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奥多摩・奥秩父のメインルートを歩き尽くした登山者向け。山田哲哉ガイドのオススメ実線ルートを紹介

山の疑問・難問、山岳ガイドが答えます!
基礎知識 2019年07月24日
nokkieさんからの質問!

質問:地図で実線の奥多摩・奥秩父のルートは7割ほど踏破しました。沢ルート以外で、単独、小屋泊・テント泊も含めて、奥多摩・奥秩父のオススメのルートをマイナー、破線含めて教えていただけませんか? できれば車使用、周回ルートを基本に。最適季節も知りたいです。

日帰りでは、

  • 冬季:瑞牆山荘 - 金峰山往復
  • 冬季:東日原 - 二軒小屋尾根 - 雲取山 - 富田新道 - 東日原
  • 残雪期:毛木平 - 千曲川源流 - 甲武信岳 - 十文字峠 - 毛木平
  • 春季:余慶橋 - 岩岳尾根 - 飛龍山 - 竿裏峠 - 天平尾根 - 丹波山村役場 - 余慶橋
泊りでは、
  • 冬季:丹波山村営駐車場 - 後山林道-ヨモギ尾根 - 奥多摩小屋(天泊)- 雲取山 - 七ツ石山 - 登り尾根 - 丹波山村営駐車場
  • 春季天泊:黒文字橋 - 雁坂峠(天泊)- 黒岩尾根-黒文字橋
以上のルートが歩けるレベルです。

私にとってのベストルートは、春季の大弛峠 - 甲武信岳(日帰り)です。

 

僕の大好きな奥多摩、奥秩父を縦横に歩いてらっしゃいますね。それに「二軒小屋尾根からの雲取山」「岩岳尾根を経由した飛龍山」などの破線のルートや、地形図上では道記号のない所までよく研究して歩いているのがわかります。

そのため回答については本音を言うと、「これだけ、面白いルートを地形図や、ガイドブックから見つけてくる方であれば、オススメのルートは、まさに、自分で見つけてくるのが楽しいはず!」です。

山岳ガイドと言う仕事柄、ひとつの山に向かうと、

「登山道の表記はないけれど明瞭な尾根だな。あの尾根、歩いたら楽しそうだな」
「地形図で見ると、広葉樹のマークが続くけれど、紅葉の時、最高かもしれない」
「この木の根だらけの尾根・・・積雪期に木の根が埋もれた方が楽しそう」

などと、いろいろとその山のステキなルートを探したり、美しい季節などを頭の中で描いたりするのが習慣になってしまっています。だから質問された方も、季節ごとの魅力あるルートを見つけ、奥多摩・奥秩父の魅惑のスポットを見つけることを、まずお勧めします。

そして、実はこの「計画をたてる」行動ことこそが、登山の楽しみの半分を占めていると思っています。ときには「期待外れ」や「想像と全然違って、体力的には厳しい上に楽しめなかった」もあると思いますが、「やったね。誰にも教えないで、僕だけの秘密のルートにしておこう!」となった際の嬉しさは最高の気分です。

★登山に関する質問・お悩みを募集中! 山岳ガイドの山田さんが、あなたの難問にお答えします

 

山田哲哉ガイド厳選の奥多摩・奥秩父オススメ実線ルート

という回答で済ませたいところですが、密かなオススメルートを少しだけ紹介します。ただし、いわゆる「破線ルート」は、やはり道迷いや岩場などの困難があるので、避けたプランにします。

 

■ 奥秩父、荒川水源の川又バス停を起点に、荒川水源と十文字峠道を歩く

本当は荒川源流に付けられた甲武信岳最初の登山道・真ノ沢林道が大好きなのですが、この道は、奥秩父最大の名瀑・千丈ノ滝まではとぎれとぎれに道があるものの、そこから先はほぼ完全に消失。この付近の精通者を自認する僕でも、右往左往させられる迷路です。とてもオススメは無理です。そこで、もう一本の源流の道・股ノ沢林道を選びます。

この歩道、赤沢谷出合から上は首都圏最大の原生林。巨樹の林立する中に白く泡立つ荒川源流の渓谷美が見事です。また、赤沢谷出合までは1970年代まで運行していた森林軌道跡を辿るなど、森の歴史も考えさせられます。

ただし、実線ルートでも、鹿の獣道と登山道の区別が難しく、また源流の道が股ノ沢の厳しい部分を高巻く関係で、どうしても判りにくく、毎年、年中行事のように行方不明や事故死が起きているのも事実です。

途中に避難小屋としての柳小屋、四里観音避難小屋、白泰山避難小屋があり、十文字峠上には食事つきで泊れる十文字小屋もあります。

十文字峠道の埼玉・秩父側は、年々、道がか細くなる傾向がありますが、それでも石器時代から歩かれた峠道。奥秩父一番の峠越えが待っています。股ノ沢林道に限って言えば盛夏が、十文字峠道を考えると秋がお勧めです。

行程:
【1日目】 秩父市大滝・川又バス停・・・赤沢谷・・・柳小屋・・・四里観音・・・十文字峠(十文字小屋泊)
【2日目】 十文字峠・・・四里観音避難小屋・・・三里観音・・・二里観音・ノゾキ岩(白泰山避難小屋)・・・栃本関所跡・・・川又バス停
※日程的に出発前泊、山麓泊が必要

 

■ 金峰山から大日岩を経由して小川山

奥秩父の王者・金峰山から瑞牆山荘へと向かう登山道の脇に聳える大日岩を越えて美しい原生林の八丁平から小川山を目指すコースです。

金峰山は幸か不幸か、奥秩父主脈縦走路の大弛峠への林道が舗装されて以来、この峠からの日帰り往復や、瑞牆山荘前からの往復が増えていますが、この金峰山の長野側の森林限界に建つ金峰山小屋(食事が美味しく、羽毛布団!)に宿泊し、朝夕の八ヶ岳や南アルプスを飽きるまで見て楽しんでほしい山です。

そして、つい数年前までは破線ルートだった大日岩から小川山を目指すのがオススメルートです。金峰山に早朝に立ち、南アルプスに向かって歩くような千代の吹き上げの道を歩き、原生林の中を大日岩へ。いったん、この巨大な花崗岩の上をめざし、直下で西側にトラバース。そして、再び原生林の中に入ります。

この辺りは、巨樹の密集の中にありながら明るく、長野側は奥秩父の独特の良さを感じさせられます。また、少しずつ標高を稼ぐ尾根は所々に展望の良い露岩もあり、飽きさせません。

そして奥秩父の不遇の名山! 小川山の山頂へ。随所で、朝、出発した金峰山が大きく見られます。

お勧めの時期としては、原生林の彩る紅葉が美しい秋でしょう。

行程:
【1日目】 長野県川上村・廻り目平・・・中ノ沢出合・・・金峰山小屋(泊)
【2日目】 金峰山小屋・・・金峰山・・・千代の吹き上げ・・・大日岩・・・八丁平・・・小川山・・・廻り目平

⇒地図を確認する

 

■ 奥多摩主脈を御岳山から大岳山、御前山、三頭山縦走

最後に奥多摩のちょっと張り切った縦走コース。ただし、周回は難しいのでマイカー使用は困難です。また、このコースはテント指定地がなく、秩父多摩甲斐国立公園の中の東京都の避難小屋は原則的に「非常時の避難用」なので予定の宿泊は避けたいです。宿泊をどうするか? ・・・は工夫してください。

この奥多摩主脈は、標高こそ雲取山から続く長沢背稜や石尾根には及ばないものの、文字通り奥多摩の「背骨」です。1970年までは、高校山岳部などが最初のテント縦走として歩く代表的なコースでした。

ただ、現在では大岳山と御前山の間の大ダワに林道が、月夜見山から三頭山にかけての多くの部分で奥多摩周遊道路が通りました。特に、後者はバイクの走る舗装路を横断・通行できるようになってしまい残念ですが、それでもやはり奥多摩主脈。一度は歩きたいコースです。

御岳山まではケーブルカーを使い、大岳山、大ダワ、御前山と大きな標高差を上下し、小河内峠から月夜見駐車場に出て、鞘口峠から三頭山へと向かいます。奥多摩で最も目立つ山・大岳山。美しい三角錐の御前山、原生林に覆われ優れた展望の三頭山と、それぞれに魅力タップリです。

優秀なトレイルランナーの人なら日帰り可能ですが、一般的には無理です。中間の御前山避難小屋前には水がありますが、ここはテント指定地ではありません。御前山避難小屋、三頭山避難小屋もありますが、避難小屋使用のルールを考慮してプランを考えてください。

標高が低いので、盛夏は、暑さ対策が強いられ厳しい登山となります。真夏を避ければ、季節ごとの魅力が楽しめます。

行程:
御岳山山頂駅・・・大岳山・・・大ダワ・・・御前山・・・小河内峠・・・月夜見山駐車場・・・鞘口峠・・・三頭山・・・都民の森(総距離:約22.8km/累計標高差:上り2584m 下り2431m)
※御前山からいったん、山麓に下山して、民宿泊等を利用してみては?

⇒地図を確認する

 

山田哲哉ガイド主宰「風の谷」 やまあるき講座

近郊の日帰り登山と一泊~二泊程度の山小屋泊まりの登山講座を開催中です。ガイドブックのコースタイムの2~3割ほど時間をかけて、ゆっくりペースで歩きます。

[ 2019年スケジュール ]
7月22日~23日 南アルプスの女王・仙丈岳
7月29日~31日 バリエーション入門!北穂高岳東稜
8月 5日~ 6日 北アルプスの秘峰・僻遠の地の不遇の餓鬼岳
8月19日~21日 白峰三山・北岳、間ノ岳、農鳥岳縦走
8月27日~28日 ゆっくり登ろう!「高い山」入門・甲斐駒ケ岳
9月 3日~ 6日 白馬岳から、雪倉岳、朝日岳を越えて、栂海新道を日本海・親不知まで大縦走
9月10日 奥秩父・瑞牆山
9月18日 天神尾根から谷川岳日帰り登頂
9月26日 原生林と草原と展望の大菩薩・小金沢連嶺

▽「やまあるき講座」について、詳しくは下記リンクをご覧ください。
http://www.ne.jp/asahi/tetsu/kazenotani/yamaaruki.html

▽一歩上の山を目指したい方は、「アルピニスト講座」も募集中です。 http://www.ne.jp/asahi/tetsu/kazenotani/alpinist.html

教えてくれた人

山田 哲哉

1954 年東京都生まれ。小学5年より、奥多摩、大菩薩、奥秩父を中心に、登山を続け、専業の山岳ガイドとして活動。現在は山岳ガイド「風の谷」主宰。海外登山の経験も豊富。著書に、登山技術全書「縦走登山」(山と溪谷社)ほか、「奥秩父、山、谷、峠そして人」(東京新聞出版局)など多数。
 ⇒山岳ガイド「風の谷」
 ⇒質問・お悩みはこちらから

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(日本気象協会提供:2019年12月15日 17時00分発表)
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