女性の登山スタイルは、下着も山仕様に![2]-「山ブラ」の質問に答えます-
心地よく登山をするための服装に欠かせないアイテムなのに、あまり話題にあがらない「女性の下着」のこと。前回は、「快適性アップの『山ブラ』選び」として、登山仕様のブラジャーの基本的なポイントと、求めるタイプ別のおすすめアイテムを紹介してもらいました。第2弾は、レディースアウトドア専門ショップ LaLaさかいやの山岸さんが、「山ブラ」でよくある質問に回答します。
取材・文=辻 歌
ぴったりサイズの選び方チェックポイント
ライター辻:まずは、山ブラをいざ購入というときに「どんな基準で選べばいいか」を教えてください!
山岸さん:購入するときは、「どのようなシーンで使用し、どのような着用感を求めるのか」を想定してアイテムを選ぶことが大事。具体的には、「激しい動きのある登山か、強いホールド力を求めているか」などです。前回の記事で「タイプ別・おすすめ山ブラ」を紹介しているので、参考にしてくださいね。
それが決まったら、理想に近いモデルをいくつか試着してみて。商品ごとに着用感の特徴やサイズ展開が異なるので、試着前に確認してください。
ライター辻:試着したときにするチェックポイントは?
山岸さん:以下の4つをチェックしてください。
- 着用感がきつすぎるたり緩すぎたりしないか
- カップにバストがしっかりおさまっているか、またはカップが大きすぎないか
- 肩紐がずれないか、または食い込みすぎていないか
- 腕を上げ下げして、アンダーがずれたりしないか
ライター辻:登山シーンを想定した動きに対応できるかの確認が大切ですね。
山岸さん:あとは、肌と干渉して不快感をもたらす縫い目がないか、ご自身のバスト形状とカップの相性で判断されることが多いですよ。
スポーツ用ブラは、山で使っても大丈夫?
山岸さん:お客様からの質問で多いのが、これ。
ライター辻:山で普段づかいのブラを着用するくらいなら、手持ちのスポーツ用ブラを代用したほうがいいのでは!? ということですよね。
山岸さん:たしかに、普段づかいのものよりスポーツ用ブラのほうがいいですね。その際、速乾性が備わっていて、かいた汗を生地内にため込まない構造であることがポイントに。いわゆる「スポブラ」でも、速乾性を重視していないタイプがあるので、そういったものは、できれば避けたいところです。
ライター辻:スポーツ用ブラを山で着用するとき、ほかに気をつけるポイントは?
山岸さん:ザックを背負ったときに、あたって痛いところがないかの確認をして。
確認方法は、まずザックの中身(重り)を入れて背負って、ショルダーハーネス、チェストストラップ、ヒップベルトを締めます。そのうえで、肩紐の縫い目があたって痛いところがないか、肩紐が細すぎて食い込んで痛くないか、背中で当たる部分がないか、腕を上げ下げしたり肩を回したりして気になる部分がないかなどをチェックしてください。
ブラタンクを登山で着用してもOK?
ライター辻:ブラタンクは、近ごろ人気が高くなってきているアイテムですね。
山岸さん:登山向けに作られたアイテムなら、もちろん使用していいと思います。ブラタンクが選ばれている理由は、ブラ+アンダーウェア+Tシャツというレイヤリングからアンダーウェアが外せ、着るものを1枚減らせるところ。
さらに、ブラ単体ほどのフィット感は得られないものの、そのぶん、モデルによっては圧迫感が少なく長時間の着用でもラク。長距離バスでの移動や小屋泊などで、着用したまま就寝がしやすいことも魅力です。
ファイントラック/ドライレイヤーベーシックブラタンクトップ
優れた撥水性があり、汗冷えや汗のベタつきを軽減できる「ドライレイヤー」シリーズのブラタンク。ドライ系アンダーとブラの機能を兼ね備えている。
価格:5,900円(税別)
問:ファイントラックhttps://www.finetrack.com/
ドライ系アンダーとのレイヤードは、どうすればいい?
ライター辻:悩ましいのが、ドライ系アンダーとのレイヤード。汗冷え軽減のために着用する方が増えていますが、レイヤード方法に諸説あるから、何が正解かよく分からなくて・・・。
山岸さん:女性の場合、ブラとアンダーウェアを重ねることになるから、よけいに分かりにくいですよね。店頭でご説明するときも、その商品特徴や、お客様のつけ心地の好みなどをうかがって判断しているんです。
登山向きのブラとドライ系アンダーはともに、速乾性、撥水性、疎水性などをもたらす素材や加工を採用したものがほとんど。それぞれのアイテムがもつ特性と組み合わせ、さらに求めるつけ心地などを加味したうえで、「素肌→ブラ→ドライ系アンダー」「素肌→ドライ系アンダー→ブラ」の2つのレイヤード方法が考えられます。どちらが最適か、自分での判断は難しいから、アウトドア専門店のスタッフに相談してみてくださいね。
ライター辻:たとえば「ドライ系アンダー」だけ見ても、同じような特徴をもつ商品でも、素材が違ったりしますよね。
山岸さん:素材でいうと大きく2つに分類され、ポリプロピレンのような「疎水性」のあるものと、ポリエステルなどの化学繊維に「撥水加工」を施したものになります。
ポリプロピレンは、繊維自体に水を含まない「疎水性」があります。それと同じような効果を発揮するために施される加工が「撥水」。いずれも生地に保水させず、かいた汗をすばやく外側のウェアに移動させることで、肌のドライ感をキープできます。
ライター辻:そのときに重要なのがレイヤリング。
山岸さん:ドライ系アンダーを着用する場合、次に重ねるアイテムは、移動してきた汗を吸収しやすく、表面ですばやく拡散させる素材を選ぶことが大切。吸汗速乾性のあるTシャツなどのベースレイヤーです。
ドライ系アンダーとの間に隙間ができると汗の移動が起きにくいので、上に重ねるウェアはゆったりしたデザインやサイズを選ばず、フィット感のあるものを選ぶといいでしょう。
これは、前回の記事で紹介した「撥水加工を施したブラ」でも同じことが言えるので、覚えておいてくださいね。
ミレー/ドライナミック メッシュ ショートスリーブ
ポリプロピレンをベースにした素材を、メッシュで編み上げたアンダーウェア。汗抜けのいいメッシュで、汗をすばやくベースレイヤーに移行させられる。
価格:5,300円(税別)
問:ミレーhttps://www.millet.jp/drynamic/
ザ・ノース・フェイス/ロングスリーブドライクルー
肌面がポリプロピレン、表側が吸汗拡散性のあるポリエステルになるダブルフェイス構造を採用。疎水と吸水が、この1着でかなえられる。
価格:4,800円(税別)
問:ゴールドウインhttps://www.goldwin.co.jp/tnf/
きちんと選んで正しいレイヤリングすると、汗冷えなどのリスクも少なくなる「山ブラ」。快適かつ安全な登山を楽しむために、再度、見直してみてくださいね。
プロフィール
山岸裕子
登山専門店さかいやスポーツの女性向けショップ・LaLaさかいや勤務。なんとなく山をはじめて、ふと気づけば約20年のキャリアになった山好き。最近ハマっているのは、緩めのトレランと、「軽量・時短・美味しい」にこだわった山ごはんを山友と楽しむこと! お店では日々、女性が快適な登山をできるレイヤリングを提案しています。
LaLaさかいや
神田神保町にある、全国の登山家やアウトドアマンに愛されている登山用品店「さかいやスポーツ」の 、レディースウェアに特化したショップ。スタッフは全員女性で、女性ならではの視点を生かした細や かなアドバイスに定評がある。
住所/東京都千代田区神田神保町2-46 TEL/03-3262-0568 営業時間/11:00~20:00 アクセス/神保町駅A4出口より徒歩6分、JR中央・総武線水道橋駅東口より徒歩8分 https://www.sakaiya.com/wp/shopinfo/lala
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