陽だまりハイクと遅い紅葉を鎌倉アルプスで楽しむ。相模湾、富士山の眺望と史跡巡りも満喫

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寒さが一段と厳しくなり、秋も終わりかける時期。陽だまりを受けた遅い紅葉を味わいながら、風情豊かな史跡散策を兼ねたハイキングをするのはいかがだろうか? 晴れた鎌倉アルプスの尾根を歩けば、眼下に秋色の市街と、その先に富士山や相模湾を見ることが出来る。

 

かつて幕府が開かれた地、神奈川県・鎌倉は、東・西・北側が山に囲まれ、南は相模湾に面している。こうした天然の防御壁により外敵の侵入を防げることから、源頼朝はこの地を選んだという話は、歴史の授業で聞いたことがあるだろう。

そんな古都・鎌倉市街の北側からの侵入を防ぐように東西に延びる峰々は、現在は「鎌倉アルプス」の愛称で親しまれている。その尾根道に立てば、眼下に古都を望みながら、その先に太平洋が広がる素晴らしい眺望を堪能できる。

晩秋から初冬に差し掛かる時期、この鎌倉アルプスを歩けば、冬の澄んだ空気に広がる眺望と遅い紅葉を楽しめる。寒さが一層厳しくなる時期、鎌倉の史跡散策を兼ねて、低山歩きを楽しむのも興味深い。

そんな鎌倉アルプスを楽しむレポートを今回は紹介する。

コースタイムは2時間半程度、じっくりと鎌倉探索を楽しみたいコースだ

 

陽だまりを受けながら歩ける明月院コースから鎌倉アルプスへ

鎌倉アルプスを歩く場合、鎌倉宮側から歩くことが多いですが、大平山の南西を通る獅子舞ヶ谷は冬の低い陽が届くのがお昼近くになるので、今回(2017年12月7日)は北鎌倉駅から明月院側を通るコースをとりました。

明月院に沿った細い道を進み、民家の横から登山道に入り、背丈ほどある篠竹が茂る道を下ると今泉からのルートに合流します。ワンピッチで小高いピークに到着して、いつもの展望台・勝上献(しょうじょうけん・「献」の上に山冠が付きます)へ下ると、その場所は消えていました。

1ヶ月ほど前(2017年10月頃)、踏み外し事故や老朽化により解体されたそうで(建長寺談)、現在は整地されています。展望台のあった周囲はクサリが張られていましたが、南面の樹木はかなり伐採されたために、展望は開けていました。

かつて勝上献にあった展望台が撤去されたが、下部の樹木が伐採されたおかげで以前より視界が広がっている(写真=白井源三)


快晴の空の下の展望台跡からは、眼下に建長寺、若宮大路を中心とした鎌倉市街、相模湾に浮かぶ大島、さらに遠く箱根の金時山、奥には富士山までが展開していました。建長寺側、明月院側から合流してきた登山者は、その展望に歓声をあげていました。

ここからは西へ下って大王岩へ向かいます。登った狭い台地から望む鎌倉市街と大島が印象的です。さらに西へと進み、覚園寺へ下る分岐を過ぎ、露岩が現れる鷲峰山周辺から少し進んで登った大平山からは、金網越しに横浜ランドマークタワーが望むことができます。下の台地では車座になったグループがトンビに注意しながら食事中だったのが印象的でした。

さらに先に進んだ天園(てんえん)では、2軒あった茶屋は1軒だけとなったものの営業をしています。天園付近の登山路脇の岩の上からの展望は、樹木が成長してだんだんと視界が狭くなっていました。

ここからは続々と登って来るハイカーでにぎわう獅子舞ヶ谷へ降りていきます。12月となるとイチョウの葉はほとんど落ちていましたが、真っ赤なモミジが午後の柔らかな日差しを浴びて青空に浮かんでいました。

鎌倉アルプスの名所になった獅子舞ヶ谷のモミジの紅葉の下で憩う人たち(写真=白井源三)

大王岩の台地から鎌倉市街から相模湾に浮かぶヨットや大島まで見渡せる(写真=白井源三)


落葉で埋まった小沢沿いを下った下山口、頼朝建立の永福寺(ようふくじ)跡の史跡公園は大きな池が見渡せて、谷で冷えた体を温める格好の場所です。

ますます空気が澄み展望が優れる季節、ひだまりハイクと古都散策はいかがですか。

 

 

プロフィール

白井源三

神奈川県相模原市生まれ。1989年ヒンドゥークシュ登山隊に参加、ゴッラゾム5100mに登頂。2005~2007年に南米取材。アコンカグアBCとインカ道をトレッキング。著書に『戸隠逍遙』(クレオ刊)、『北丹沢讃歌』(耕出版刊)、『冬の近郊低山案内』(山と溪谷社・共著)、『分県登山ガイド 神奈川県の山』(山と溪谷社・共著)など。丹沢の写真展を多数開催。

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