初夏の三嶺 たおやかな新緑の山歩きを楽しむ
読者レポーターより登山レポをお届けします。naobonさんは四国の徳島県、高知県の県境にある三嶺(みうね、1894m)へ。徳島県側から登頂をめざします。
文・写真=naobon
6月半ば、長年の憧れの山、四国の三嶺に行きました。三嶺は日本二百名山、花の百名山で四国一美しい山ともいわれる名山です。この季節、山頂付近に、コメツツジも見れるかも、との期待も膨らみます。前日は、登山口に比較的近い奥祖谷(おくいや)にある民宿に宿泊しての、日帰り登山です。
今回は名頃登山口(なごろとざんぐち)を利用しました。登山口は水洗トイレもあり非常に整っていました。8時過ぎに着くとすでに満車近く。車のナンバーも四国にとどまらず、関西や中国方面もあり、人気の山であることがうかがえました。
登山口(標高900m)からしばらくは樹林帯の道をひたすら登ります。ブナやミズナラの新緑の道を50分ほど歩き、林道に出ます。平らで広場状になっているので、休憩にもちょうどよい場所です。
ここから少し傾斜が緩やかになり森林セラピー気分で心地よい山登りが続きます。このあたりは「リョウブ」の木が多いのだとか。途中、ハルゼミの抜け殻を発見。この森のどこかで羽ばたいているセミを想像し、命の躍動を感じます。ちなみにセミの抜け殻は、この辺り一帯の木々にたくさんあり、ちょっとした驚きでした。
林道から1時間ほど歩くと、ダケモミの丘に到着します。ここも広場状になっており、倒木がベンチのようになっているので、ここで小休憩し、昨日民宿に行く途中に購入したプチトマトをほおばります。とても濃厚で甘く、暑い季節の登山時のビタミン補給にぴったりでした。
ダケモミの丘から平坦な樹林の道を少し歩き道標を過ぎると、これまでとうって変わって急登にさしかかります。樹林帯を抜け、視界も広がります。この日は曇り基調だったので、幸いそこまでの暑さは感じませんでした。
狭い道なので、下山者とのすれ違いも慎重になります。このあたりから笹原が広がってきました。
さらに登り、水場の近くを通り過ぎると、三嶺ヒュッテとの分岐に到着します。目の前に三嶺がドーンとそびえます。頂上台地には池が水をたたえ、天空の楽園のような後継が広がっていました。
ここは頂上から周回できるので、先に頂上をめざし、下山時に三嶺ヒュッテに寄ることにしました。山頂付近にコメツツジの花も咲いていました。とても小さなかわいらしいツツジです。山頂からさらに先の天狗塚方面に群落があるとのことです。
最後のひと登りをして、頂上に到着しましたが、あいにく、ガスで真っ白です。先にすれ違った下山者の方も、今日は朝からガスガスだったとのこと。ちょうどお昼時だったので、ランチをしながら、ガスが晴れるのを待つことにします。今日のランチは焼きおにぎりです。時間がたっても香ばしい醤油の香りが食欲をそそります。
三嶺山頂は、剣山(つるぎさん)方面からの縦走路や、菅生(すげおい)登山口からの登山道など、いくつもの道の交差点にもなっています。各方面から人が登ってきて、ちょっとしたにぎわいになっています。晴れていたら三六〇度の大展望と、遠くは石鎚山(いしづちやま)や土佐湾(とさわん)まで見えるそうです。いつか、剣山と三嶺の天空の縦走路を歩いてみたい、と思いました。
山頂でしばらく休憩し、少しガスが晴れてうっすら稜線が見えたくらいでした。三六〇度の大展望は次の機会への楽しみとして、下山を開始します。まずは三嶺ヒュッテに向け、開放的な笹原の草原を歩きます。三嶺ヒュッテは池のほとりに立っています。避難小屋ですが、小屋の中もとてもきれいで整理されていました。壁には三嶺や近隣山域の手書きの地図もありました。
三嶺ヒュッテをあとにして、来た道を戻ります。しばらくはガレ場の急降下が続きますが、樹林帯に入り、往路と同様、ダケモミの丘で小休憩をとります。持参した地元産の柑橘、小夏の甘酸っぱさが疲れを癒してくれます。
そのまま樹林帯を緩やかに下り、登山口に戻ります。下山後は、近くの「祖谷渓温泉ホテル秘境の湯」に立ち寄りました。祖谷温泉は平家の落人伝説が残る秘境地です。ぬる湯でやわらかい炭酸水素塩泉で、疲労回復や筋肉痛にも効くとのこと、ゆっくり浸かって山旅の疲れを癒やし、帰路に就きました。
(山行日程=2025年6月21日)
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naobon(読者レポーター)
東京都在住、神戸市出身。夏山シーズンは日本アルプスの稜線縦走を、冬は低山・里山ハイキングや山城巡りを、気ままに楽しんでいます。山行後の温泉とビールにこの世の極楽を感じる、週末ハイカーです。
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