サポートタイプ? 着圧タイプ? 目的・用途を考えて登山用のサポートタイツを選ぼう!

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『登山用具三種の神器(ザック、登山靴、雨具)』に対して、『新三種の神器』と呼ばれるアイテムをご存じだろうか。「トレッキングポール、アミノ酸、サポートタイツ」について、こう言われることがある。登山者の間ではすっかり使用が定着しているサポートタイツだが、その効果から選び方、メンテナンスについて、改めて確認してみた。

取材・文=吉澤英晃

 

今一度サポートタイツに注目しよう!

登山で膝や腰を痛めた時、対処法としてサポーターを思い浮かべる人は多いはずだ。実際、すでにサポーターにお世話になっている人もいるだろう。部位ごとに痛みや不安を文字通りサポートするサポーターがある一方で、サポートタイツは全体をサポートするものだ。

多くの登山者が、その存在を認識していると思うが、いま一度、サポートタイツの機能や意義について注目。神田神保町にある人気登山用品店さかいやスポーツの高橋さんに、種類や選び方、メンテナンス方法などを詳しく教えて頂いた。

 

快適で涼しく、丈夫で長持ちするサポートタイツ

吉澤: サポートタイツ+ショートパンツのスタイルで山に行くのが一時流行り、サポートタイツへの注目度が高まりましたが、今では少し見かける機会が少なくなったように感じます。

高橋さん: 実際に目にする機会は減ったかもしれませんが、サポートタイツ自身は進化を続けていて、モノは良くなっています。是非この機会にサポートタイツの良さを見直してもらいたいです!

吉澤: サポートタイツの機能について教えて頂く前に、いくつか気にかかることがあるのですが――。夏に季節に肌に密着するタイツを着用すると、暑くて不快なのではないかと心配です。

高橋さん: サポートタイツも季節に応じて、夏用・冬用の種類があります。夏用のものを選べば生地は薄手で吸汗速乾素材を使っているので、逆に気化熱によって涼しさを感じるかもしれません。汗のベタつきも少なくなるので快適になると思います。
ショートパンツと併せて着用するスタイルなら、紫外線対策にもなるのでオススメです。もちろん、素足よりは多少暑さを感じるかもしれませんが、メリットの方が大きいことが体感できるはずです。

サポートタイツには、さまざまなタイプのものが店頭に並んでいる


吉澤: もうひとつ、現実的な話ですが、けっこう値段が高いな・・・、と思っていました。値段分の効果も気になるところですが、どのくらい寿命があるのかも気になります。

高橋さん: 一概に効果が持続する年数を明言することはできませんが――、使い捨ての商品ではないので、それなりに長持ちします。買い替えるまでに使用した日数と値段で計算すると、決して高い買い物ではないと思います。言葉では説明しづらいですが、購入してもらったお客様の大多数の方からは、むしろ「履いて良かった」と高い評価を得ていると思います。

 

「サポート系」、「着圧系」に大別できるサポートタイツ

吉澤: それでは早速、サポートタイツの効果について詳しく教えて下さい!

高橋さん: まずサポートタイツは「サポート系」と「着圧系」の2つの種類に大別できます。それぞれについて説明すると――。まず、膝や腰の痛み不安を軽減させるために作られているのがサポート系です。
一方、サポート効果はないものの、足に圧力をかけて血液の循環を促すことでむくみを軽減したり、筋肉や脂肪のブレを抑えることでパフォーマンスをアップさせたりしてくれるものが着圧系です。コンプレッションと表現されることもあります。

高橋さん: サポート系は、ズバリ、「膝や腰などが痛い、もしくは不安がある」という人にオススメです。老若男女問わず、過去に膝や腰を痛めたことがある、現在痛みを感じている、もしくは下り坂で膝がガクガクしてしまう、といった経験がある人に使ってほしいタイプです。
腰や太腿の外側、さらに膝回りなど、サポートする部分が異なる着圧で作られているので、履くだけでテーピングを施しているような効果が得られます。

吉澤: 「サポート」といいますが、実際には何をサポートしてくれるのでしょうか? 筋肉ですか?

高橋さん: 筋肉もサポートしますが、従来の膝サポーターなどと同様に、膝や腰などの関節が余計な動きをしないように抑えてくれます。動かしたくない部分にブレや振動が起きないようしながらも、動かしたい部分はちゃんと動かせるように設計されています。

サポート系の代表モデルのCW-X。テーピング効果についての説明が確認できる


吉澤: トレッキングポールを使って痛みや不安を軽減させようとしている人も含めて、膝や腰に不安を抱えている登山者は確かに多いですよね。ただ、サポートタイツは見た目がとてもスポーティーで、ハイキングやトレッキングで履くのは大げさかなと考えてしまうのですが・・・。

高橋さん: 実際、山に行くとトレイルランニングの愛好者が多く使っているのを見かけるので、競技用と思う人もいるかもしれませんが、そんなことはまったくありません。一般登山でも、ちょっとでも膝や腰に痛みや不安があれば使ってもらいたいアイテムです。ランナーのようにショートパンツと合わせるのではなく、夏用の薄い登山用のロングパンツの下に着用するのが良いと思います。

 

疲れを残さず、パフォーマンスアップを図りたいなら着圧系

吉澤: もう一方の着圧系/コンプレッション系についても教えてください。

高橋さん: 着圧系タイツは、サポート系にあるテーピング効果は得られない代わりに、下半身全体に圧力をかけて、血液の循環を促すことで足のむくみを軽減したり、疲れを翌日に残りにくくしたりする効果があります。
さらに、筋肉や脂肪の余計な振動を抑える効果もあるので、パフォーマンスをアップさせることが可能です。

吉澤: サポート系は使用する人を具体的にイメージできたのですが、着圧系はちょっと想像しづらいです。どういった方にオススメなのでしょうか?

高橋さん: 例えば、週末に登山をして翌日からの出勤日に疲れを残したくない社会人、長距離縦走で日々の疲労を軽減したい登山者、トレイルランニングなどでより良い結果を残したい競技者などにオススメです。

着圧系のタイプは、長時間履いてのストレスのない立体裁断と素材が特徴


吉澤: 腰や膝の痛みや不安は関係なく、健康な人がより良い状態で登山を楽しむことに効果があると理解すればよいですね?

高橋さん: 登山中に限った話ではなく、疲れが残っていればふだんの生活で着用してもいいと思います。また、立ち仕事に従事している人や、日々歩くことが多い営業職の人などにもオススメできます。
ほかにも、週末にハードな登山をした後に、週の半ばでも疲れが残ってしまうことってよくありますよね。一日でも早く疲労を回復させて、日常生活や次の山行に備えたい場合も、良いかもしれません。

吉澤: 話を聞くと、着圧系とサポート系の両方の効果が欲しい、と思ってしまいました。

高橋さん: そんな人は、ひとまずサポート系タイツを選ぶといいでしょう。サポート系タイツにも、僅かではありますが着圧効果があります。比較すれば効果は小さめですが、多少は得られるでしょう。

吉澤: 基本的には、優先させる効果によってテーピング系かサポート系かを選べばいいわけですね。

 

「行動前」から着用し、必ずサイズに会うものを選ぼう!

吉澤: サポートタイツはロングタイツのほかにも、ハーフタイツもありますね。効果の違いは何ですか?

高橋さん: 着圧系の場合は足の一番下から圧力をかけたほうがいいので、ロングタイツを選んだほうが効果があります。ただし、特にお尻周りや太ももに疲労がたまる人の場合はハーフタイツを選択してもいいでしょう。これは体力レベルと着用した後の動きやすさで選ぶといいと思います。
サポート系を購入するなら、ハーフタイプだと膝部分がサポートされないので、登山ではロングタイツの方がオススメです。

吉澤: ところで、ピタッとフィットするので圧迫感が気になります。ずっと着用していて大丈夫でしょうか?

高橋さん: ある程度、長時間履くことを想定されています。サポート系は膝や腰に痛みが出てから着用しても意味がないので、必ず家を出発する時から履いてください。もちろん着圧系についても同様です。
また、前にお話したとおり、登山の疲れが残っている場合は日常生活でも利用できるので、山に登る休日以外でも幅広いシーンで使用できます。

吉澤: というと、例えば泊まりでの登山のときには、履いたまま寝てしまっても大丈夫ですか?

高橋さん: これは各メーカーによって意見が分かれるところですので、必ず使用方法を確かめてから使用して下さい。例えば、少しでも心臓に疾患がある場合は脱いだ方がいいでしょう。

吉澤: 効果を考えると、サイズの選び方が大事になる商品だと思うのですが、その際の注意点を教えて下さい。

高橋さん: ブランドごとにサイズレンジが細かく分かれているので、まずはそれをチェックしましょう。商品の特性上、ジャストフィットしていないと意味がないので、試着できる専門店でスタッフに聞いて、サイズを確かめながら選んでいただくのがいいと思います。

吉澤: サポートタイツは一般スポーツ用品店などでも販売されています。試着さえできればどのお店で相談しても同じでしょうか?

高橋さん: サポートタイツの種類は効果によって2つに分かれると説明しましたが、想定するスポーツによっても、トレイルランニングやトライアスロン、フルマラソン、バイク用など、それぞれ作りが異なります。ハイキングやトレッキングで使用する場合は、山登りに特化しているものを選んだほうがいいので、やはり登山用品専門店に相談した方がいいですね。

吉澤: 山のことは登山用品専門店に相談すれば間違いないですね。今回はありがとうございました。

 

次回はサポートタイツのメンテナンス方法から、他のサポートグッズなどについて説明します!

 

プロフィール

高橋 典孝(さかいやスポーツ ウェア館)

山の世界で働いて20年のベテラン。ウェアに関する知識はオタク級だが山道具も大好き!!
ゆったりオートキャンプからガッツリ登山まで何でもこなすが特に最近は、トレイルランニング、テンカラ釣りに没頭中。

さかいやスポーツ

創業以来、約60年にわたり神田神保町で全国の登山家やアウトドアマンに愛されている登山用品店。ウェア、シューズ、ギアなど品目別の専門館を6店舗展開。ウェアや道具に詳しいスタッフが丁寧に解説してくれるので、ビギナーでも安心。

住所/東京都千代田区神田神保町2-48
TEL/03-3262-0432
営業時間/11:00~20:00
アクセス/神保町駅A4出口より徒歩6分、JR中央・総武線水道橋駅東口より徒歩8分

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