リフトで上っていきなり北アルプスの絶景! 八方尾根から唐松岳へ

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ビストロきっちょむ登山隊・興津剛さんによる登山レポート。今回は八方(はっぽう)尾根から、唐松岳(からまつだけ、2696m)へ。

文・写真=興津 剛


山の魅力を発信する登山隊である「ビストロきっちょむ登山隊」の興津(おきつ)です。「なんでビストロ?」「なんできっちょむ?」とよく聞かれます。

きっちょむは以前我が家で飼っていたにゃんこの名前です! じゃあなんでビストロなのかって? 山で料理をするからビストロ……ってわけではないんです(笑)。

最初にサイトの名前をつけるときに、練馬登山会とか府中山の会、的な名前じゃなくて、絶対にかぶらない&オンリーワンの名前にしたい、って思ったんです。

そう思いながら渋谷の警察署裏あたりを歩いていると「ビストロ〇〇」というお店があったんです。それを見て「え、なんかいい!」と28歳のアホな私は思い、「ビストロきっちょむ登山隊」にしたんです(笑)。山で料理=ビストロ、は完全なる後付けです。ビストロって名前についているから、しゃーなし(?)女子達が料理をしてくれています(笑)。

それはさておき、いやぁ〜暑い暑い! 暑いっすねぇ〜。いや、むしろ「あぢ〜〜!!あづすぎる〜!!」って感じの日々が続いていますが、みなさま、いかがお過ごしでしょうか? 外は本当に暑くて、太陽光線がヤバすぎるので、だいたいの方はお家や職場の冷房の効いたお部屋にいると思うんですが、「もうエアコンの風は充分だわ!」ってなりますよね。私もエアコン大嫌いです。そんな方は、たまにはスカッと、さらっとした爽やかな涼風を求めて、山にでも登りに行きたくなりますね。

ってことで、今回はそんな涼を求めるのにピッタンコ! 長野県北部、白馬村からエントリーする北アルプスの唐松岳に行ってきました!

リフト
夏山はリフト・ロープウェイに乗るべし!

いろんなところに書いてるんですが、初心者の方の夏山登山の基本は「標高が高い山にリフトやロープウェイで行くこと」です。これマジで大事! テストに必ず出ます!

たまに「高尾山に行ったけど暑かった」的なことを言っているビギナーの方がいるんですが、それはありがちな間違いです。標高が高いところまで労せず行って、気持ちのいい部分のみを歩く! これが正解です。

ってことで、我々も八方尾根スキー場の黒菱リフトに乗って、山の中腹までGO!

白馬三山
いきなり現われる白馬三山

リフトを降りると、はい! いきなりの絶景! 中央のとんがり山が白馬鑓ヶ岳(はくばやりがたけ)。カッケーー!

北アルプスには絶景ポイントがたくさんあるけど、この八方尾根から見る白馬三山って、絶景トップ5に入ること間違いなし! 本当にめちゃくちゃ美しいです。

ちなみに勝手に選ぶほかの4つは「北穂高小屋から見る槍」と、王道だけど「涸沢から見上げる景色」。あとは「大喰岳から見る槍ヶ岳」と「燕山荘から見る燕岳」かな!

ほかに「ここは絶対に外せないでしょ!」っておすすめがあったら、編集部までどしどしご連絡ください!(勝手に募集!)

木道と五竜岳
木道と五竜岳

リフトを降りると木道歩きです。てかさ、大袈裟じゃなくて、この3枚目の時点で、もう最高すぎてヤバくないですか?

この辺りで標高1800mくらい。もちろん日差しがあると暑いし、そりゃ汗もかくけど、爽やかレベルは渋谷駅前-100、近所の公園3、都心の河川敷5、冷房の部屋10、高尾山駅前50、水着ギャル横目のビーチ100、八方尾根1500!って感じで、もう完全に別世界です。

白馬三山
白馬三山を横目に見ながら

この景色よ、どうですか! これCGや生成AIじゃないですよ! 現実です! それもスイスじゃなくて日本ですよ、奥様〜!

八方池までの木道
八方池までは木道ベースです!

八方池までは登山はやらない一般の観光客の方でも行くことができます。このような木道を家族連れや若者たち、おじいちゃんおばあちゃんも、それぞれのペースで歩いていました。この初心者でも来れるっていう八方尾根の優しさが、私は大好きです。

八方池と白馬三山
八方池と白馬三山

ロープウェイを降りる八方池山荘から60分ほどで、この八方池に到着します! 見てよ、この景色! マジで最高すぎます。八方池で標高2060m。風の爽やかレベルは1800にアップ!

登山をやらない方は、まずは八方池まで来てみてください。遠くてお金もかかるし時間も体力も必要だけど、その価値はマジであります!(語気強め!)

八方池
八方池からは本格的な登山スタート!

八方池からは本格的な登山です。健脚の方なら朝一番のリフトに乗れば日帰りも可能です。

岩ゾーン
岩岩ゾーンもあるので慎重にね

唐松岳への道は整備されていますが、岩岩区間もあるので登山靴は必須です。滑りやすい岩場もありますので、慎重にお願いします。

山小屋と剱岳
稜線を登り切ると、初めて山小屋と剱岳が見えます

掲載スペースの都合で、はい! 一気に山小屋まできました(笑)。このルートは、最後の登りを登り切るまで山荘と剱岳(つるぎだけ)が見えません。最後、登り切って小屋が見えたら「やっと着いた〜〜」ってなります(笑)。

この日、我々はのんびりと唐松岳頂上山荘に宿泊しました。

唐松岳頂上山荘
唐松岳頂上山荘の中

小屋の中の紹介写真を載せようと思ったんですが、わかりやすい写真がこれしかなかった(笑)。お着替え中。

唐松岳頂上山荘から望む山頂
唐松岳頂上山荘から山頂を望む

唐松岳頂上山荘から唐松岳の山頂までは、その名の通り、めっちゃ近いです。コースタイムで20分ほど。空身だったらサクッと山頂まで行けちゃいます!

日が沈む唐松岳
お泊まりだけの特権

泊まりで山に行くと夕焼けと朝焼けが見れるのが特権ですよね! え、曇っちゃう日もあるだろって? もちろんガッスガスでなにも見えない日も、雨に打たれる日もあります。でも、その不確定さが山の魅力だって思うんです。すんごいわがままな恋人と付き合っている心持ちでいると、だいたいは許容できます(笑)。

日が沈む唐松岳
唐松岳に日が沈む

この日は雲が多かったから、逆に夕陽に照らされて空がなんかすごい感じになりました! 雲が多い日や、風が強い日はドラマが起こる可能性が高いです。もちろん、なにも起きずに三者凡退のときもよくありますよ。だって、すんごいわがままな恋人だから(笑)。

雲海から突き出た剱岳
雲海から突き出た剱岳

夕焼けの雲海から顔を出した剱岳。なんなんすか、この圧倒的なラスボス感! マジでカッコいい!

日没を待っている間、みんな長袖・長ズボンで暖かい格好をしていたんだけど、まさかの寒さで、「寒い!寒い!」って連呼していました。下界では熱帯夜が連発しているのに、本当に信じられないですよね。山って本当にすごいです。寒すぎて爽やかさ1800→30に激減!(笑)

残照の五竜岳
残照の五竜岳

剱岳もめちゃくちゃカッコいいんだけど、すぐ横の五竜岳もめちゃくちゃゴツくてカッコよかった! なんとなく唐松岳は優しくて女性的、五竜岳はゴツゴツして男性的な印象を受けます。

唐松岳山頂
DAY2! 朝日を山頂で

2日目。朝日を唐松岳の山頂で見ようと、夜明け前に行動開始!

唐松岳山頂から見た白馬三山
山頂から見た白馬三山

夜明け前の白馬三山。まだ三山とも寝てますね。でも寝顔もやっぱり絵になるわぁ〜。

日の出と唐松岳の山頂
日の出と唐松岳の山頂

この日もお天気最高で、キレイな朝日が顔を出しました。右側は唐松岳の山頂と、朝日を眺める人々。

白馬三山
朝日で目覚めた白馬三山

朝日に照らされて、みんな起床しました。真っ赤に染まった白馬三山もめちゃくちゃカッケーー!

ビストロきっちょむ登山隊のメンバー
山頂にてメンバーみんなで

今回のレポートはいかがでしたか? 勝手に選定の「北アルプスの絶景ベスト5」に選出されたこの唐松岳、その魅力が充分に伝わったでしょうか?

今回は山小屋に泊まりでしたが、日帰りで山頂ピストンも、のんびり八方池まででも、めちゃくちゃおすすめ! 八方池&白馬三山が見れただけで、来てよかった〜!って思うこと、間違いなしです。

でも、山って本当にすごいなぁ、って思うのは、登れば登るほど、さらに山に行きたくなるんです。まずは日帰りで八方池だけ来たら、次は唐松岳まで登ってみたい!って思うし、日帰りで山頂まで行けたら、次は泊まりで夕焼け&朝日がみたい!って思うんです。ちょっと曇っちゃったら、次回こそは!ってまた来たいし、今回のように大当たりだったら、もちろんまたこの景色に会いたくなります。すんごいわがままな恋人だから、裏切られることも多々ありますが(笑)、それでも!

本当に山って、最高ですよね。

(山行日程=2025年7月25~26日)

MAP&DATA

高低図
最適日数:1泊2日
コースタイム:【1日目】4時間35分
【2日目】2時間55分
行程:【1日目】
八方池山荘・・・第三ケルン・・・丸山・・・唐松岳頂上山荘・・・唐松岳・・・唐松岳頂上山荘
【2日目】
唐松岳頂上山荘・・・丸山・・・第三ケルン・・・八方池山荘
総歩行距離:約10,680m
累積標高差:上り 約1,183m 下り 約1,183m
コース定数:29 

この記事に登場する山

富山県 長野県 / 飛騨山脈北部

唐松岳 標高 2,696m

 後立山連峰のほぼ中央に位置するが、地味な存在である。ピラミッド型をしたこの山が大きく美しく見えるのは、主稜線の大黒岳付近からである。  主稜線を振り分けに、長野・富山両県からそれぞれ1本ずつの登山道が通じている。東からの八方尾根は、山岳スキー場として知られるが、途中の八方池は不帰ノ嶮を間近に仰ぐ憩いの場である(八方集落よりリフトなど利用して所要4時間)。西からの南越(なんこし)の道は、黒部渓谷からのもので、難路であったが、昭和61年、大黒鉱山跡まで尾根上をたどる新道に切り替えられた(祖母谷温泉より所要9時間)。  唐松岳北方の主稜線は、両側面からの浸食によって険しいやせ尾根となって、不帰ノ嶮と呼ばれている。ここは白馬岳からの縦走では、電気回路における抵抗のような存在となっているのである。南方への稜線はすぐに牛首岳を起こすが、ここも険路である。  八方尾根と主稜線とのジャンクションをなす小突起の西側に、抱かれるようにして唐松岳頂上山荘が建っている。間に深い黒部の谷を挟んで望む、ここからの剱岳の眺めは、後立山八景の1つに数えられよう。

プロフィール

興津 剛(おきつ・つよし)

静岡県静岡市出身。本業は登山隊の隊長。 副業はフォトグラファー、キャニオニングガイド、WEBデザイナー。2011年より山のHP「ビストロきっちょむ登山隊」を運営。最近では登山ツアーや、ポップアップカフェなど、みんなで「ワハハ!」ってできるイベントを定期的に開催中です。山に行かない日はジョギングと水泳をして、ダイエットに励む日々。今年の目標は、あと2kg痩せたい!

今がいい山、棚からひとつかみ

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