
【インタビュー・中村浩志】ライチョウの命をつなぐ、自然と人が共に生きる未来のヒント
ライチョウを守ることは、日本の自然を守ること
鈴木:先生がライチョウ「1羽」の命をこんなにも守ろうと活動されてきた源はなんでしょう?
中村:やっぱり、中央アルプスにライチョウを復活させたかったっていうのは、私の恩師の夢でしたから。その夢をなんとか実現させたいという。
鈴木:たとえば未来とか自分の将来って、不安のほうを見ようとすればいくらでもネガティブに描くことができます。ですが、希望を持って、ライチョウにとっても人間にとってもよい未来を描きたいというときに必要なものはなんでしょう?
中村:いや、ですからね、どうしたら可能かっていうことを考えるわけですよ。どうしたら可能になるか。そういう形でね、未解明の問題を解明していったら、必ず将来、いい方向に変えることができるっていう。
人間がね、ここまで自然を破壊したんですから、だからやっぱり今人間がね、今できることをしっかりやっておくべきだっていう。
鈴木:そうですよね。よく、手つかずのまま残すのが自然本来の形という意見もありますが、そのままでは廃れるからこそ、自然の尊さを共有し、人の手を入れることで守っていけるものがあると感じます。
中村:自然の中には、例えば、高山の湿原みたいに、絶対に人が手を入れたらいけない場所もあるけれど、日本の自然の多く、高山帯を除けば、ほとんどは人の手を加えることによって自然のバランスが作られて、多様で豊かな日本の独特の里山環境が維持されてきたんです。
鈴木:そうですね。そこが大切なんですね。
中村:ですから、自然に対して、ちゃんと理解ができてることが大切でね。
多くの人が、自然と山と麓、都市を切り離して考えるようになってしまった。なので、たとえば災害が起きたときとか、都市で電気が止まった、ガスが止まったって言ったら、誰かのなにかのせいにして、どうにかしなきゃいけないと。
日本というのは、非常に災害の多い国です。地震から始まって、火山もたくさんありますし、災害の多い国です。日本の自然とうまく共存する文化を、日本人は作り出してきたんです。
人のせいにするんじゃなくてね。自然に対する畏敬の念を持ってね。
鈴木:その通りですね。山から教えてもらったことはたくさんありますが、そこの部分がとても大事。人間が自然の中で生かされていると気づけたこと、下山後も、日常とは一続きで、「自然と繋がっている」と実感できることが畏敬の念になります。
中村:ええ、ええ。
鈴木:うかがいたいことはいくらでもありますが、先生が「楽しい」とおっしゃる気持ちがあってこその研究なんですね。
中村:経験が楽しいんです。未知のことを、誰も知らないことを解明するのが。
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