1泊2日で雪山と温泉を楽しむ周回コース。福島県・安達太良山

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福島県・安達太良山。温泉がある山小屋に一泊できる人気のコース。コースタイムも手頃で、天候や積雪の好条件を選べば、雪山初心者にもおすすめだ。

吹きだまりのトラバースを終えると、くろがね小屋の絶景がとびこんできた(写真=奥谷 晶)

 

天候に恵まれれば本当の青空と絶景を楽しめる雪山登山、しかも温泉がご褒美に待っている、そんな期待に胸躍らせて福島県・安達太良山へ向かいました。あだたら高原スキー場から周回する1泊2日のコースです。

安達太良山は福島県中部に位置し、年間を通して人気がある山です。人気の理由のひとつに、温泉がある通年営業の山小屋・くろがね小屋の存在があります。

くろがね小屋に宿泊すれば、余裕を持った行程で登れるので、雪山初心者にも人気がありますが、コース上には雪崩や道迷いに注意が必要な場所もあります。

 

モデルコース:奥岳登山口~勢至平~くろがね小屋~安達太良山~奥岳登山口

行程:
【1日目】奥岳登山口・・・勢至平・・・くろがね小屋(泊/計約3時間)
【2日目】くろがね小屋・・・安達太良山・・・奥岳登山口(計約4時間30分)

⇒安達太良山周辺のコースタイム付き登山地図
*夏山のコースタイム

 

山のいで湯を楽しむ、1泊2日の雪山登山


2018年1月、冬型気圧配置が続いた年末年始の冬山。移動性高気圧の短い晴れ間を狙って、晴天が期待できそうな安達太良山へ行ってきました。

1月5日の朝は期待通り晴れ。くろがね小屋までは先行者やスキーヤーのトレースがあり、最初は馬車道をつぼ足で進みます。中間部からはせっかく背負ってきたのでただの重荷にするよりは、とスノーシューを使用しました。安達太良山山頂が見えるはずのビューポイントでは、山頂部にガスがまとわりついていました。勢至平からは雪も深くなり、特にくろがね小屋手前の吹きだまりにはスノーシューが有効でした。

勢至平を過ぎると前方が開け、山頂方面の視界が広がる。山頂はガスが覆っている(写真=奥谷 晶)

 

くろがね小屋で休憩後は、登頂は翌日にするつもりでしたが、明日は天候が下り坂で、今は風も弱く、絶好のコンディションだという小屋番さんのすすめで、頂上をめざします。しかし、次第にガスが山頂を覆い始めました。牛ノ背まで登り、晴れ間を待ちましたが、無理せず、時間切れで小屋に戻ります。

くろがね小屋は2階が吹き抜けになっていて山小屋らしい雰囲気にあふれ、温泉で今日の疲れをいやす至福の時をゆったり過ごしました。

翌朝はやはり残念ながら、山頂はガスに包まれ、強風が時折混じる状況です。午後から天候が悪化し、さらに風が強くなるとの予報なので、峰ノ辻から直登で山頂を目指します。昨日のトレースは地吹雪で早くも半ば埋もれていました。クラストしていたので、アイゼンが有効です。ただし、トレースを外すとときどき膝下までの踏み抜きがあります。

安達太良山山頂上広場。ガスにかすんでいた乳首が一瞬の晴れ間から姿をあらわした(写真=奥谷 晶)

 

山頂標識にはびっしりとえびの尻尾が連なり、烈風のすごさを物語る(写真=奥谷 晶)

 

山頂広場に到着すると数人の登山者と出会いました。一瞬、青空が見えますが、すぐにガスに包まれ、山頂の「乳首」といわれる岩場もおぼろげです。エビの尻尾がびっしり着いた山頂標識だけ写真にとって、すぐに下山を開始。仙女平分岐への雪原をくだります。このあたりは広々した雪原で、目標物が何もなく、視界が悪いと迷いやすいところです。トレースも複数あり、当てにすることはできません。GPSで方向を確認しつつ進みます。ガスは次第に濃くなり、登ってきた数人のパーティーのトレースも地吹雪でかき消されそうです。

山頂から仙女平をめざしてくだる。薬師山から登ってきたパーティとすれ違うもすぐにガスの中へ消えていく(写真=奥谷 晶)

 

頂上から仙女平はだだっ広くて目標物に乏しく、迷いやすい(写真=奥谷 晶)

 

仙女平分岐に到達して一安心。五葉松平からスキー場のゲレンデをめざします。昼過ぎには小雪がちらつきだしたかと思うと、風も強くなり、スキー場リフト沿いに下りるころには、しだいに吹雪の様相を呈していました。

 

※積雪期の山は、雪の状態や天候によって、難易度、コースタイムが大きく変わります。計画時には必ず出発前後の天候やエスケープルート、山小屋などの避難できる場所を確認しておきましょう。

 

 

プロフィール

奥谷晶

30代から40代にかけてアルパイン中心の社会人山岳会で本格的登山を学び、山と溪谷社などの山岳ガイドブックの装丁や地図製作にたずさわるとともに、しばらく遠ざかっていた本格的登山を60代から再開。青春時代に残した課題、剱岳源次郎尾根登攀・長治郎谷下降など広い分野で主にソロでの登山活動を続けている。2013年から2019年、週刊ヤマケイの表紙写真などを担当。2019年日本山岳写真協会公募展入選。現在、日本山岳写真協会会員。

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