君は「麺許皆伝」を知っているか? 富士山登山のシメに、吉田のうどんを堪能する
富士山シーズン到来。今回の下山メシは、山梨県側から吉田ルートを登る時に知っておきたい、吉田のうどんの名店を紹介する。
富士吉田市内に50軒以上。その大半が自家製麺を提供

7月、富士登山のシーズンがやってくる。富士山に行くことになると、そして山梨県側から登ることになると、「下山後は吉田のうどん」とスイッチが入る。
富士吉田市の郷土食、吉田のうどんだ。
標高が高く、気候も厳しいこの地域は稲作には適さず、小麦は麦やアワ、ヒエなどとともに貴重な主食のひとつだったのだという。お正月や結婚式などのハレの日は、おかあさん、おばあちゃんが打った手打ちうどんをみんなで食べる。富士吉田の人々に、うどんはなくてはならない食べ物らしい。
吉田のうどんの特徴はなんといっても硬くて太い麺。みっしりと質感があり、太く、硬いのだ。とくにつけうどん(冷やしうどん)だとその硬さが際立つ。いかにも家庭の手作りを思わせる、武骨なまでに硬いうどんは、噛むほどに味わいが出てくる。つゆは味噌と醤油を各店のうどんにあわせてブレンドしている。かけうどんにたっぷり乗っているのは茹でキャベツ。消化を促す効果があるのだというが、単純にうどんの付け合わせとして美味しいし、つゆとの相性もよい。
また、お店ごとに趣向をこらした薬味も特徴。ごまやとうがらしなどをブレンドした辛い薬味がうどんの味わいを引き立てる。
そんな吉田のうどんを味わえる店は市内に50軒以上ある。大半が自家製麺を提供していて、丁寧につくられた手打ち麺が味わえる。麺はお店によって少しずつ異なるし、メニューも「つけうどん、かけうどんのみ」のところから、種類が多いところまでさまざま。あまりリサーチをせず、とりあえず見つけた店に入る…というのも楽しいが、絶対にはずしたくない、美味しいうどんを食べたいと思ったとき、足を運ぶのは「麺許皆伝」。駄洒落のような名前にだまされてはいけない、本格派のうどん専門店だ。

宝石箱か!? この丼は・・・
うどんのおいしさを味わうならつけうどんだと思っているのだが、この店ではついつい具だくさんのかけうどん「よくばりうどん」を頼んでしまう。大きなちくわの天ぷら、肉、わかめ、油揚げが丼の上にドカーンと乗っている。定番のキャベツもちゃんとある。

丁寧に打たれた、みっしりとした手打ち麺は、風味がよく味わい深い。うどんだけでもしっかり美味しい。そして具がどれも美味しいのだ。青のりの風味が漂うちく天、うまみがたっぷりの肉、つゆを含んだ刻みキャベツ。宝石箱か、この丼は。
半分ぐらい食べたところですりだねをひとさじ。ああ、じわっと辛く、うまい。うどんとつゆの味わいがさらに引き立つではないか。つゆまで全部飲み干すなんて塩分摂り過ぎなのは分かってるけど、たっぷり汗をかいた登山のあとだからまあいいのだ。富士山の締めが吉田のうどん、悪くない。
ちなみに、吉田のうどんの店は昼のみの営業だったり、昼休みがあったりする店が多い。お目当ての店があるなら、営業時間の確認はおわすれなく。
今日のお店
麺許皆伝山梨県富士吉田市上吉田849-1
0555-23-8806
プロフィール
西野 淑子(登山ガイド・フリーライター)
初心者向け登山ガイドブックや山岳雑誌などで取材・執筆を行なうフリーライターで、登山ガイドの資格を持つ。関東近郊を中心に低山歩きから沢登り、雪山登山まで楽しむオールラウンダー。気の合う仲間と山を歩き、下山後においしいものでお腹と心を満たすことに無上の喜びを感じている。
下山メシのよろこび
登山後、すなわち下山後の楽しみの一つが、山麓にあるグルメ。ご当地の名物料理もあれば、鄙びた駅前に立つ小さな食堂で出す普通の料理まで、その楽しみは幅広い。 登山ガイド・フリーライターの西野淑子が下山後に味わった数々のとっておきのお楽しみを紹介する。
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