遭難するかどうかは、登る前に決まってしまう!? 山岳遭難事例にみる、SNS・ネット情報の落とし穴
多くの山岳遭難は、準備不足が原因となっている。2025年7月に刊行された『あなたはもう遭難している 本当にあったびっくり遭難に学ぶ登山の超基本』の著者・羽根田治さんに、SNSやネット情報に起因する山岳遭難について聞いた。
聞き手・構成=西村健(山と溪谷オンライン)

――羽根田さんといえば山岳遭難ルポの第一人者ですが、私にとってはアウトドアライターのイメージが強いんです。学生のときに初めて読んだ著書は鳩間島を描いたエッセイ『パイヌカジ』(1997年/山と溪谷社)でした。そんな羽根田さんが山岳遭難に取り組むことになったきっかけは?
岐阜県警の山岳警備隊への取材がきっかけでした。富山県警山岳警備隊の方が書かれた『ピッケルを持ったお巡りさん 登頂なきアルピニストたちの二十年』(1985年/山と溪谷社)という本があったんですが、次に岐阜県警の山岳警備隊の本を出そうということになって、編集をお手伝いしたんです。それが『山靴を履いたお巡りさん: 北アルプス飛騨側を護る山男たちの手記』(1992年/山と溪谷社)という本です。それまで、山岳遭難というとテレビや新聞などで報道されるくらいで、概要くらいしかわからなかった。でも、実際に山岳警備隊員に話を聞いてみると、さまざまな思いをもって救助に当たっていて、それが興味深くて、ひかれたのが始まりですね。
――取材執筆だけではなく、長野県の山岳遭難防止アドバイザーとして活動されていますね。
そうそう、アドバイザーの活動のなかには講演なんかも含まれるんですが、そうしたときは長野県に資料を出していただいています。あるとき資料の中に「入山前遭難」という言葉が出てきたんですよ。もともとは長野県で山岳遭難防止に長く関わっておられた丸山晴弘さんが書いた『遭難のしかた教えます 安全登山のための辛口レクチャー』(1985年/山と溪谷社)に出てきた言葉のようですが、その言葉が非常に興味深いなと思っていました。この『あなたはもう遭難している』の担当編集者も同じように長野県警の山岳遭難救助隊員が講演で話したこの言葉を印象深く覚えていて、そのことが企画のコンセプトになりました。
――なるほど、入山前の準備不足に対する警鐘というのはかなり早くからあったわけですね。では、すこし新刊の本文を抜粋してみたいと思います。
この記事に登場する山
山岳遭難ファイル
多発傾向が続く山岳遭難。全国の山で起きる事故をモニターし、さまざまな事例から予防・リスク回避について考えます。
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