちも雨上がりのため生き生きとしているようです。
樹海の中の道と思うと、いまだに頭の隅から不安感が拭いきれません。しかし、トレイルは樹海遊歩道として整備されており、ナンバリングされた道標が要所に設置されています。また道幅も広く踏み跡もしっかりとしており、さらに起伏も少ないためとても歩きやすいです。
青木ヶ原樹海は平安時代初期の大噴火で、富士山の北西側に溶岩が大量に流出したことにより形成されました。そのため自然の森林としては1200年ほどの歴史であり、若い森に分類されるそうです。富士五湖の西湖と精進湖はもともと1つの湖だったようですが、このときの流出した溶岩により埋められ分断されたとのことです。
「溶岩の大地」というと不毛の地のようなイメージがありました。たしかに花などはほとんど見かけませんが、八ヶ岳や屋久島のように苔むした森が特徴的です。トレイルから外れた森の奥には黒くゴツゴツとした溶岩由来の岩石や、大小の洞穴など、やはりダークで神秘的な雰囲気が漂っています。
決して明るく開放的な森ではありませんが、さまざまな鳥たちも盛んに鳴き交わしており寂しさはあまり感じません。公共交通機関を利用してアクセスしやすいにもかかわらず、コケの森の景観を楽しめる青木ヶ原樹海は、なかなか貴重な存在ではないでしょうか。
樹海内を西湖野鳥の森公園の方へ向かい、途中で富岳風穴へと転進します。やがて国道139号に出て左へ進むと富岳風穴に出ます。さらにその脇を通る東海自然歩道のトレイルを進めば、鳴沢氷穴という2つの洞窟を続けて楽しむことができます。
風穴と氷穴の内部には、地下水などがしみ出して凍った天然の氷柱なども見ることができます。これらの洞窟でできた氷はかつて東京などの消費地へ供給されていたそうです。風穴は水平的な横穴、氷穴は垂直的な縦穴と個性がそれぞれあります。
氷穴を抜けて国道139号を東へ進むとおよそ2km先に「道の駅なるさわ」があります。今回はここがゴールです。道の駅には地場名産品の販売があり、隣接して「なるさわ富士山博物館」や「日帰り温泉富士眺望の湯ゆらり」もあるのでハイキング終わりにはぴったりです。
樹海遊歩道は樹海全体のごく一部(西湖の南西側)です。しかし、東京から比較的便利なアクセスで歩くことができ、苔むした深く静かな森の雰囲気が魅力的でした。またコウモリ穴や風穴・氷穴などの貴重な洞窟見学もおもしろかったです。西湖ネイチャーセンターから道の駅なるさわまで洞窟見学を含めて3時間程度。ゆっくりと森歩きを満喫し、自然の驚異を体感できるハイキングコースでした。
(山行日程=2025年6月15日)
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上町嵩広(読者レポーター)
登山歴は15年ほど。普段は奥多摩や丹沢周辺に出没し、八ヶ岳や北アルプスにも出張ります。好きな山は八ヶ岳の編笠山。山の抱負は「ちょっとだけ背伸びした山を登ってみる」。
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