涸沢から北穂高岳・東稜を登るなら…。『山と溪谷』編集部・阪辻さんが選んだ装備
2018年8月号で通刊1000号を迎えた雑誌『山と溪谷』。その編集部員は、どんな山遊びをし、どんな道具を使っているのか。編集部の阪辻さんに、北アルプスのバリエーションルート、北穂高岳・東稜に登る想定で、装備を選んでもらった。
坂辻さんが選ぶハイキング道具3選
涸沢フェスティバルスタッフ(以下、涸フェス): 阪辻さんといえば、アルパインクライミングのような、外岩をガシガシ登っているイメージがありますが、クライミングをはじめたきっかけは?
阪辻: 山と溪谷社に入社する前から趣味で登山をやっていました。入社してから山岳会に入り、沢登りや山スキー、クライミングを経験していく中で、自分にはクライミングが合っていると気付きました。それからはクライミング、特にアウトドアでのクライミングを中心に遊ぶようになりました。
涸フェス: 今回は、登攀も行うバリエーションルートの入門ルート、北穂高岳・東稜を登る想定で装備を選んでいただきましたが。
阪辻: 涸沢をベースにして、一日で北穂高岳・東稜〜南陵を周るルートを想定して選びました。確実に晴れるとわかっている時に登るので、雨具の下は涸沢にテントとともに残していきます。レインウェアのジャケットは防寒着として携行します。
涸フェス: 山道具を選ぶ時のポイントはありますか?
阪辻: 私は値段が高くても、自分が良いと思ったものを買うようにしています。例えばペツルの「シロッコ」はヘルメットとしては少し高価です。しかし、帽子並みの軽さで唯一無二の存在です。色とかデザインに賛否両論ありますが、私はけっこう気に入っています。
涸フェス: ハーネスはどのメーカーを使っているのですか?
阪辻: アークテリクス「AR-395A」です。今でこそパッドが薄いハーネスが増えてきましたが、この「AR-395A」は、その先駆けです。薄くて軽いのにフィット感が抜群で、4~5年くらい使い続けています。
涸フェス: ザックはパタゴニアですね。
阪辻: パタゴニア「アセンジョニストパック40」、シンプルなクライミング向けのザックです。初代がボロボロになって、これは2代目になります。必要最小限かつ必要充分の強度、機能、容量で、クライミングするときは「アセンジョニストパック40」一択ですね。
涸フェス: 装備の中には、ハーケンやハンマーも入っていますね。
阪辻: 北穂高岳・東稜はまだ登ったことがありません。初見のルートを登る場合は、スリングを多めに持っていき、行き詰まって登れなくなった時のためにハーケンとハンマーを持っていくようにしています。
涸フェス:バリエーションの情報は関連書籍が少なく、ネットで調べてもなかなか出てきません。下調べはどうやっていますか?
阪辻: 山岳会の記録や登山者のブログに情報が載っていることがありますが、そこに書いてあることは、その人の主観の情報ですから、あまり当てにしません。私はWebから情報を得るときは山行記録のテキストではなく、写真で判断するようにしています。
書籍では『チャレンジ! アルパインクライミング』というバイブルがあるのですが、これを読んで下調べすることが多いです。今は中古しか出回っておらず、プレミア価格がついてしまいましたが。あとは、バリエーションを取り上げた『山と溪谷』のバックナンバーや『日本登山体系』あたりも参考にします。
涸フェス: クライマーはストイックに軽量化をする印象があったのですが、阪辻さんが装備を選ぶ理由は軽さだけではなさそうですね。
阪辻: 最近はクライミングに限らず、極端に軽量化することが良いという風潮がありますが、荷物が重いことは、けっして悪いことではありません。例えば、軽さを求めてテントではなくツェルトを選んだ場合、どうしても快適性が犠牲になります。テントを持つことで重量が増えたとしても、それを背負って登れるだけの体力をつければいい。
涸フェス: 軽さだけでなく、自分に合った装備を考えることが重要だと。
阪辻:思考停止しないことが大事だと思います。人から教えてもらったり、メディアで紹介された製品を闇雲に選ぶのではなく、自分にとって安全とは何か、快適とは何かを考えて選ぶことが重要じゃないでしょうか。
涸フェス: 阪辻さんは涸沢フェスティバル開催中は、涸沢会場にいらっしゃるんですよね。
阪辻: はい。『山と溪谷』や登山装備のことなど、気軽になんでも聞いてください。
編集部員の山道具を公開! ヤマケイ涸沢フェスティバル2018開催
2018年7月26日(木)~ 29日(日)の間、ヤマケイ涸沢フェスティバル2018を開催します。会場は、上高地から登山道を歩くこと約 6 時間の涸沢をメインに、 徳沢(上高地より徒歩 2 時間)、横尾(同 3 時間)の 3 つの会場で開 催。「登山の今」をテーマに、登山ビギナーからベテランまで幅広い 層の山岳愛好家に楽しんでいただけるプログラムを予定しています。
プロフィール
阪辻 秀生
山と溪谷編集部に所属する編集部員。登山歴は20年。夏山縦走、低山ハイキングからアルパインクライミング、厳冬期のラッセル登山まで、山での遊びはなんでもやります。現在はフリークライミングとアルパインクライミングがメイン。
沢登り、山スキー、一般縦走、日帰りハイキングも好き。小さいころから旅とか冒険に興味があった。その影響で、クライミングのなかでも冒険的な要素が多いアルパインクライミングやトラッドクライミングが好き。
涸沢フェスティバル2018特集
日本の豊かな山岳環境を守り、次世代につなげるために、世代を超えて自然の素晴らしさを体験し、共有するイベント『カラサワフェス2018』。 深く山を知り、そして皆さんの登山技術のステップアップに役立つさまざまなプログラムを用意している同イベントの見どころを少しだけ紹介!