東海道屈指の難所も現在はお手軽ハイキングの名所。薩埵峠で富士山の眺望と旬の桜エビ料理を堪能
読者レポーターより登山レポをお届けします。上町嵩広さんは、日帰りで静岡県の薩埵峠(さったとうげ)へ。江戸時代には東海道でも指折りの難所でしたが、今はお気軽ハイキングが楽しめる場所です。富士山の眺望と桜エビを堪能し、旧東海道で歴史にも触れてきました。
文・写真=上町嵩広
MAP&DATA
ミカン畑の斜面を登ると、そこに絶景が!
秋漁が真っ盛りの桜エビの時期を狙って、静岡の薩埵峠へお気軽ハイキングに行ってまいりました。紅葉前線もすっかり南下した11月下旬、山は冬枯れを迎え始めており、低山ハイキングにぴったりの季節です。
東京からはるばる電車で4時間をかけて静岡県のR東海道本線・興津(おきつ)駅で下車。国道1号に出て東側へ歩いていきます。左手に宗像神社(むなかたじんじゃ)がありました。日本神話にも登場する奥津島比売命(おきつしまひめのみこと)が祭られています。「興津」の地名の由来はやはりこの女神様でしょうか。
興津川に架かる長い橋を渡り、さらにその先で東海道本線の踏切を横断すると、いよいよ薩埵峠の丘陵への取り付きです。ミカン畑の斜面を上がっていきます。道標に従って進み、公衆トイレと墓地の間を抜けて、ほんの5分程度。土の道を上がり切れば、もうそこは絶景!
正面には富士山の雄姿が飛び込んできます。この日はまさに快晴! 青空、大海原そして富士山の三拍子がそろった好展望です。歌川広重が「東海道五十三次」でこの光景を描いたのも納得です。
この日は小春日和ともいえるぽかぽか陽気で、半袖でも充分なほどでした。黄砂が飛んでいるらしかったのでちょっと心配していたのですが、みごとな富士山の姿を拝めることができて、このハイキングの第一の目的は達成です。この先は、薩埵峠の展望台そして由比側の駐車場まで、右手に太平洋が延々と広がる、なだらかな尾根道が続きます。
薩埵峠は、江戸時代には東海道でも指折りの難所でした。当初は断崖直下の海岸線の波打ち際ギリギリを通っていたようで、干潮にならないと渡ることが危険な道だったそうです。今も東名高速道路は海に張り出しています。
旬の桜エビを堪能
ミカン畑を抜けて由比の倉沢地区へ下りてきました。ここでこのハイキングの第二の目的である桜エビ料理の有名店「くらさわや」へ。営業開始直前に到着したのですが、店員さんにお聞きしたところ「およそ1時間待ち」とのこと。せっかくここまで来たし、やはり食べたいので待ちます。
1時間弱でようやく呼び出しです。ラッキーなことに店内から富士山を眺めることができる席に案内してもらえました。メニューは最初から一択の“桜エビセット”。桜エビの釜飯を中心に、桜エビのかき揚げ、そして生の桜エビと釜揚げの桜エビを楽しめるフルセットです。お値段はお高めですが、たまにはこんなぜいたくも許されるでしょう。生の桜エビは甘味が強く、釜揚げはそこに少し香ばしさが加わる味わいです。かき揚げもサクサクで、塩でいただけば桜エビの風味が引き立ちます。ごちそうさまでした。
旧東海道の趣残る街を散策
くらさわやを出て由比駅へ向かって旧東海道の街並みを歩いていきます。今でも格子窓、軒瓦や虫小窓のような古風な造作やその面影を残した民家が点在し、やや細く緩やかな湾曲が続く街道の雰囲気は風情があります。
道中にある元の名主の屋敷であった小池邸は、時代劇に出てくるような潜り戸を抜けて出入りします。こちらは無料で見学ができて、管理人さんから古民家の造りの丁寧な説明とともに、モミジが紅葉していたきれいなお庭も見学させていただきました。立ち寄りの価値ありですね。
再び東へ。いったん由比駅を通り越して由比漁港へ向かいます。旅のお土産に直売所で生桜エビ(冷凍)を購入して締めくくりです。
登山をたしなむ人にはハイキングというよりもウォーキングに近い感覚かもしれません。最近、注目を浴びている“フラット登山”ともいえるでしょうか。のんびりと観光気分で富士山の眺望と旬の桜エビをいただける、眼福と満腹の山旅でした。
(山行日程=2025年11月30日)
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プロフィール
上町嵩広(読者レポーター)
登山歴は15年ほど。普段は奥多摩や丹沢周辺に出没し、八ヶ岳や北アルプスにも出張ります。好きな山は八ヶ岳の編笠山。山の抱負は「ちょっとだけ背伸びした山を登ってみる」。
山と溪谷オンライン読者レポーター
全国の山と溪谷オンライン読者から選ばれた山好きのレポーター。各地の登山レポやギアレビューを紹介中。
山と溪谷オンライン読者レポート
山と溪谷オンライン読者による、全国各地の登山レポートや、登山道具レビュー。
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