低山ながら360度の大展望! 紅葉と富士山展望の今倉山・二十六夜山 【パノラマ動画あり】

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低山をこよなく愛す低山フォトグラファーの渡邉明博さんに、季節に合わせた魅力的な低山を紹介いただく本連載。今回は10月におすすめの山として、今倉山と二十六夜山の2つピークを辿り、富士山と紅葉、360度の大展望を楽しみ、下山後は、いわれのある温泉に浸かる、贅沢な山旅をご紹介します!

 

10月になって紅葉前線がやってくると行きたくなるのが、山梨県の都留市と道志村に挟まれている、今回紹介する今倉山と二十六夜山です。特に、今倉山の赤岩からは、快晴ならば、ほぼ関東の全ての山が見える、と言っても過言ではないほど見ごとなパノラマが広がります。ほかに遮るものがなく、低山のピークとしてはトップクラスの大展望が楽しめるのです。また下山口付近には、松尾芭蕉所縁の立ち寄り湯「芭蕉月待ちの湯」があり、帰りのバス便も比較的に多く、登山計画が立てやすい点もおすすめです。

登山口となる道坂隧道バス停

アクセスは富士急行線の都留市駅から。道坂隧道行きバスに乗り、終点で下車。道坂隧道が登山口になります。バス停横には駐車スペースもあります。ここで身支度を整え出発です。トンネル横から登山道に入ると、直ぐにトンネル上の尾根に出ます。右は御正体山。今倉山へは左の尾根を行きます。

ここから次第に傾斜がきつくなり、高度を上げて行きます。振り返るたびに富士山が大きく見えてくるでしょう。急登は続くものの、ひと汗もかけば稜線に飛び出し、今倉山に到着します。ここに今倉山の標柱がありますが、木立に囲まれて展望はありません。

道標をあとに左の稜線を進むと西ヶ原と呼ばれる分岐に出て、道坂隧道からの沢コースが合流します。そのまま尾根を行けば、展望の赤岩(松山ともいう)に到着です。

今倉山・赤岩からの展望

なお、ほとんどの地図に東峰と西峰の表記がありますが、実際は西も東も無く、一つの今倉山であり、道標のある地点を今倉山と捉えた方が良いと思います。

今倉山・赤岩からの展望

狭い山頂ですが展望は見ごとで、南アルプス、北アルプス、八ヶ岳、奥秩父、大菩薩、奥多摩、中央沿線の山々、筑波山に副都心とスカイツリーなど、360度遮るものがない大パノラマに感動するでしょう。来て良かった、と思うに違いありません。

山頂からは起伏が少ない稜線を進んで行きます。緩やかな下りが始まると、いったん菅野林道に飛び出ます。

赤岩から林道までの稜線の紅葉は見事/林道に出る直前、二十六夜山が目の前にみえる

林道左は道坂隧道に下るので、右に少し進み、左側にある登山道に入って、もう少し緩やかに登ると、二十六夜山に着きます。

紅葉の二十六夜山山頂。富士山が大きく浮かぶ

細長い山頂の左右に展望があり、富士山や九鬼山が見られます。また西側には「廿六夜」と彫られた石碑が建っています。
ここの展望も楽しんだら、富士山に別れを告げ、下山です。石碑のすぐ下で道は二手に分かれますので、右に進み、北に延びる尾根を下って行きます。しばらくは急な下りが続きますが、尾根から斜面に変わると、植林のジグザグの下りに変わり、緩やかになると仙人水に着きます。大岩から湧き出している清水は甘味があって美味しいのでおすすめします。

後半の見どころのひとつ仙人水

次に出逢うのは一枚岩の「かっちゃ岩」で、昔、僧侶が岩屋にして住んでいたそう。後半になっても見どころがあるコースは嬉しいですね。

二十六夜の月待ち風習について書かれた看板

コースは、やがて涸れ沢沿いに下って行き、矢多沢と合流すれば間もなく林道に出ます。そのまま道なりに歩くと、上戸沢の集落が現れてT字路にぶつかります。

左に行けば西川バス停に出られますが、バス便が少ないこともあり、ここは右に進んで、「芭蕉月待ちの湯」に向かいましょう。

ここでひとっ風呂浴びながら、「月待ちの湯」で「バス待ちの人」になって都留市駅に戻るのがおすすめです。

なお、マイカーならば、道坂隧道バス停横の駐車場に車を停め、今倉山から二十六夜山を踏んだあと、舗装された林道を下れば周遊で歩くことができます。

今回、歩いた場所

「芭蕉月待ちの湯」について

その昔、この地域には、あたり一面に満々の水を湛え、涸れることがない池があったそうです。周囲の山々から昇る月を写した池の美しさは格別で、松尾芭蕉も、この地に立ち寄り「名月の夜やさぞかしの宝池山(*)」と詠んだと伝えられています。また、陰暦正月と7月の二十六日の夜半に、月の出るのを待って拝むことを「二十六夜待ち」といい、その月待ち信仰のある二十六夜山の麓に設置する温泉施設であることから、「月待ちの湯」の名前が選ばれたそう。

戸沢川沿いの自然に包まれた風流な露天風呂は、定評のある美肌の湯になっている。露天風呂は2つあり石造りと岩造り。男女週替わりで入替え制。

泉質:アルカリ性単純温泉/営業時間:10時~21時/定休日:月曜日/料金710円/駐車場100台
*宝池山の月はなかなかすばらしい。これが名月の晩だったら、さぞかし見事な眺めになるだろう(都留市ウェブサイト「松尾芭蕉句碑」紹介ページより)

『高尾山と中央線沿線の山』

高尾山と中央線沿線の山々の徹底コースガイド決定版! 南に丹沢山塊、北に奥多摩というメジャーエリアに挟まれた中央線沿線の山々は、日本百名山のような有名山岳こそ含まれないものの、首都圏の登山者から四季を通じて親しまれている。鉄道駅から直接登ることができる身近さから、根強い人気がある。著者が140日以上に渡って実踏調査したコース案内と、写真集のような美しい山岳写真でまとめられたガイドブック。富士山展望の山も多数収録。

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プロフィール

渡邉 明博

1957年、東京都生まれ。中学時代に写真を始め、1976年から商業カメラマンとして写真を仕事とする傍ら、「山上から富士山を撮る」をテーマに山岳写真家としても確立。「低山フォトグラファー」として中央線沿線の低山にくまなく通い四季折々の風景を撮影。のべ150日に渡る実踏取材を元に『高尾山と中央線沿線の山』(山と溪谷社)を2016年に上梓。白籏史朗賞日本山岳写真コンテスト入選ほか受賞歴多数。山岳写真ASA会長。(写真=水谷和政)

低山フォトグラファーの気ままな山歩き

冬場はもちろん、真夏であっても、低山には見どころがたくさんあります。 ガイドブック『高尾山と中央線沿線の山』の著者で、「低山フォトグラファー」の渡邉明博さんに、季節季節のおすすめ低山情報を聞きました。

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