美しい紅葉に出会うために―。“紅葉の見ごろ”を9月の気温から予測してみよう!

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登山愛好者として身につけておきたい知識、技術を教えてもらう「大人のワンゲル部」。今回は、気象予報士の資格をもつ登山ガイドの上村博道さんに“紅葉の見ごろ”を簡単な計算式で予想していた(!)話を伺った。ぜひ参考にして、美しい紅葉に出会う登山をしてほしい。

 

8月下旬、北アルプスを歩くと、早くも葉を赤く染めているナナカマドがありました。暑い印象が強かった今年の夏ですが、山には秋の気配が漂い始めています。そうなると気になりだすのが、今年の紅葉です。

8月下旬にさしかかった乗鞍岳では少し気の早いナナカマドが紅葉し始めていました
2018.8.18 すてぱんさんの登山記録より

 

例年、紅葉前線は、9月中旬に北海道・大雪山から始まり、12月上旬に関東では千葉県・房総半島、九州では、薩摩半島、大隅半島で終わりを迎えます。約3ヶ月かけて日本列島を南下していきますが、その年によって開始時期や、紅葉の進行具合が異なりますので、紅葉前線を見ながら「登山の計画と紅葉の見ごろが合うだろうか?」と、毎年のように頭を悩ませています。

 

紅葉の見ごろを、計算式で出す!?

関東地方に限られますが、平成19年までは、気象庁から「紅葉の見ごろ予想」が発表されていたのをご存じでしょうか?

気象庁で作成された最後の「紅葉の見ごろ予想の等期日線図(2007年)」(気象庁ホームページより)

 

紅葉の見ごろは、9月の気温と関係があることから、この「紅葉の見ごろ予想」は、「現地9月の平均気温」を用いた以下の計算式が使われていました。

10月1日からの通算日数 = 4.62 × 現地9月の平均気温 - 47.69

例えば、「日光の紅葉がいつ頃、見ごろなのか」を知りたいとします。華厳の滝近くにある、標高1,292mの奥日光・アメダス(地域気象観測システム)で観測された、昨年(2017年)9月の平均気温は、14.3度。

これを計算式にあてはめてみると__

4.62 × 14.3 - 47.69 = 18.376

「18.376」が10月1日からの通算日数となるので、紅葉の最盛期は10月18~19日頃ということになります。そして、前後7日間を紅葉の見ごろとするので、華厳の滝周辺で紅葉を楽しむのであれば、10月11日~27日ごろに行けばいい計算になります。

同様に、河口湖周辺、昨年9月の平均気温は18.1度だったので、計算式に当てはめると、答えが「35.932」。11月4日前後が最盛期となり、10月28日~11月11日が見ごろというイメージになります。

「二十曲峠からの富士山」石割山 :紅葉写真コンテスト2017mizugurumaさんの投稿より

 

今年の紅葉の時期の傾向は?

今年8月30日に気象庁から発表された、1ヶ月予報によると、関東甲信地方の9月の気温は、ほぼ平年並みの予想でした。となると、紅葉の進み具合も、気温の予想と似た傾向かもしれません。

残念ながら、関東以外の地域になると、計算式の係数が変わってくるでしょう(「紅葉の見ごろ予想」は、関東限定で行なわれていました)から、涸沢の紅葉は、この計算式では算出できません。ただ、この計算式からわかるように、9月の平均気温が高いと紅葉は遅れ、低いと早くなる傾向があるのは、全国的に言えることです。

インターネットで検索すれば、地域ごとの紅葉時期などの情報は、簡単に調べることができるでしょう。しかし与えられた情報で計画を立てるだけでなく、「今年は9月に、寒い日が多いなぁ。例年より紅葉は早いかもしれないなぁ」と季節を感じながら、秋の山行計画を立てるのはいかがでしょう。予想と実際に違いがあったとしても、その差を確認できるいい機会になると思います。

プロフィール

上村博道

気象予報士の資格をもつ登山ガイド。安全登山の指導を行っている。 国内では北海道・積雪期日高山脈全山縦走、積雪期知床半島縦走など積雪期の長期山行を行う。海外では、エベレスト8848m、デナリ 6194m、アコンカグア6960mに登頂。
⇒BLOG:ヒロい自然の中で・・・

太田昭彦部長の「大人のワンゲル部」―リーダーとしての力を身につけよう―

登山初心者や、すでに山登りをしているが登山についての基本的な知識を学ぶ機会のない方を対象に、自分の力で安心して山登りが出来るようになって欲しいとの願いを込めて、登山の知識や技術を学ぶ“大人のワンゲル部”を創部しました。メンバーは部長に太田昭彦。コーチに上村博道&絵美という経験豊富な登山ガイドです。この機会にあなたも知識を身に付け、ぜひ自立した登山者の仲間入りをして頂ければ幸いです。(部長・太田昭彦)

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