雲の中から見えた五色沼と花の日光白根山

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山と溪谷オンラインの読者レポーターより登山レポをお届けします。スラ男さんは日光白根山(にっこうしらねさん、2578m)へ。関東圏なら公共交通機関利用でも日帰りで高山登山ができますね。

文・写真=スラ男


あまりにも暑い今年の夏。さすがに低山帯を歩くのは危険な暑さなので、憧れの高山に食指が動きました。急なスケジュールで日帰りアルプスはできないので、それならば「関東以北最高峰」の称号をもつ日光白根山へ。

奥日光の空を映す湯ノ湖
奥日光の空を映す湯ノ湖。その標高はなんと高尾山の2倍近く!

日光白根山へのアクセスは、東武鉄道とバス、そして関越交通から出ている季節バスを利用しました。自宅からの場合、どうがんばっても登山開始が11時過ぎになってしまい、登山の原則「早出早着」に反しますが、今回はもう観光ということで割り切っちゃいます。

日光白根山ロープウェイ センターステーション
センターステーションは温泉ほか食事やお土産も完備

バス運転手のおじさんとのお話で盛り上がり、ロープウェイ乗り場である丸沼高原(まるぬまこうげん)まではあっという間でした。昔、スキーで訪れたことがあるセンターハウスの赤い屋根は今も健在で、隣にあるセンターステーションでは日帰り温泉も利用できるみたいなので、これは帰りの楽しみができました。

日光白根山 天空テラスのあるロープウェイ山頂駅
天空テラスのある山頂駅、しかし雲行きが…

券売機でチケットを購入し、ロープウェイに流れるように乗り込むと、係員の方の「今日は上で雷が鳴るから気をつけてね」というアドバイスに気が引き締まります。夏の高山は「落雷」による遭難事故もあるから怖いですよね。

山頂駅に着くと、それはそれはみごとな「山」という字そのものの日光白根山が見られるとか……雲の中でした~。

日光白根山 ロックガーデンに彩りを添えるコマクサの花畑
ロックガーデンに彩りを添えるコマクサの花畑

8月上旬だと日光白根山の花のピークは7月に比べ少し落ち着いてきますが、「高山植物の女王」と呼ばれるコマクサが見頃を迎えていました。ロープウェイ山頂駅のロックガーデンにてコマクサほか季節の高山植物が色とりどりに咲き乱れています。

日光白根山は関東以北最高峰といわれる高山で、それゆえに登山目的での入山者がほとんどかもしれませんが、その楽しみ方は十人十色。山頂駅には自然散策や高山植物の見学、天空感を味わいたいといった登山装備ではない方もちらほら見られました。

日光白根山 亜高山帯の原生林
亜高山帯の原生林をひとり歩く

さて、スタート時間が遅いということは、帰りのロープウェイまでの時間も余裕があまりないということ。山頂駅の見学もそこそこに、登山道に入っていきましょう。

鹿除けの柵をくぐるとシラビソの原生林とカニコウモリの群生がみごとで、亜高山帯の雰囲気を醸し出しています。ぬかるみのひどいところには木道が敷かれ、どこか北アルプス・蝶ヶ岳(ちょうがたけ)の三股(みつまた)コースを彷彿させます。

日光白根山 登山道
初めての日光白根山で、夏空を仰ぐ

階段が多めの登山道の途中では、開けた場所があり夏空が眺められました。ああ、たまっていた疲れが抜けるように吹き飛ぶ感覚です。山頂付近は雲の中でしたが、これはもしかするともしかするかもしれません!

日光白根山 ガスに包まれた幽玄な風景
日光白根山に咲く高山植物
森林限界に出るとガスに包まれた幽玄な風景が

ところが、期待もむなしく森を抜けると虚無の頂が見えてきました。まあ、これは予定通りです。むしろ、高山帯でしか見られませんからね、火山×ガスガスの風景は。

登山道脇を見てみると、黄色や白色の高山植物が咲き乱れています。植物の同定が難しいんですよね……。ハンゴンソウかな? キオンかも。

日光白根山 火山帯特有のザレた足元
火山帯特有のザレた足元に大苦戦

山頂まであと300mというところですが、火山帯ならではの登山道がよく滑り、思うように距離が縮まりません。登る人も下る人もズルズルッと音とともに尻餅。

日光白根山
雲の中にたたずむ関東以北最高峰、これはこれで?

切り立った岩場の登り返しを経て、ついに日光白根山に到達しました! といっても、ロープウェイ利用で2時間も歩いていないわけですから、お手軽登山といわれる部類なのでしょうが。それでも自身憧れの山頂、感慨もひとしおです。景色は雲の中でしたが、これはこれで遠く異界の地に来た! という感が増して良きですねえ!

日光白根山 五色沼
雲の中から現れたまさに宝石のような五色沼

山頂の東側を見てみると、雲の中からエメラルドグリーンをたたえた池をとらえました。この五色沼(ごしきぬま)は日光白根山の堰止湖であると考えられており、水位の違いでその色が変わることから名づけられたそうです。雲がなければ五色沼だけでなく、中禅寺湖も見ることができ、日光白根山山頂からの湖沼見学を目的とする方もいるとか。

日光白根山 山頂風景を堪能
トンボと戯れながら山頂風景を堪能

屹立する岩塊をガスが覆う景色は、中国の世界遺産・黄山を思わせる風景で、ガスも悪くないなとポジティブにその魅力を伝えてくれます。

日光白根山 弥陀ヶ池
日光白根山に咲く高山植物
弥陀ヶ池とバイケイソウ(おそらく)の群落

できれば山頂付近でゆっくりと雲の変化を楽しみたいものですが、ロープウェイの時間があるので足早に下山します。雷も怖いですからね。下山は北側、弥陀ヶ池(みだがいけ)方面をめざしていきます。往路よりも傾斜が急で、それでいてザレ場も多いのでこちらは下山には不向きかもしれません。ぼくも2回ほど尻餅をついてしまいました。

弥陀ヶ池の分岐まで下りてくれば、ロープウェイ方面をめざして再び樹林帯の登山道へ。七色平(なないろだいら)避難小屋跡を経由して往路に合流します。

日光白根山 ロープウェイ山頂駅で食べるソフトクリーム
なんたって山で食べるソフトクリームはおいしい!!

山頂駅まで戻ってきたら、天空のソフトクリームが格別の味わい! 登山をしたかしないかでこんなに味って変わるものですか!? というほど。シニアハイカーご夫婦に「お兄ちゃんおいしそうに食べるなぁ」なんて言われちゃって照れます。

時間にけっこう余裕ができたので、ロックガーデンの花畑と天空テラスを見学して、ロープウェイで下山。ここでポツポツと降ってきた雨と同時に「ゴロゴロッ」と雷鳴が轟きました。間一髪、というところでしょうか。まだ山の中にいる方たちもどうかご無事で。

(山行日=2025年8月3日)

コラム
湯上りに汗が!! 締めの座禅温泉

日光白根山 座禅温泉
日光白根山の下山後に是が非でも味わいたいのが温泉! という方も多いのでは。ぼくも奥日光湯元温泉に下りようかと考えていましたが、時間の都合でロープウェイに併設された座禅温泉へ。正直、観光施設の温泉か~と「舐めていました」が、これが最高に気持ちいい。首元までじっくりと浸かりたくなる熱々のお湯は体中の疲れをとろけさせ、文字通り体を芯から温めてくれます。脱衣所で体を拭けども拭けども玉のような汗が止まらず、着替えに難儀してしまいました(笑)。

MAP&DATA

高低図
ヤマタイムで周辺の地図を見る
最適日数:日帰り
コースタイム: 4時間53分
行程:山頂駅・・・七色平分岐・・・日光白根山・・・弥陀ヶ池・・・鞍部・・・七色平北分岐・・・七色平分岐・・・山頂駅
総歩行距離:約6,800m
累積標高差:上り 約1,035m 下り 約1,035m
コース定数:22
スラ男(読者レポーター)

スラ男(読者レポーター)

関東近郊の低山をメインに活動。低山で出会う、人と山とが深く結びついた歴史や民俗などを調べるおもしろさにのめりこみ、低山ワールドのさらなる深みへ。そのおもしろさを親子で分かち合いたく、子どもたちの原体験を育む意味も込めて親子ハイキングを始める。

この記事に登場する山

群馬県 栃木県 / 那須・日光

白根山 標高 2,578m

 栃木県と群馬県との県境にそびえる、日光火山群に属する溶岩円頂丘(石英安山岩)である。  日光火山群のなかで唯一噴火の記録のある火山で、最後の活動は1889年といわれているが、現在は活動を停止している。  西側にある菅(すげ)沼、丸(まる)沼は白根火山の溶岩流によって堰止められたものである。  全国各地に白根山という名の山があるが、それぞれの地方の名前を冠して呼ばれている。  この山も日光白根山、奥白根山などと呼ばれ、座禅山(ざぜんやま)、五色山、前白根(まえしらね)山などの2300mを超す山々に取り囲まれ、その内側にはコバルトブルーの水をたたえる五色沼、弥陀ガ池などの美しい湖沼や凹地があり、高山植物の宝庫でもある。  夏から秋のシーズンはいつ訪ねてもたくさんの花に会える山の1つである。シラネの名を持つ植物も多く、特に有名なシラネアオイは、古くは江戸時代の天保年間に発行された『日光山志』の中にも記され、弥陀ガ池周辺の群落は実に見事だったが、シカの食害などにより激減し、昔の面影はない。  白根山は山麓から見えにくいことなども手伝って、男体山や女峰山をはじめとする表日光連山の山々に比べると、かなりなじみの薄い山である。  しかし、周辺の高山から望むとき、関東以北の最高峰として、日光連山の盟主にふさわしい威厳と重厚さを兼ね備えた山容を誇る。白根山頂はさながら周りを絶壁や空堀で守られた古代の城塞を思わせる。二等三角点のある山頂からの展望はさえぎるものがなく、男体山をはじめ日光の山々、尾瀬、会津、上越の山々、皇海(すかい)山、遠く富士山など360度の大パノラマである。  また、この山は男体山(二荒山)の奥ノ院ともいわれ、大巳貴命が祭られ、峰修行の夏峰のコースでもあった。  深田久弥の『日本百名山』によれば、白根山の表口は上野(こうづけ)側であろうといわれており、地図上にも不動尊、六地蔵、大日如来、賽ノ磧などの信仰登山に由来する地名が残されている。しかし、現在はこのコースをたどる人は少なく、群馬側からの登山は菅沼を起点とするものがほとんどで、弥陀ガ池を経由して山頂まで3時間。  日光側からは、難コースではあるが、湯元温泉から外山尾根、前白根経由がこの山の最も魅力的なコースで、冬山登山にも利用され、山頂まで4時間30分。湯元温泉から中曽根、五色山、弥陀ガ池経由も同じくらいの時間を要する。また金精山(こんせいざん)、五色山経由のコースもあり、いくつかのコースを往路、復路で組合せてみるのも楽しいプランと思われる。

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