「グゥワー!」突進してくる真っ黒い塊。クマに何度も遭遇した山岳写真家・曽根田卓さんが語る、九死に一生の瞬間と教訓

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東北の山々を中心に撮影を続ける山岳写真家・曽根田 卓さん。これまで何度もクマと遭遇して危険な目に遭ってきた。うなり声を上げて立ち上がる巨体、ものすごいスピードで突進してくる恐怖......。そのリアルな瞬間と、曽根田さんが実体験から得た教訓を紹介する。

文・写真=曽根田 卓

目次

クマと遭遇しやすい場所と季節

最後に今までクマと出会った場所を季節ごとに挙げていきたい。

は冬眠明けで空腹なクマは食べ物を欲している。ブナや草の新芽を食べ、渓流や残雪の際などによく現われる。

6月はネマガリダケが生える季節。クマの大好物なので、太いタケノコが生える場所にはクマの糞がたくさん落ちている。ネマガリダケが密生する場所は見通しが悪いので、クマが物陰に潜んでいる前提で注意が必要だ。

7月は湿原のミズバショウの実を食べている。焼石連峰(やけいしれんぽう)のような湿原が多い山域で、何度かこの時期にクマと遭遇している。特に朝夕の時間帯に湿原を通過する場合は気をつけたい。

焼石連峰・牛形山八合目の湿原。この場所で二度クマと遭遇した
焼石連峰・牛形山八合目の湿原。この場所で二度クマと遭遇した

9月から10月はナラとブナの実が主食。クマ棚(クマが木の上に枝を集めて作ったもの)を見かけたら、必ずクマが近くにいると判断して間違いない。以前、キノコ狩りで船形連峰(ふながたれんぽう)の升沢(ますざわ)の森を歩いているとき、頭上のブナの木にクマが登っていたことがあった。クマの強烈な獣臭が立ち込める場所も危ない。

焼石連峰・仙北街道の柏峠付近のクマ棚から落ちた実を食べた後のブナの枝
焼石連峰・仙北街道の柏峠付近のクマ棚から落ちた実を食べた後のブナの枝

今年はブナやドングリの実が凶作で、冬眠に必要な脂肪分を蓄えることができず、冬眠しないで、冬場も餌を求めて徘徊するクマが数多く出没すると予想されている。奥山、里山に限らず、冬場もクマに対して注意しなければならない時代になってしまったようだ。

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プロフィール

曽根田 卓

1958年仙台市生まれ。山岳写真集団仙台所属。東北の静かな山をこよなく愛している。共著に『分県登山ガイド3 宮城県の山』、「季節の山歩き」(山と渓谷社)のガイド記事執筆。『山と高原地図 栗駒・焼石』(昭文社)の調査執筆担当。
⇒ (続)東北の山遊び 

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特別インタビューやルポタージュなど、山と溪谷社からの特別コンテンツです。

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