田中陽希さんの「日本3百名山ひと筆書き」旅は近畿地方へ突入! 六甲山全山やダイヤモンドトレールの縦走も達成

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完全人力での「日本3百名山ひと筆書き」に挑戦中の、プロアドベンチャーレーサー田中陽希さん。四国の旅を終え、再び中国地方の山へ。大山、蒜山、那岐山のあとは、豪雪地帯の扇ノ山、氷ノ山。さらに六甲山全山縦走、大阪の街を超えて、ダイヤモンドトレールの縦走へと山をつないで進みました。

POINT
  • 四国から中国地方に戻った陽希さんの三百名山巡りは大山から順番に
  • 六甲山の縦走を経て大阪の街へ。大阪での旅先交流会は大盛況!
  • 葛城山、金剛山…。その先を見据えてのダイヤモンドトレール縦走へ

―― (編集部)まずは瀬戸内海から日本海まで歩き、大山1300年祭・開山祭のタイミングで、大山登山になりましたね

四国から中国地方に戻ってきて、遠くから大きな大山の姿が見え、力が湧いてきました。 旅は予定より遅くなったのですが、開山祭の日に登頂する機会に恵まれました。宿の女将さんには「大山が一年で一番活気づく日」と聞きました。そのうえ今年は開山1300年の記念の年。地元の人達も気合が入っていました。

開山祭の神事では、一般登山者の代表として玉串の奉納の機会もいただきました。開山祭の日は登山道が渋滞すると聞いていたので、早朝から登り、午前中から午後まで山頂付近に長く滞在していたのですが、中国地方でも人気の山、地域に愛される大山には、ひっきりなしに登山者が登ってきていました。

一年で一番活気があるという開山祭の日に登頂日が重なった

早い人は前の日から登ってたり、開山祭に合わせた日帰りの方がいたり、たくさんの方に会って話を聞くと、登山者それぞれの思いで大山に登っているのがわかります。 今年で72回目となる前夜祭「たいまつ行列」にも参加しました。「たいまつ行列」は、地元山岳会の人たちが安全祈願で始めたもので、次第に大きくなっていったそうで、壮観でした。

安全祈願で始まったという前夜祭、壮観なたいまつ行列にも参加

 

―― 続いて、蒜山、那岐山、扇ノ山、氷ノ山に登りました

この地域では、蒜山と氷ノ山は、前回の旅で、雨やガスで展望を得られませんでした。もう一度登るなら天気のいい日にと、天気を調整して登りました。

蒜山は、上蒜山、中蒜山、下蒜山のすべてのピークに立ちました。前回は秋でしたが、今回は初夏で、花もたくさん咲いていました。この前後では蒜山が一番花が多かったでしょうか。

それと、中蒜山からの展望が素晴らしかったです。蒜山高原というとジャージー牛を使った、牛乳、ヨーグルト、アイスなどの乳製品が有名ですよね。

そんな蒜山高原も含めて蒜山の景色だと思うんですが、山の上から見ると、牧場、森がパッチワークのように広がって見えました。

蒜山では3つのピークに立つ。パッチワークのような高原の景色を眺めるのも蒜山の魅力

那岐山は、天気の見込みから、中一日で急いで山に入り、縦走しました。

山に雲がかかっていたのですが、滝山というところから展望が広がりました。なだらかな山容で歩きやすく、もし「初めて縦走登山をするなら?」という質問をもらったら、那岐山の縦走をおすすめしたいと思える、そんな縦走ができました。

那岐山の稜線での一枚。初めて「縦走登山」をするなら那岐山をおすすめしたいという

扇ノ山は、初めての山だったので、これも天気調整で鳥取砂丘へ立ち寄ってから入りました。山麓の人にとっては毎日仰ぐ山なんでしょう。地元の人に扇ノ山の良さを聞いても、これという魅力を聞くことができず…。実際に山に入ってみると、背丈ほどのチシマザサや、木の根元が曲がっているブナばやしが見られて、夏でありながら豪雪を感じられました。

扇ノ山では豪雪地帯に特徴的な植生に遭遇

東北の山を歩いているような感覚になりましたが、これまでの九州・四国の山とも、ほかの中国地方の山とも違う風景がありました。

天気予報通りには行かず、山頂部分には雲に覆われてしまったのですが、山が雨で潤って、緑を深めていくのは、梅雨のおかげで、ごく自然なことでした。山の水も、とてもキレイでしたね。

それと、地元の方に「珍樹ハンター」の話を聞いたので、これから先の旅でも珍樹探しをしてみようと思いました。

氷ノ山は、前回は防風雨だったのに対して、今回は最高のコンディションで登れました。 この先の兵庫県では最も標高の高い山で、登山家の加藤文太郎さんがよく登っていたという山。その加藤文太郎ゆかりの「ぶん回し」コースをたどることができました。

前回の旅では暴風雨に見舞われた氷ノ山。今回は好転に恵まれた

―― 六甲山は全山縦走でしたね

六甲山は、プライベートで登ったことはあったのですが、最高標高地点に行っただけでしたので、今回は全山縦走を考えていました。

50km弱の縦走になるのですが、ゆっくり、のんびり歩こうと考えていたのと、「日本三大夜景」のひとつ、六甲山から神戸の夜景、というのを狙っていましたこともあり、1泊2日で縦走し、山上から神戸の夜景を見ることができました。

西から東に縦走していく中で、神戸に近く山上までつながっている住宅街も歩く前半部分と、どんどん山が深くなっていく後半部の違いも感じました。

六甲山全山を1泊2日でのんびり縦走。山上の宿に泊まり、神戸の夜景を堪能した

―― この間も「日本一探し」がいくつかありましたが、印象深かったものを教えてください。

鳥取砂丘は、砂丘の高さ45mが日本一です。また日本一大きな池として鳥取県にある「湖山池」というのもありました。

なんと言っても、日本で唯一の場所として、姫路の「標準時子午線」があったのですが、「子午線」のサインが、歩道上に電柱みたいなものがあるだけ、となっていて。質素すぎて、見落としそうになりました。

ここに挙げきれないほど、各地の日本一、日本唯一などを探し、訪ねている

―― そして大阪の街にやって来ました! 大阪では旅先交流会も開催されましたね。

3年ぶりに大阪の街を歩きました。人口はすごく多いはずなんですが、かえって目立つこともなく、大阪の街を歩いて移動しました。声をかけてくださったのは数人です。

でも交流会の会場に着いたらすごい熱気で。月曜の夜の開催で、急な告知だったのですが、400人以上の方に集まっていただき、大阪ならではのパワーをもらいました。

この旅で4回目の交流会。大阪では平日にも関わらず400人以上のファンが集まった

また、今回の交流会は、私やほかの人力アスリートを支えてくださる「人力チャレンジ応援部」の大阪在住の方が中心となって、交流会の運営をサポートしてくれました。ありがとうございました。

―― 葛城山・金剛山を含む「ダイヤモンドトレール」の縦走についても教えてください。

「ダイヤモンドトレール」については、当初の旅の予定にはありませんでした。交流会でも「六甲山を全山縦走したのだから、ダイトレもぜひ」とお誘いいただいたんです。ただ、僕の中で、六甲も行ったから、というのは動機があいまいでした。

ただ、旅の先には、大峯奥駈の修験の道(約120km)というのが控えています。役行者(役小角)さんが小さい頃から修行していたという金剛山地を歩いておけば、役行者さんの足跡をたどるような旅ができれば、大峯奥駈道を歩くときに感じることがより一層深まるだろうと考え、「ダイトレ」を歩くことを決めました。

大和葛城山、金剛山に始まり、岩湧山、槇尾山、和泉葛城山を超えて、犬鳴山温泉まで歩くことで、役行者さんのすごさを改めて感じた2日間になりました。

ダイヤモンドトレールは、伝説の行者、役小角の足跡をたどるような1泊2日の縦走になった

―― 旅のスタートから半年経ちました。これから暑くなりますね。この先の旅の予定を教えてください

天候による足止めだったり、寄り道だったりして、出発前の計画からは、約2ヶ月遅れています。さっきも言ったとおり、この先の大きなポイントは、大峯奥駈道の縦走です。

さらに先を考えると、真夏にどこを歩くのか、日本アルプスはいつ通過できるのかとか、心配がないわけではないですが、コンディションとの折り合いを付けながら、焦らず自分の旅を深めて充実させていきたいと思っています。

応援よろしくお願いします。

取材日:2018年7月11日
写真提供:グレートトラバース事務局

 

関連リンク

人力10,000kmの山旅。日本3百名山ひと筆書きに挑戦中の田中陽希さんを応援しよう!
もっと知りたいという方は、ウェブサイトで。
グレートトラバース事務局ウェブサイト
http://www.greattraverse.com/

 

まとめ (山名は「ヤマケイオンライン」の山の紹介ページへのリンクします)

大山 [2018年6月3日]

蒜山 [2018年6月5日]

那岐山 [2018年6月9日]

扇ノ山 [2018年6月13日]

氷ノ山 [2018年6月13日]

六甲山 [2018年6月13日]

大和葛城山 [2018年6月13日]

金剛山 [2018年6月13日]

 

記事一覧

田中陽希さん「日本3百名山ひと筆書き」旅先インタビュー

 

プロフィール

田中 陽希

1983年、埼玉県生まれ、北海道育ち。学生時代はクロスカントリースキー競技に取り組み、「全日本学生スキー選手権」などで入賞。2007年よりチームイーストウインドに所属する。陸上と海上を人力のみで進む「日本百名山ひと筆書き」「日本2百名山ひと筆書き」を達成。
2018年1月1日から「日本3百名山ひと筆書き グレートトラバース3」に挑戦し、2021年8月に成し遂げた。

https://www.greattraverse.com/

田中陽希さん「日本3百名山ひと筆書き」旅先インタビュー

2018年1月1日から、日本三百名山を歩き通す人力旅「日本3百名山ひと筆書き グレートトラバース3」に挑戦中、田中陽希さんを応援するコーナー。 旅先の田中陽希さんのインタビューと各地の名山を紹介!!

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