絶滅危惧種リシリヒナゲシに会いに、北海道・利尻山へ

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読者レポーターより登山レポをお届けします。ふーちゃんさんは北海道の利尻山(りしりざん、1721m)へ。たくさんの花に会えたそうです。

文・写真=ふーちゃん


灼熱の本土を離れ、北海道・利尻島へ。島ほぼ全体に裾野を広げる利尻山へ登ってきました。宿から車で送っていただき、登山口に着くと駐車場はすでに満杯状態。

五合目までは普通の樹林帯を登ります。六合目辺りからハイマツの登山道に岩が現われて、少し歩きにくくなりました。

登山道の両側にクルマユリ、ヤマノコギリソウ、イブキトラノオなどの花々が姿を現わし始めました。六合目の第二見晴台からは眼下に鴛泊(おしどまり)港、見上げると利尻山の広大な裾野が広がっていました。

八合目を過ぎると、利尻山がグーンと大きくなり、その姿を見上げながら登るのはなんとも壮快です。

クルマユリ
クルマユリ
イブキトラノオ
イブキトラノオ
イワギキョウ
イワギキョウ
アズマギク
アズマギク
利尻山
いつまでも眺めていたい利尻山の雄姿

九合目からはまさに正念場の急登が始まりました。大きな岩と、丸いドラム缶のような段差の大きな階段もどきを登り詰めると、ようやく山頂が見えてきました。

利尻山山頂
もうすぐ山頂です

黄色いリシリヒナゲシが2輪ほど、山頂直下の赤土のザレ場に咲いていました。登山道の両端が切れ落ちていて谷になっているので、この辺りだけ風が強く、厳しい場所ですが、火山岩の砕けた赤土の上で、花びらを揺らしながら必死に咲いている姿は愛おしい限りです。以前はたくさん自生していたらしいのですが、山の風化による崩落と心ない人たちの盗掘で絶滅の危機にあるそう。なんとか種を繋いでいってほしいものです。

リシリヒナゲシ
リシリヒナゲシ

山頂はたくさんのハイカーで写真を撮るのも譲り合い状態。周り一面のお花畑と、青空と雲海を背にしてそびえ立つロウソク岩は息をのむ絶景でした。遥か昔の火道の名残りのこの岩、風雪の浸食に耐え、よくぞ残ってくれたものです。

お花畑とロウソク岩
お花畑とロウソク岩
港
鴛泊港が見える

三六〇度の展望とお花畑の中で、宿でつくってもらった大きなおにぎりをほおばっていたら、団体客が登ってきたので展望を譲り、下山開始。いつものことですが、帰り道は遠かったです。

写真も充分に撮ってしまったので、ただただ下山するのみ。五合目からは風のない樹林帯で、さながら修験道を歩いているようでした。日本百名水に選ばれている三合目下の甘露泉水まで一気に下り、冷たい水をガブ飲みしてやっとひと心地つきました。

四合目と三合目の間のフジバカマ群生地で、1匹のアサギマダラに会いました。元気でがんばって、9月には私が住む神戸まで飛んできてほしいものです。

もったいないくらいの天気に恵まれた今回の利尻山登山は、まぎれもなく私の登山歴の1ページを飾ってくれる山行となりました。

アサギマダラ
フジバカマに止まるアサギマダラ

(山行日程=2025年7月24日)

MAP&DATA

高低図
最適日数:日帰り
コースタイム: 7時間35分
行程:利尻北麓野営場・・・長官山・・・利尻山避難小屋・・・沓形分岐・・・利尻山・・・沓形分岐・・・利尻山避難小屋・・・長官山・・・利尻北麓野営場
総歩行距離:約12,479m
累積標高差:上り 約1,653m 下り 約1,653m
コース定数:35 
ふーちゃん(読者レポーター)

ふーちゃん(読者レポーター)

1946年生まれ、神戸在住。日本百名山踏破。約1000座を登頂。あと何年登れるかわかりませんが、リミットを決めないで年齢相応の山を楽しみたいです。

この記事に登場する山

北海道 / 礼文・利尻

利尻山 標高 1,721m

深田久弥の『日本百名山』に最初に登場するのが、日本最北端の利尻山だ。氏は利尻山を「島全体が一つの頂点に引きしぼられて天に向かっている。こんなみごとな海上の山は利尻岳だけである」と称賛している。別名利尻富士とも呼ばれ、昭和49年(1974)に利尻礼文(れぶん)サロベツ国立公園に指定された。 アイヌ語でリイシリは「高い島山」を意味する。古くから高くそびえるその美しい姿は航海や漁場の目印とされた。人々はその山に航海の安全を祈り、豊漁を祈願した。山は海からも信仰されあがめられたのだ。ついに明治23年(1890)ごろ、修験者・天野磯次郎が鴛泊(おしどまり)から利尻山頂上まで登山道を開削したと伝えられている。 登山コースは鴛泊コースと沓形(くつがた)コースの2つあるが、鴛泊コースが一般的だ。鴛泊コースは3合目のキャンプ場まで車で入れ、便利である。トドマツの鬱蒼とした山道を行くと、冷たい湧水があふれる甘露泉の水場がある。登るにつれダケカンバやミヤマハンノキが続き、6合目を過ぎると尾根も急になりジグザグの登りとなる。8合目の石碑のあるピークが一等三角点のある長官山(ちようかんざん)だ。展望が開け、礼文島が見下ろせる。少し上に避難小屋がある。長官山から尾根をたどるが次第に登りもきつく、足場も悪くなる。9合目は高山植物帯で、沓形コース分岐を通過し、急斜面を直登すると頂上である。頂上には三角点と小さな祠があり、北峰とも呼ばれている。頂上は三峰に分かれ、最高地点は南の南峰であるが、一般の登山者向ではない。3合目から頂上までは約4時間30分。 沓形コースは沓形登山口から舗装された車道と旧登山道(荒廃)がある。見返台を過ぎると7合目に避難小屋がある。三眺山(さんちようざん)に達すると高度差500mの西壁、鋸の刃のように切り立った南稜や、仙法志(せんぼうし)稜などが間近に望まれ圧巻である。ガレ場を注意しながら登ると鴛泊コースの分岐に達する。沓形登山口から頂上まで約6時間。 鬼脇(おにわき)コースは、9合目の崩壊が著しく登山禁止になっている。 山はまた、高山植物の宝庫でもあり、リシリヒナゲシ、リシリオウギ、ボタンキンバイなどこの地に特有の植物が多い。利尻山の南斜面にチシマザクラの群落が発見され、北海道の天然記念物にも指定された。 利尻山のバリエーションルートの開拓は、徒歩渓流会の川上晃良らが、昭和25年(1950)12月、鬼脇から入山。南稜の試登を繰り返し、翌年2月、川上が単独で東稜から挑み登頂に成功した。これをきっかけに大学山岳部や社会人山岳団体がこれらのバリエーションルートに挑み、数多くの登攀記録を樹立した。

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