モンブランを眺める極上のキャンプ! フランス・イタリア・スイスを歩くツール・ド・モンブラン:トレイルトラベラーズ「世界のトレイルを巡る旅」(9)

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旅と組み合わせて気軽に楽しめる世界のトレイルを紹介する連載「世界のトレイルを巡る旅」。トレッキングをテーマに300日間で世界一周旅行をした山野夫婦が、訪れた五大陸、50を超えるトレイルからおすすめの場所を振り返る。第9回目は、ヨーロッパアルプスのモンブラン山群の周りを、フランス・イタリア・スイスの3カ国にまたがって歩く人気のトレッキングコース、ツール・ド・モンブランでのトレッキングの様子をお伝えする。

 

赤く染まる「アルプスの白い女王」

2016年7月16日(世界一周95日目)

7月10日まで歩いたスロベニアトレッキングの後は、オーストリア、スイスと鉄道の旅を楽しみ、フランス・シャモニーへと向かった。西ヨーロッパの最高峰モンブランの周りに整備された全長約160〜170kmのトレッキングコース、ツール・ド・モンブランを歩きに来たのだ。

★前回記事:スロベニアトレッキングの記事はこちら

ここは、トレイルランニングの大会、UTMB(ウルトラトレイル・ドュ・モンブラン)のコースにもなっており、僕らトレラン好きの憧れの場所でもある。ヨーロッパ有数の山岳リゾートであるシャモニーの街は、たくさんのハイカーで賑わっていた。

レストランやカフェ、アウトドアショップで賑やかなシャモニーの街


ツール・ド・モンブランは、モンブラン山群の周りをフランス、イタリア、スイスの3カ国にまたがる形でルートが整備されている。どこから歩き始めるかは自由であるが、僕らはフランス側で好展望が楽しめるシャモニー谷のモンテ峠から歩き始めた。

登り始めから急登だが、展望が良い。振り返ると谷を挟んだ向こう側に、氷河を抱えた圧倒的な存在感の山群が見える。

シャモニー谷を挟み向こう側にモンブラン山群を望む


徐々にトレイルの傾斜は緩くなり、やがて雄大なモンブラン山群を見渡せるようになった。雲一つ無い快晴に恵まれ、最高の展望が続いた。この辺りは展望が良いだけでなく、真っ赤に咲くアルペンローゼや、途中で何頭ものアイベックスが顔を見せるなど、変化に富んだトレイルだった。

口笛を吹きたくなるような気持ち良いトレイルを楽しみ、今日の目的地へ。

トレイルランニングスタイルで進む人も多く見かけた


今日の寝床は山小屋でもなくゲストハウスでもなく、モンブランからシャモニー谷を挟んだ標高2100mほどの山の上だ。シェズリー湖という小さな湖のほとりに、手に入れたばかりのテントを張る。いわゆるキャンプサイトではなく、大自然の中での野営だ。

山の中での野営は、国や場所によってルールが異なり、どこでもできるわけではない。ツール・ド・モンブランのルート上で野営が可能なのはフランス側のみとなっている。

夕陽に照らされるモンブランを目の前に眺めながら晩御飯を作る。とても贅沢なひと時だ。この日は、300日の旅の中で最も印象に残る一日となった。

今回のトレッキングから導入したテントはさっそく大活躍

「アルプスの白い女王」と呼ばれるモンブランが赤く染まる

 

国が変われば文化も変わる

2016年7月18日(世界一周97日目)

「ボンジョルノ!」

すれ違うハイカーの挨拶が変わった。

ツール・ド・モンブランの3日目は、イタリア側へ。モンブランの山を突き抜けるようにトンネルが整備されており、フランス・シャモニーの街から、イタリア・クールマイユールの街まで、バスで約1時間で移動できる。この日は、クールマイユールから時計回りに、ヴェニ谷を歩いた。

ツール・ド・モンブランの魅力の一つは、フランス・イタリア・スイスの3カ国にまたがってルートが繋がっているということ。国が違うということは、言語や文化、食事も異なる。

フランスでは「ボンジュール」だった挨拶は、イタリアに入ると「ボンジョルノ」へ。白い女王として気品のある姿を見せてくれたモンブランは、モンテビアンコに呼び名が変わった。圧倒的な存在感は変わらないが、イタリア側はゴツゴツとした岩肌がより力強い印象を与える。

イタリア側から眺めるモンテビアンコ


キャンプサイトにも違いがあった。フランス・シャモニーの街で利用したキャンプサイトは朝、移動式のパン屋が来てバケットなどが買えるのに対し、イタリアで利用したキャンプサイトでは、併設する売店で焼きたてのピッツァがいただけた。

さらに国境を越えてスイスに入ると、山小屋で絞りたての牛乳のミルクシェイクを楽しめた。各国のご当地グルメが楽しめるのは、ツール・ド・モンブランの魅力の一つだろう。

キャンプサイトで食べたピッツァは絶品だった

 

峠から眺めるU字谷の絶景

2016年7月20日(世界一周99日目)

ツール・ド・モンブランはモンブラン山塊の周りをぐるりと歩くわけだが、その周囲は複数の谷と峠で囲まれている。富士山のようになだらかな裾野が広がっているわけではなく、氷河できれいに削られたU字谷が広がっているのだ。

この景観は日本ではなかなか見られない。

ツール・ド・モンブラントレッキングの5日目は、峠を越えてスイスを目指した。この日のハイライトは峠越えであり、峠から眺めるU字谷の絶景である。

標高2000mほどのエレナ小屋から標高2500mほどの大フェレ峠まで、苦しい登りが続くが、振り返れば常に絶景。疲れを吹き飛ばしてくれた。

後方に広がるのがフェレ谷、綺麗なU字谷だ


トレイルを約2時間登り続け、ようやくたどり着いた峠はイタリアとスイスの国境。トレッキングで国境を越えるのは初めての体験だ。

大フェレ峠、ここがイタリアとスイスを隔てる国境


峠を越えると景色は一変した。ダイナミックなU字谷が広がるイタリア側と比較し、スイス側は全体的に緩やかな斜面が続いていた。北側ということで雪渓も所々に見られた。

2時間ほどかけて峠を下りきり、この日はラ・フーリの集落にあるキャンプサイトでテント泊。翌日はシャンペ湖周辺を散策し、バスと電車を乗り継いでシャモニーへ。これで僕らのツール・ド・モンブランは終了。

この日は日本を出発してちょうど100日目の節目でもあった。4月に出発して、全日程の3分の1が過ぎたことになる。季節も北半球の本格的なトレッキングシーズンに入り、ここから怒涛の山行が始まる。

スイス側の穏やかな雰囲気のトレイル

 

3カ国のトレイルを一気に楽しめる贅沢なトレイル

ツール・ド・モンブランは、終始美しいモンブラン山群を眺めながら歩くことができ、フランス・イタリア・スイス各国の違いを感じることができるトレイルでした。好展望のトレイルへは、ロープウエイやケーブルカーでもアクセスでき、各自の体力や確保できる日数・時間に合わせて柔軟にトレッキングプランを組み立てられるのも、ツール・ド・モンブランの特徴であり魅力だと感じました。宿泊施設も様々あるため、初めて海外トレッキングに挑戦したいという方にもおすすめしたい場所です。

ツール・ド・モンブランでのトレッキングに関する準備やアクセス、ルート、気候や装備については、トレイルトラベラーズのブログにもまとめていますので、よろしければご覧ください。

スイス側の穏やかな雰囲気のトレイル

 

プロフィール

Trail Travelers 山野尚大・優子

山と旅の愛好家。経営コンサルタントとして平日の激務と休日の山ごもりを両立させる日々から、結婚を機に心機一転、夫婦で絶景トレイルを巡る世界一周の旅に出発。2016年4月からの300日間で、五大陸の50超のトレイルを歩く。「Trail Travelers(トレイルトラベラーズ)」を立ち上げ、旅行と組み合わせたトレッキングの楽しみ方を発信中。
【ブログ】
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トレイルトラベラーズ「世界のトレイルを巡る旅」

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