9月のオススメ低山は「九」のつく桃太郎伝説が残る九鬼山を、駅から駅まで歩こう!

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低山を愛し、四季を通じて隈なく歩く、「低山フォトグラファー」の渡邉明博さん。 季節に合わせ、9月のおすすめの山として紹介いただいたのは、「九」のつく山であり、「桃太郎伝説」が残るという「九鬼山」。どんな見どころがあるのでしょうか。

富士急行の禾生駅から見えているのが九鬼山

 

残暑が厳しい9月はどんな低山がおすすめでしょう? 「九」のつく山、というわけではないのですが、今回は、山梨県の九鬼山(くきさん)を紹介します。

九鬼山と言えば、大月市が指定した「秀麗富嶽十二景」の一座として知られる富士山展望の山ですが、「むかし昔、あるところに…」で始まる「桃太郎」の伝説が語り継がれている山でもあるのです。

その昔、大月市の「百蔵山(ももくらやま)」で生まれた桃太郎は、上野原市の「犬目」で「犬」を、大月市の「猿橋」で「猿」を、「鳥沢」で「キジ」を引き連れて、九鬼山に棲む「鬼」を退治にやってきたと伝えられています。 さらには、桃太郎が富士山に住む10匹の鬼を退治したところ、1匹が大月の岩殿山に逃げて、残り9匹が禾生(かせい)にある山に逃げたから「九鬼山」になった、という説もあるようです。

天狗岩から見える富士山。9匹の鬼があそこから逃れてきたのかも…

 

桃太郎が鬼を退治に九鬼山に登るというなら、犬や猿、キジは何処で落ち合ったのか…。それが、禾生(かせい)駅周辺で「加勢した」、という話もあるそう。ほかにも大月周辺には、桃太郎と鬼退治にまつわる言い伝えが残っていて、周囲の山・地名にも見て取れ、どの説もなるほどと思うものです。 そんな楽しい話題を持って、九鬼山を歩いてみてはいかがでしょうか?

今回紹介するルートは、駅から駅のおすすめコースです。

富士急行の禾生駅から国道に出て、大月方面に進むと登録有形文化財に指定されている駒橋発電所落合水路が右手に見えてきます。レンガ創りの水路橋は芸術作品と言ってよいものです。

登録有形文化財となっている落合水路橋。1907年建造の煉瓦造アーチ橋で長さは56m

 

橋を渡り右折して愛宕神社コースに入って行きます。直ぐに赤い鳥居の愛宕神社が現れます。ここからが登山道です。 中間点で池の山コースと交わり、途中、天狗岩に寄って山頂を目指します。天狗岩は、狭いですが、このコースの最大の景勝地なのでぜひ寄って行きたいところ。

天狗岩からの展望。地図を広げ、周囲の山を山座同定するのもの楽しみ

 

九鬼山山頂手前には富士見台があり、樹間から富士山が望めます。

九鬼山山頂の様子。晴れれば大菩薩方面がよく見える

 

また富士見台から杉山新道側に少し戻った所にはリニア見晴台があります。冬枯れの時期ならば、眼下を走るリニア実験線が見えるかも知れません。

九鬼山山頂は北側方面が開け、大菩薩嶺などの山々が望めます。 ロケーションを考えてお弁当を広げるのが、山頂か、富士見台かは迷うところでしょう。

山頂からは札金峠方面に下山。途中、ロープのある急な下りがあるので、慎重に通過すると紺屋休場に出ます。ここも開けていて気持ちの良いところ。さらに馬立山分岐で、札金沢コースを下ります。やがて林道に出て舗装道に変わり、踏切を渡って民家の小道を進めば、田野倉駅に到着です。

紺屋休場からは高川山方面がよく見える

 

時間に余裕があれば、馬立山分岐を直進し、馬立山を経て、大月駅まで歩くこともできます。また、田野倉駅には常設の駐車場があるので、ここに車を置いて、禾生駅まで富士急行に乗って周遊してくる方法もあります。

ぜひ地図やガイドブックを開いて、ご自身に合ったコースプランニングをしてみてください。

ひと足早い秋色!

 

 

 
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プロフィール

渡邉 明博

1957年、東京都生まれ。中学時代に写真を始め、1976年から商業カメラマンとして写真を仕事とする傍ら、「山上から富士山を撮る」をテーマに山岳写真家としても確立。「低山フォトグラファー」として中央線沿線の低山にくまなく通い四季折々の風景を撮影。のべ150日に渡る実踏取材を元に『高尾山と中央線沿線の山』(山と溪谷社)を2016年に上梓。白籏史朗賞日本山岳写真コンテスト入選ほか受賞歴多数。山岳写真ASA会長。(写真=水谷和政)

低山フォトグラファーの気ままな山歩き

冬場はもちろん、真夏であっても、低山には見どころがたくさんあります。 ガイドブック『高尾山と中央線沿線の山』の著者で、「低山フォトグラファー」の渡邉明博さんに、季節季節のおすすめ低山情報を聞きました。

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