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山の風を予想して遭難を避けよう! 台風11号崩れの低気圧の実例で「Windy」の使い方を知ろう

山岳防災気象予報士・大矢康裕が教える山の天気のイロハ
基礎知識 2019年08月30日

山では季節を問わず注意すべき気象現象の一つ「強風」。今回は高所での風を視覚的に知ることができる「Windy」というサイトを紹介する。

ヤマケイオンライン読者の皆様、山岳防災気象予報士の大矢です。台風11号は大陸に進んだ後、いったん不明瞭になりましたが、台風の残骸の暖かく湿った空気が再び温帯低気圧としてまとまって、8月28日から8月29日にかけて日本海から北日本に進みました。この低気圧によって北日本から西日本の広い範囲で山の稜線では非常に強い風が吹きましたが、麓の天気予報では予想が非常に難しいケースでした。

山では季節を問わず強風は注意すべき気象現象の一つです。強風による滑落はもちろんのこと、2009年7月のトムラウシ遭難事故のように夏でも低体温症によって亡くなられる方もみえます。今回の記事では高所での風を視覚的に知ることができる「Windy」というサイトをご紹介いたします。スマートフォンでも「Windy」のアプリがありますので重宝します。以前は「Windyty」というサイト名でしたが、2017年に「Windy」と改称しています。

 

実際に「Windy」で風の動きを見てみよう

8月28日(水)12時の「Windy」による地上の風の様子を確認


上の図は8月25日(日)の21時の観測データに基づく8月28日(水)12時の「Windy」による地上の風の様子です。風だけでなく、等圧線も表示させています。中国東北区と日本海に低気圧があり、日本の南東海上には太平洋高気圧があります。日本海の方の低気圧が台風11号崩れのものです。右下に風速の色分けのスケールが表示されており、風のデータを表示するポイントは北アルプスの剱岳付近に合わせてあります。

拡大すると地形図と一つ一つの山の名前まで表示されます。低気圧の南側の海上では日本海・太平洋側沿岸ともに10~15m/sの強風になっていますが、剱岳付近は4m/sの弱風になっています。これは地表面との摩擦によって風が弱まってしまうためです。

8月28日(水)12時の800hPa(上空約2000m)の風と等高度線


次の図は同じ日時の800hPa(上空約2000m)の風と等高度線の様子です。等高度線は高層天気図では等圧線の代わりに使われるものです。高度が高い所が高気圧、低い所が低気圧で、日頃から地図を使用する私たちのような登山者には一般の人よりも直感的で分かりやすいかもしれません。これを見ると、西日本から北日本の広い範囲で10m/s以上の強風が予想されていて、20m/sを超えるエリアもあることが分かります。剱岳付近では風速12m/sの予想です。

8月28日(水)12時のく700hPa(上空約3000m)の風と等高度線の様子


3番目の図は同じく700hPa(上空約3000m)の風と等高度線の様子です。高度とともに風が強くなる様子が分かります。剣岳付近は20m/sを超える強風の予想で、この風速で岩稜を登ることは自殺行為です。15m/sを超える風速では真っすぐに歩くことは不可能で、岩場での基本の3点支持をやった時点で飛ばされます。四つん這いになって冬山でやる耐風姿勢を取ることが必要になります。この姿勢では岩場では行動不能になります。

このように「Windy」は登る山の標高に合わせて、950hPa(約600m)、975hPa(約750m)、900hPa(約900m)、850m(約1500m)、800hPa(約2000m)、700hPa(約3000m)の風の分布を知ることができるたいへん便利なツールです。風だけでなく、気温、降水量、降雪量や積雪深さ、雲などの予想もできます。雪については冬山シーズンに入ったら、改めてご紹介したいと思います。

⇒風の動きを視覚的できるウェブサイト「Windy」

「Windy」は全世界をカバーしていますので、例えばアフリカ大陸最高峰のキリマンジャロの最高点ウフルピーク(Uhuru peak)5895m付近の気温、風などの予想も見ることができます。2008年1月に2度目のキリマンジャロ登頂を達成した時は、現地入りする前に麓のナイロビ(ケニアの首都)のホテルで何とかインターネットに接続しても、非常に限られた情報でしか気象データが入手できなかったことを思うと、まさに隔世の感があります。

 

登山計画
教えてくれた人

大矢康裕

気象予報士No.6329、株式会社デンソーで山岳部、日本気象予報士会東海支部に所属し、気象防災NPOウェザーフロンティア東海(WFT)山岳部会の一員として山岳防災活動を実施している。
日本気象予報士会CPD認定第1号。1988年と2008年の二度にわたりキリマンジャロに登頂。キリマンジャロ頂上付近の氷河縮小を目の当たりにして、長期予報や気候変動にも関心を持つに至る。
現在、岐阜大学大学院工学研究科の研究生として山岳気象の解析手法の研究も行っている。

 ⇒Twitter 大矢康裕@山岳防災気象予報士
 ⇒ペンギンおやじのお天気ブログ
 ⇒岐阜大学工学部自然エネルギー研究室

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