普段から天気に関心を持てば実際の山で生きる! まずは週間天気予報から確認しよう

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どんなに素晴らしい山に行っても、天気が悪ければ楽しさは半減。安全登山の面からも、天気と登山は切っても切れない関係だ。そこで、登山者が知っておきたい天気情報の入手方法・確認方法などの天気の基本を、山岳防災気象予報士の大矢康裕氏から、じっくりレクチャーいただこう。

 

ヤマケイオンライン読者の皆様、はじめまして。山岳防災気象予報士の大矢です。山岳気象による遭難を少しでもなくそうと、TwitterやFacebookでの情報発信、講習会、気象講座記事の寄稿などの活動をしております。

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今回、ご縁がありましてヤマケイオンラインさんのコラムに投稿させていただくことになりました。このコラムをきっかけに皆様に天気について関心を持っていただき、事故防止のお役に立てればと願っております。末長いお付き合いをお願いします。

2度目のキリマンジャロ(5895m)の山頂にて


山の天気を語るうえで基本となることは「山は平地よりも天気が崩れやすい」ということです。平地では悪天でなくても、山では風が強かったり、雨や雪が降っていたりすることがあります。

例えば、夏の暑い時期に午後からの夕立となるのは夏の風物詩ですが、この雷も平地よりも山の方が発生しやすくなります。本コラムでは、こうした「平地と違う山の天気」について、季節ごとに過去の遭難事例などを基に解説していきたいと思います。また、季節ごとの代表的な天気図と予想される山の天気などについても取り上げていきたいと思います。

 

週間天気予報の見方を知り、週末の天気を予想しよう

山に入って思わぬ悪天候に遭って慌てないようにするには、普段から天気について関心を持っておくことが大切です。毎朝、平地の天気予報をチェックして、毎晩、実際の天気図と天気を思い出して「答え合わせ」をする習慣をつけることが、山の天気を知る第一歩です。

その詳細は次回以降のコラムで解説しますが、まずは、すぐに役立つ実践的な気象情報として、今回は気象庁の週間天気予報について取り上げたいと思います。

多くの読者のみなさんは、週末の土日に登山されると思いますが、次の日曜日の天気予報は、いつ知ることができるかご存じでしょうか。1週間前の日曜日の午前11時頃に発表される気象庁のホームページの週間天気予報を見ると、次の日曜日までの天気予報が確認できます。

なお、週間天気予報は気象庁以外でも発表されていますが、全て気象庁による数値予報データが大本(おおもと)ですので、まずは気象庁の情報をチェックしていきましょう。

余談になりますが、気象庁のホームページはかなり多くの情報があるにもかかわらず、多くの方がご存じないと思います。次号以降、必要に応じて気象庁のホームページ情報についても紹介していきたいと思います。

話を週間天気に戻すと、下の図は2019年7月14日(日)の週間天気予報です。週間天気予報の発表時刻に注目してください。週間天気予報は、毎日お昼前の11時頃に発表されています。これより早い時間にチェックしても古い情報になります。最新の気象観測データを基にして予報は日々変わっていきますので、週間天気予報も常に最新のものをチェックすることがポイントです。

気象庁ホームページの週間天気予報(7月14日、11時頃の様子)より


気象庁のホームページの週間天気予報のページを確認すると、上記のように最初に1週間の天気概況があり、続いて週間予報ベースで大雨や大荒れの恐れがあればここに記載があります。なお、7月14日の時点では大荒れ情報はありません(ただし、前述のように週間天気予報は日々変わっていきますので、毎日チェックすることが大切です)。そして、この週は梅雨前線の影響で東日本と西日本は曇りや雨の日が多いことがわかります。

概況の下には全国の主だった地点の週間天気予報が掲載されます。ここに掲載のない地点は、画面一番上の「各府県の週間天気予報」のプルダウンから選択してください。お天気マークの下にある数字は、最低気温/最高気温、その下は降水確率(%)の予想です。翌日の予想だけ降水確率が4つ記載されているのは、それぞれ0~6時/6~12時/12~18時/18~24時の降水確率を表しています。

そして注目は3日目以降の降水確率の下に「A、B、C」のアルファベットが書かれています。これは予報の信頼度を表していて、予報の確度が高い順にA、B、Cのランク付けがされています。例えば、中部山岳がある長野県を確認すると、木曜日以降は「C」になっています。これは木曜日以降の週間天気予報が不確実で、今後変わる可能性が高いことを示しています。従って信頼度が高くなるまで、週間天気予報をチェックする必要があるということです。

現在の予報技術を使っても、梅雨の時期は1年で最も予報が当たりにくい時期です。小まめに天気予報のチェックをお願いします。そして金曜日の17時以降には、もっと詳細な土日の天気予報を見ることができます。なお、天気予報については別の機会に解説したいと思います。

 

プロフィール

大矢康裕

気象予報士No.6329、株式会社デンソーで山岳部、日本気象予報士会東海支部に所属し、山岳防災活動を実施している。
日本気象予報士会CPD認定第1号。1988年と2008年の二度にわたりキリマンジャロに登頂。キリマンジャロ頂上付近の氷河縮小を目の当たりにして、長期予報や気候変動にも関心を持つに至る。
2021年9月までの2年間、岐阜大学大学院工学研究科の研究生。その後も岐阜大学の吉野純教授と共同で、台風や山岳気象の研究も行っている。
2017年には日本気象予報士会の石井賞、2021年には木村賞を受賞。2022年6月と2023年7月にNHKラジオ第一の「石丸謙二郎の山カフェ」にゲスト出演。
著書に『山岳気象遭難の真実 過去と未来を繋いで遭難事故をなくす』(山と溪谷社)

 ⇒Twitter 大矢康裕@山岳防災気象予報士
 ⇒ペンギンおやじのお天気ブログ
 ⇒岐阜大学工学部自然エネルギー研究室

山岳気象遭難の真実~過去と未来を繋いで遭難事故をなくす~

登山と天気は切っても切れない関係だ。気象遭難を避けるためには、天気についてある程度の知識と理解は持ちたいもの。 ふだんから気象情報と山の天気について情報発信し続けている“山岳防災気象予報士”の大矢康裕氏が、山の天気のイロハをさまざまな角度から説明。 過去の遭難事故の貴重な教訓を掘り起こし、将来の気候変動によるリスクも踏まえて遭難事故を解説。

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