初冬の低山で使いたい! 冬仕度はグローブから

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山がグッと冷え込む冬の低山、ついつい疎かにしがちなのが指先の保温です。大げさなグローブはまだ要らなそうですが、どんなものを持っていったらいいのか悩みますよね・・・。今回は、そんなビミョーな時期におすすめのグローブについて、さかいやスポーツの高橋さんに教えてもらいましたよ!

POINT
  • 指先の保温で活動量も増える
  • インナーグローブと重ね付けしたい
  • 厚すぎず薄すぎないグローブ

忘れたくない、指先の保温

編集部S:そろそろ寒くなってきたとは思うんですが、どんなグローブを着ければ良いかタイミングがよくわからないです。低山ならそんなに雪は積もってないようですし、まだ要らないですかね・・・?

高橋さん:標高の高いところはもう雪が降っていますし、よほどの低山でなければ必要になってきますね。グローブは大切な防寒具のひとつですが、優先度が下がりがちなので、丁寧に選んであげてほしいです。

編集部S:手持ちの軍手とかはダメ・・・?

高橋さん:軍手はちょっと・・・(笑)登山に使うには、雨や雪に耐える防水、撥水性や、十分な保温力が必要になるので、機能性の高いものがいいと思います。

編集部S:手を冷やしてしまうことで、具体的にどんなリスクがあるのでしょう。やっぱりかじかんで、動かしにくくなるとか。

高橋さん:モノが持てなくなるとかっていうことはもちろんのこと、最悪の場合は凍傷といった危険性もあるわけです。指先、けっこう大事ですよ。

編集部S:それは怖すぎる・・・。グローブ、まじめに選びたいと思います!

高橋さん:指先が冷えると、いざというときに力が入らず、身体を支える動きもできなくなります。身体の末端なので冷えやすいということは当然なんですが、逆に言えばそこをしっかり温めてあげることでパフォーマンスもあがると思います。

編集部S:手が動かないと、気持ちも億劫になりますよね。仮にグローブをしていても、手が冷えて、どうしようもないシチュエーションってありますか?

高橋さん:冷えに関しては体質もありますが、機能として不十分なものや、時期と目的に合わないグローブを着けていると、そうなる可能性も大きいように感じます。たとえば、薄いグローブが使いやすくて、それで登るんだっていうこだわりがある人もいるにはいますけど、ちょっと雨が降ったりとかすると寒いですし、風をスースー通してしまうものは一般的なこの時期の登山であれば避けたほうがいいです。

編集部S:登山中、手を冷やさないために気をつけておいたほうがいいことってなんでしょう。もちろんグローブは防寒に必要なアイテムだと思いますが。

高橋さん:ひとつは手を濡らしたままにしないということだと思います。外の水滴もそうですし、自分の汗もそうですね。濡れた状態で風に吹かれてしまうと、実際の気温よりもさらに冷たい状態にさらされることになります。

編集部S:ただ寒さから身を守るだけじゃなくて、汗や雪から守るっていう意識も必要になるんですね。そのためのグローブでもあるんだなあ。

高橋さん:もうひとつはかなり気温が落ちているときは冷たいものを素手で触らないということです。行動中の冷たい岩場や、鎖場の冷たい金属など、ものすごーく冷たくなっているものは手にも負担が大きいので気をつけてください。

冬はグローブを組み合わせて使うと快適

編集部S:でも、素手で触らないようにといっても、分厚いグローブをいつも着けておくのは邪魔そうな気もします。どうしても外したいときとかありますし。

高橋さん:その質問、来ると思ってました! そんなときに備えて薄めのインナーグローブを着けておくことをおすすめします。

編集部S:重ねて着用するってことですか?

高橋さん:そうですね。インナーグローブは薄めのフリース素材や速乾素材などでできているグローブですが、これを着けておくことで、防寒用グローブを脱いだときでも寒くないんです。

一例としてはスマートウールのインナーグローブなど。メリノウールを使用して保温力バツグンなんです(高橋さん)

編集部S:これだけだと防寒って感じではないけど、テントで食事の料理をしてるときとか、ザックから荷物を取り出したいときとか、そういう時には外さなくていい薄さかも。

高橋さん:防寒用のシェルグローブとは違うので風を防ぐことが目的ではありません。ただ、汗をしっかり取ってドライにしてくれるので、グローブ内の結露を防ぐことができるんですよ。結果、汗冷えを起こしづらくなります。

編集部S:なるほど。グローブに関しては、インナーグローブと防寒用グローブ、大きく分けると2種類という感じですかね?

高橋さん:夏であれば単体使いでレイングローブなども使用しますが、冬のグローブに関してはこの2種類になるでしょう。でも防寒用のグローブもいろいろあるんですよねー。

冬山に使うグローブは、防水透湿性に優れたものが多いです(高橋さん)

編集部S:よくシュラフみたいに、「マイナス◯◯度〜」って表示がありますよね。あの記述を目安に選ぶと良いのでしょうか?

高橋さん:そうですね。ただし、おおよその対応温度が表示されているものは、基本的には冬山用になります。表示がないとか、薄いものであれば低山ハイク用になると考えたほうがいいでしょう。

編集部S:サイズはどうしたらいいですか? 靴みたいにしっかりと細かいサイズがあるわけではないけど・・・。

高橋さん:着用してみて、指先が余らないくらいが適当なサイズになります。でも、完全に「超ピッタリ!言うことない!」っていう感じだったら、気持ちひとつ上のサイズでも良いと思います。

編集部S:どちらかというと、ちょうど良いと感じる着用感は避けたほうが良いってことですか。

高橋さん:いや、そういうわけではないのですが、冬のシーズンでは低温下で血の巡りが悪くなっている状態です。それに気圧の関係で指先がむくみますから、サイズがきついと風に吹かれただけで指先が痛くなることもあります。フィット感はもちろん大事ですが、低温下の状況では適度な余裕を意識して選んでみてもよいかと思います。

厚すぎず、薄すぎないちょうど良さ

編集部S:防寒用グローブ、かなり分厚いものが多いですよね。今の時期だったら、ここまで大げさじゃなくてもいいような・・・。

高橋さん:かといって、薄めのもの、中綿が入っていないようなものだとハイキングやトレイルランニング向けのものなどが多いです。この時期、数百メートル級の低山を歩くのであればこれでも全く問題ないですけど、標高の高い山、たとえば八ヶ岳に行こうとかってなれば、もう一段上のものをおすすめします。

一般的な冬山登山には薄いですけど、トレランなどで指先の感覚をシビアに求める方が使うシリーズもあります(高橋さん)

編集部S:ズバリ、今の時期に着けるんだったらどんな選択肢がありますか?

高橋さん:コンパクトで、分厚すぎないザ・ノースフェイスのアースリーグローブはちょうど良いかもしれません。今くらいの時期から雪がちらほら舞い始める時には絶妙な選択になると思います。あとは真冬の低山ハイキングなんかでもオススメです。

先ほどのインナーグローブの上から着用し(写真左)、指先が余らないくらいがちょうどいいサイズです(写真右)。薄すぎず、厚すぎない中間をズバッと決めてくれるグローブです(高橋さん)

編集部S:コンパクトとはいっても、暖かくて安心感あるなあ。指先も動かしやすいし、モノもがっちり持てそう。

高橋さん:鎖とか、はしごとかを掴んだ時にグリップもいいんですよね。トレッキングポールや水筒とかを握ってもしっかり指先の力が残っている感じがあると思います。

内側はグリップの良い加工(写真左)になっており、握る動作は非常に快適(写真右)。動かしにくいのでは・・・という心配もありません(高橋さん)

編集部S:この"透湿性"ってどういう意味でしょうか・・・?

高橋さん:一言で言えば、湿気を逃してくれるという機能になります。ある程度の湿気でしたら外に逃してくれるので、内部のムレを防いでくれます。

編集部S:さっきのインナーグローブと合わせると、なおさら快適に使えるってわけですね。それに加えてしっかり防水っていうところも嬉しいな。

高橋さん:ハイベントというザ・ノースフェイスオリジナルの防水透湿性素材を使っているので、外からの水の侵入は防ぎます。ゴアテックスと基本的な性質は同じです。雨とか雪が降ったときでも安心して使えますよね。

編集部S:他のグローブと比べて相対的に耐久性は落ちそうだけど、その点は大丈夫ですか?

高橋さん:普通に使っている分には特に問題ないですけど、どうしても消耗品なので生地の痛みは発生します。長く使うコツとして、シーズンが終わったら、洗えるのであればしっかり洗って乾かしてあげることですね。汚れを放置しておくというのはあんまり良くないです。

編集部S:なんか軽く考えていたけど、結局寒くて行動がぎこちなくなるのは嫌だし、これだったらハードすぎないから気軽に使えそうかな。

高橋さん:正直言ってしまうと、もう少し雪が深くなってくるような本格的な雪山ってなると、少し不足かなって思います。ただ、朝方登山道が凍ってるようなときや、稜線で強い風を受けるときなど、そんな時にもサッと使えるのは魅力だと思いますね。

編集部S:防寒用グローブはたくさん種類があったけど、インナーグローブにこれを合わせれば、僕の週末登山にはピッタリかな!

高橋さん:冬の防寒と言えば、昔は毛のグローブにオーバーグローブを重ねるというのが一般的だったんですよね。でも今はグローブの機能も向上して、これ一着で済んでしまうんだから素材の進化ってスゴいなあ・・・(笑)

紹介した山道具

THE NORTH FACE
アースリーグローブ(ユニセックス)

税込6,610円 ※さかいやスポーツでの店頭販売価格

プロフィール

高橋 典孝(さかいやスポーツ ウェア館)

山の世界で働いて20年のベテラン。ウェアに関する知識はオタク級だが山道具も大好き!!
ゆったりオートキャンプからガッツリ登山まで何でもこなすが特に最近は、トレイルランニング、テンカラ釣りに没頭中。

さかいやスポーツ

創業以来、約60年にわたり神田神保町で全国の登山家やアウトドアマンに愛されている登山用品店。ウェア、シューズ、ギアなど品目別の専門館を6店舗展開。ウェアや道具に詳しいスタッフが丁寧に解説してくれるので、ビギナーでも安心。

住所/東京都千代田区神田神保町2-48
TEL/03-3262-0432
営業時間/11:00~20:00
アクセス/神保町駅A4出口より徒歩6分、JR中央・総武線水道橋駅東口より徒歩8分

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