盛夏の強い日差しにヤマユリが揺れる神奈川県・弘法山。木陰に涼みながら心地よい汗を流す

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抜けるような青空、照りつける強い日差し――。アルプスなどの高山でを満喫したい気候だが、近郊の山でも夏山を満喫できる場所がある。丹沢の山麓から連なる、標高300mにも満たない弘法山は、春の桜の季節だけではなく、初夏の頃もオススメだ。盛夏に咲くヤマユリが登山道沿いに咲き、心と体を癒やしてくれる。

弘法山直下で重い花を下げ、揺れていたヤマユリ(写真=白井源三)


夏の低山は敬遠されますが、秦野市浅間山をはじめ弘法山までの弘法山公園と呼ばれる山域から吾妻山まで一帯は、落葉樹に囲まれていて、登山路が広いので夏でも涼風がそよいで意外と心地よいハイクができます。

小田急線秦野駅を降りると、東側に見える小山が弘法山です。その名の通り、弘法大師にまつわる伝説がある山で、神奈川県の花の名所100選にも選ばれています。一帯は春のサクラが有名ですが、5月はツツジ、6月は紫陽花(アジサイ)、そして7月はヤマユリが山を彩ります。

権現山の広場の木陰で見かけたヤマユリ(写真=白井源三)


ヤマユリはユリ科の中でも最大級の花を付け、白い花が夏の日差しに映えます。今回は7月の弘法山の様子を紹介します。

モデルコース:秦野駅から弘法山公園を縦走、鶴巻温泉へ

コース行程
秦野駅・・・弘法の清水・・・弘法山公園入口・・・浅間山・・・権現山・・・弘法山・・・善波峠上・・・吾妻山・・・鶴巻温泉駅(約3時間)

⇒コースタイム付き地図で見る

 

アジサイからヤマユリへと移ろう初夏の弘法山

弘法山公園一帯に咲くヤマユリを求め、2018年7月1日に目的地へと向かいました。小田急線秦野駅を降りると、まずは名水百選・弘法の清水へ迂回、こんこんと湧いている軟らかな水で喉を潤します。

登山前に秦野駅から数分の名水、弘法の清水に立寄って喉を潤したい(写真=白井源三)


弘法の清水からは水無川沿いに弘法山公園入り口へと向かって登山道へと入ると、いきなり急登の登山路となります。しかし林間を抜ける風は以外に涼しく、順調に最初の山、浅間山へ到着。山頂には早速、ヤマユリが点在しました。

さらに林道に降りて登り返すと、権現山へと到着。山頂直下からヤマユリを見かけましたが、日陰のベンチで一息入れながら周囲を見回すと、右手下方の樹木の根元に何株かのヤマユリが咲いていました。

権現山の山頂広場の木陰で見かけたヤマユリ(写真=白井源三)


ここから先は桜千本と言われる桜並木が続く「馬場道」と呼ばれている道を進みます。7月の初旬なら、まだ元気のいい紫陽花が残る年もあります。今回訪れたのは7月1日だったので、まだ元気なアジサイをたくさん見ることができました。

権現山から下る「馬場道」で紫陽花(アジサイ)に混じってヤマユリが重い頭を垂れる(写真=白井源三)


途中、「めんようの里への分岐」にはかなりの数のヤマユリが点在していて鑑賞出来ます。ここは以前はもっとたくさんの株がありましたが、盗掘があり激減してしまったそうです。どこの山でも問題ですが恥ずべき行為です。

やがて鐘楼と「乳の泉」と呼ばれる井戸がある弘法山の山頂へと到着、この日は木陰を求めて多くの登山者が休憩していました。

山頂ながら鐘楼が建つ弘法山。神社の境内を思わせる(写真=白井源三)


山頂から一度下り、再び登り返して善波峠上へ。ここから落葉樹林が続く登山路を3つほどのピーク越えでこのコース最後の山、吾妻山で一息とります。

あとは鶴巻に降りて温泉に身を沈める楽しみが待つだけです。鶴巻温泉駅の駅前には、「弘法の里湯」をはじめ心地の良い温泉が日帰り温泉地が点在しています。朝の涼しい時間の軽ハイクがオススメで、3時間ほどのコースは心地よい汗を流せるでしょう。

プロフィール

白井源三

神奈川県相模原市生まれ。1989年ヒンドゥークシュ登山隊に参加、ゴッラゾム5100mに登頂。2005~2007年に南米取材。アコンカグアBCとインカ道をトレッキング。著書に『戸隠逍遙』(クレオ刊)、『北丹沢讃歌』(耕出版刊)、『冬の近郊低山案内』(山と溪谷社・共著)、『分県登山ガイド 神奈川県の山』(山と溪谷社・共著)など。丹沢の写真展を多数開催。

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