沢歩きと滝を楽しむ斜里岳

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読者レポーターより登山レポをお届けします。こうさんは斜里岳(しゃりだけ、1547m)へ。一般登山道の大半が沢登りという個性的な山です。

文・写真=こう


清岳荘(せいがくそう)の駐車場から登山口へ向かって歩き出すと、展望のひらけた場所からオホーツク海が見えた。そこから先は森へと入るため、しばしオホーツク海の景色とはお別れになる。

一度登山道に入るが、すぐに林道へと出てからは、旧登山口まで1km弱ほどの道のりを歩く。登山口を通過すると道幅が狭くなり、周りには青々しい草木が生い茂っていた。少し進んだところで、徒渉点にぶつかる。ここから標高差700mほどの沢登りが始まる。

斜里岳 旧登山口
旧登山口から進むと木々に囲まれた細い道になる
斜里岳 沢歩き
ここから沢歩きがスタートする

序盤は木々に囲まれた沢を進んでいくが、限られた視界のはるか遠くに山の端が見えた。いつの間にか周りに大きな岩も増え、一筋縄ではいかないポイントが多くなってきた。次に足を置く岩が滑らないか確認してから一歩を踏み出していく。

仙人洞と呼ばれる洞窟があり、それは斜里岳を形成している火砕岩の層が浸食を受けて作られたものらしい。

その先へと進むと、下二股の分岐があり、旧道の看板が現われた。ここにたどり着くまでにもたくさん徒渉したが、この先からが本番となる。

斜里岳 沢歩き
滑らない岩か確認しながら渡る
斜里岳 仙人洞
仙人洞

上部から絶えず流れてくる清流とともに、爽やかな風が流れてくるため涼しく心地よかった。その清らかな流れを取り囲むように草木や苔むした岩があり、どこに目をやっても贅沢な眺めだった。

一度沢から離れて登山道を登っていくと、倒木が重なっているところが。足元も狭いので、上にも下にも気をつけながら進む。

再び沢に戻ると、川に岩の小さなトンネルがあったりして、見る場所によって雰囲気が変わるのでおもしろい。

斜里岳 沢歩き
透明な川と草木や苔の緑に癒された

旧道コースに入ってから滝に遭遇する回数が増えてきたが、いずれも滝の脇の乾いたところを歩くことで無事通過することができた。垂直に近い岩登りもあり、アスレチックのようなルートに常に楽しさを感じる。

斜里岳 垂直に近い岩場
垂直に近い岩場もある

そして、最後に待ち受けるのが霊華(れいか)の滝だ。

はじめは右岸を登っていき、その後左岸に渡り、水量が少なく歩きやすいところを見極めながら進む。やや急ではあるが足の置き場はしっかりとしており、不安なく歩くことができた。

一般登山ルートで、このような大迫力の滝の上を歩くことは、他を探してもなかなか見つからないのではないだろうか。

斜里岳 大迫力の霊華の滝を登りつめる
大迫力の霊華の滝を登りつめる
斜里岳 霊華の滝の滝登り
足場は安定しており安心して歩くことができた

滝登りが終わると、標高差の少ない川が続く。川に落ちないように岩から岩へと目一杯足を伸ばして進んだ。新道と合流すると、そこからは水と無縁のごく一般的な登山道になり、胸突き八丁と呼ばれる急登がはじまる。

景色のない急登はそれなりにしんどかったが、なんとか切り抜け、馬の背にたどり着く。風がよく通り肌寒かったが、東側に風除けのポイントがあったので、腰を下ろして休憩した。

ここから山頂までは標高差はあるものの距離はそこまでないように見えた。一定のペースを保ち、焦らずに標高を稼いだ。登り切ったところから一度鞍部へと下り、山頂への最後の登りを詰める。

斜里岳 鞍部から山頂へと登る
鞍部から山頂へと登る

ようやくたどり着いた山頂からはオホーツク海や知床(しれとこ)の山々が見えた。振り返ると、雲間からは南斜里岳の手前にある山の頭だけが見えていたが、まとわりつく雲たちが西風に押されて、次第に流されていった。これだけ豪快な滝雲を間近で見られたのは非常に幸運だった。

三六〇度見渡す限りの絶景に、下山するのがもったいなく感じたが、山頂まで登ってくる登山者が増えてきたので、頃合を見て下山することにした。

斜里岳 山頂から畑のパッチワークとオホーツク海を眺める
山頂から畑のパッチワークとオホーツク海を眺める
斜里岳 大量の雲が流れる様子を眺める
大量の雲が流れる様子が見られて幸運だった

下山は新道を下るため、上二股の分岐から稜線を歩き、一つピークを越え、また下り、再び登り返して熊見峠(くまみとうげ)へと向かった。雲が流れてきたせいで稜線の展望はお預けとなってしまったが、雲が途切れて一部だけ見え、その先に続く稜線も美しいのだろうと妄想を膨らませた。

熊見峠から斜里岳山頂方面は展望がなかったので、そのまま下った。なかなか急な下りだったが、途中に斜里岳山頂方面がひらけている場所がいくつかあり、その度に立ち止まって急峻な岩壁に目をやった。

斜里岳 上二股の分岐から熊見峠へと向かう
上二股の分岐から熊見峠へと向かう
斜里岳の急峻な岩壁
斜里岳の急峻な岩壁に目を惹かれた

下二股の分岐まで着くと、あとは登りで歩いてきた道を帰るだけになる。とはいえ、まだまだ徒渉箇所があるので、気を抜かずに歩き続けた。登山口まで戻ると、再びオホーツク海が出迎えてくれた。

斜里岳登山口
林道まで来ると、登山口はあと少しだ

(山行日=2025年8月14日)

MAP&DATA

高低図
ヤマタイムで周辺の地図を見る
最適日数:日帰り
コースタイム: 6時間40分
行程:清岳荘・・・下二股・・・上二股・・・斜里岳・・・上二股・・・熊見峠・・・下二股・・・清岳荘
総歩行距離:約9,800m
累積標高差:上り 約1,148m 下り 約1,148m
コース定数:27
アドバイス:清岳荘に40台程度駐車可能(協力金100円)
こう(読者レポーター)

こう(読者レポーター)

山形県在住。東北の山のほか関東甲信越、日本アルプスを月に6~8回のペースで登り、風景写真を撮っている。

この記事に登場する山

北海道 / 知床・阿寒

斜里岳 標高 1,547m

 知床半島の付け根にあり知床火山群、阿寒火山群のほぼ中間に位置する秀麗な成層火山。山頂部は斜里岳、南斜里岳、西峰の3つのピークからなり、いずれもその中央に古い火口がある。  シャリはアイヌ語で「葦の生えた湿原」という意味。まさに葦原にそびえる山。原名はオンネヌプリで「老いた山」である。  登山コースは清里と斜里からつけられている。清里コースはバスの終点から約2時間で清岳荘に至るが、車でも入れる。ここから沢沿いに下二股まで行くと道は尾根コースと沢コースに分かれる。沢コースは次々と滝が現れ、快適な沢歩きが楽しめる。水が切れた辺りで尾根コースと合流し頂上に達する。清岳荘から約3時間。  斜里コースは斜里町三井から玉石ノ沢の枯沢をたどり尾根に取り付く。かつては沢を直進する新道コースがあったが、今は荒廃している。ガマ岩を経て北尾根に出ると、正面の頂上直下の北壁と玉石ノ沢源頭部の眺めが圧巻である。登山口から頂上まで約3時間。  このバリエーションの登攀は昭和33年(1958)6月、北見山岳会の江口完らにより達成された。高山植物も豊富で、山頂からは阿寒の山や知床連峰、オホーツク海を隔て国後島まで見渡せる。

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