火山の雄大な景色が広がる雌阿寒岳

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読者レポーターより登山レポをお届けします。こうさんは雌阿寒岳(めあかんだけ、1499m)へ。北海道の雄大な景色の紹介です。

文・写真=こう


立派なオンネトーコース登山口の道標の後ろには熊出没注意と書かれた看板が立てられていた。高い木々が立ち並ぶ森は薄暗く、本当にクマが出てくるのではないかという雰囲気を醸し出していた。敷き詰められたコケのじゅうたんを眺めながら歩いていると、徐々に傾斜が増してきて、標高850mを過ぎたあたりから急登になる。1時間弱歩くと景色が開けて、阿寒富士の堂々たる山容がその姿を現わした。

苔が美しい森
苔が美しい森を歩く
阿寒富士
森林限界が近づくと阿寒富士が現われた

雌阿寒岳の前に、阿寒富士に登るために分岐を右へと進んだ。黒い砂で覆われた道は、踏み出した足が沈み、なかなか思うように前に進まない。また、分岐からすぐ近くのように見えていたピークは山頂ではなかったようで、想定よりも時間がかかった。歩き疲れて反対に目をやると、雌阿寒岳の雄大な景色が広がっており癒やされた。

黒い阿寒富士の山頂付近には赤や茶色の土が存在しており、下から見上げたとはまた違う印象を受けた。

黒い砂に覆われた阿寒富士
阿寒富士は黒い砂に覆われており、足がよく沈む
阿寒富士から見た雌阿寒岳
阿寒富士から見た雌阿寒岳
雌阿寒岳山頂付近
山頂が近づくと赤や茶色の土になった

山頂で景色を眺めながら休憩したいところだったが、風が強く、雲がどんどん上がってきたので、一度分岐まで下ってから休むことにした。下りではスピードが出過ぎないようにストックを駆使しながら速度を抑えつつ、また、登ってくる人に石を落とさないように注意しながら歩いた。

分岐までたどり着くと、完全にガスに包まれてしまったが、休んでいるうちに天気が回復してきた。雌阿寒岳に向かって登っていると、完全にガスは抜け、後ろには端正な形の阿寒富士が見えていた。

所々にコマクサが咲いていたが、残っている花は少なく、見頃はすでに過ぎてしまっているようだった。

阿寒富士
振り返ると端正な山容の阿寒富士

景色を楽しみながら緩やかに標高を上げられるので、快適に山歩きを楽しむことができる。標高を上げ続けると、次第に雌阿寒岳の山頂が近づいてきた。火口に向かって一際大きく突き出しているのが印象的だ。カルデラの底には青池というエメラルドグリーンの美しい池があった。周りを囲む岩壁から噴煙が上がっているのが見えた。

青池
火口にある青池。この日はエメラルドグリーンになっていた

山頂までの道のりは標高差が少ないが、とにかく風が強かったため、飛ばされないように重心を低くしながら歩いた。山頂直下まで来ると、風裏になり、歩きやすくなった。景色を見る余裕も出てきたので周りを見渡すと、阿寒富士と青池(あおいけ)を一望でき、また、逆方向には雌阿寒岳から剣ヶ峰に向かって広がる大地と阿寒湖を望むことができた。山頂からはさらによく見えて、その雄大な景色を眺めながら、あらためて北海道の山に登っているということを実感した。

阿寒富士と青池
阿寒富士と青池
雌阿寒岳山頂への道のり
突き出した山頂に向かって、ゆるやかな道を歩く

山頂からは雌阿寒温泉登山口へと降る。ベージュ色の赤池(あかいけ)を横目に進むと、猛烈な下りが始まる。基本的には歩きやすいが、一部滑りやすいところがあるので通過する時は注意したい。

森林限界よりも下がり、森を抜け、登山口へと戻るとシカが2頭いた。刺激を与えないように静かに横を通過した後は、オンネトー登山口に向かって車道を歩いた。

オンネトーのほとりまで着くと、そこからは登山道に再び入り、登山口へと向かった。オンネトーの湖水があふれているところがあり、泥沼となっている箇所があったので、ハマらないようにうまく避けながら歩いた。

美しい森歩きと荒々しく雄大な火山を全身で感じることができ、北海道の山にまたいい思い出ができた山行だった。

赤池
赤池の様子
雌阿寒温泉登山口への道のり
雌阿寒温泉登山口へと下る

(山行日程=2025年8月10日)

MAP&DATA

高低図
ヤマタイムで周辺の地図を見る
最適日数:日帰り
コースタイム: 5時間40分
行程:オンネトーコース登山口・・・八合目・・・阿寒富士・・・雌阿寒岳・・・四合目・・・雌阿寒温泉コース登山口・・・オンネトーコース登山口
総歩行距離:約11,400m
累積標高差:上り 約1,170m 下り 約1,170m
コース定数:26
アクセス:オンネトー国際野営場は80台、雌阿寒温泉登山口は60台程度駐車可能。
こう(読者レポーター)

こう(読者レポーター)

山形県在住。東北の山のほか関東甲信越、日本アルプスを月に6~8回のペースで登り、風景写真を撮っている。

この記事に登場する山

北海道 / 知床・阿寒

雌阿寒岳 標高 1,499m

 阿寒摩周国立公園の阿寒湖の西側にそびえる活火山で、カルデラの上にできた複雑な成層火山。南岳、東岳、瘤山、剣ヶ峰などに続き、雌阿寒岳の中心をなす中マチネシリが噴火して、山頂に直径1.1kmの外輪山(第1火口)が生じた。火口原には第2火口と溶岩円頂丘があり、その北西部に第3火口が開いている。中マチネシリの南側には北山、西山、ポンマチネシリが寄生火山として成長している。  南側には阿寒富士があり、西麓にはオンネトーやポントーなどの堰止め湖がある。  アイヌ語ではマチネシリ「女山」と呼ばれ、対峙してそびえる雄阿寒岳のピンネシリ「男山」とは夫婦山として、対にして呼ばれる。  登山道は阿寒湖畔温泉街の西外れから樹林帯を通り、硫黄採掘跡のある5合目辺りからはハイマツ帯だ。砂礫を登り頂上まで約3時間。  高山植物で特筆すべきは、明治19年(1886)に宮部金吾が採集し命名したメアカンフスマ、明治30年(1897)に川上滝弥が採集し、牧野富太郎が命名したメアカンキンバイなど。  雌阿寒温泉、オンネトーからもコースがあり、どちらも頂上まで約3時間。阿寒富士を背景に、青沼をたたえる雌阿寒火口の眺めはすばらしい。

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