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ギミック満載! アウトドアリサーチの防寒帽「フロストラインハット」を、真冬の滝子山で徹底チェック!

高橋庄太郎の山MONO語り
道具・装備 2020年01月31日

 

今月のPICK UP アウトドアリサーチ/フロストラインハット

価格:7,300円(税別)
サイズ:M(57cm)、L(59cm)
カラー:3色(ブラック、レトロレッド、エバーグリーン)
平均重量:97g(Lサイズ)

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夏山に比べ、冬山用の帽子選びは難しい。防寒のために保温力が高いものを選ぶと、好天時や荷物が重くて体力を使うときには暑すぎることも多く、生地が分厚いためになかなか汗が乾燥しない。そのために長く休憩していると、ときには汗冷えを起こすこともある。だからといって薄手のものは強風時には頭部の熱を奪われ、体調を崩す原因になりかねない。サングラスやバラクラバなどとの形状的な相性も考える必要もあり、なかなかピンとくるものは少ない気がする。

もっとも一般的な冬山登山用の帽子は、ニットキャップだ。なかにはツバ付きのものもあるが、ウールやアクリルの毛糸で編まれていることは共通である。僕自身も使用しているが、あまり機能的には感じられず、満足感は高くはない。なぜなら雪が付着しやすく、体温で溶けた水分で湿り、あまり快適ではないからだ。

その点、今回取り上げるアウトドアリサーチの「フロストラインハット」は、表面の素材がパーテックスクァンタムプロという、なめらかな質感の化学繊維。雪の付着の心配は少なく、しかもツバやイヤーフラップ(耳当て)の形状を変えてかぶることもできる。おもしろいアイデアが各所にプラスされた個性的なモデルだ。

 

小技の効いた冬用帽子。各部に使われた素材と使い勝手をチェック!

暖冬といわれる今年は雪が少なく、テストのために足を運んだ大菩薩連嶺の南端にある滝子山の登山口は秋のような雰囲気で、ほとんど雪はなかった。

僕は登り始める前に、フロストラインハットの外観を撮影しておいた。この連載の写真はいつも僕が三脚などを使って自撮りしているが、じつは頭部の撮影は非常に時間がかかる。そこで今回はわざわざ山中の駐車場までマネキンの頭を持っていき、この帽子をかぶせてみた。ちょっと不気味だが、まずは下の写真を見ていただきたい。

左はツバとイヤーフラップを上げて着用するときの様子。右はツバとイヤーフラップを下げて着用するときの様子。それだけではなく、ツバを上げつつイヤーフラップを下ろしたり、つばを下げてイヤーフラップを頭部で留めたりと、さまざまな使い方が可能だ。これだけでも気温や寒風に対する応用力の高さがイメージできるだろう。

帽子の内側は肌触りのよいポリエステル製のフリースである。

気温が高いときは暑すぎるかもしれないと思うほどふんわりとしていて、防寒力は高そうだ。

それに対し、表側はパーテックスクァンタムプロ。防風性に優れ、内側のフリースでキープしている暖気を逃がさない。

また、この生地には防水性はないものの、撥水性に富んでいる。乾いた雪であれば付着せず、すぐに振り落とせるのがいい。帽子の上に雪が積もって体温で溶けてきたり、みぞれのような湿った雪の場合でも、浸水はわずかで済むのである。

出発は、道証地蔵前の登山口。僕はここから沢沿いに歩き始め、途中から尾根に入るつもりだった。

平日とあって登山者は僕ひとりだけ。結局、この日は最後まで誰とも会わなかった。

登山口付近はあまり寒くはなく、風もない。そのために、僕はイヤーフラップを使わず、耳を露出したまま歩いていた。

冬らしい澄んだ空気が耳や首の肌を撫で、歩き始めて温まってきた体に気持ちよい。

イヤーフラップを使わないときは、面ファスナーで頭上に留める。反対にイヤーフラップを使用する場合は、首下で同様に面ファスナーで固定する仕組みだ。

このとき心配になったのが、面ファスナーの固定力。張り付く力がいくぶん弱い気がしてならない。今回は新品ということもあって使用中に外れることはなかったが、長く使用していると劣化して剥がれやすくなりそうな質感なのだ。断言はできないが、少々気になる。

一方、頭部へのフィット感は頭の後ろ側に付けられたドローコードで調整する。片手で引くだけで強く締めることができ、強風でも飛ばされることはないだろう。こちらはまったく問題なさそうである。

ここでツバについても確認しておきたい。フロストラインハットのツバは最低限の大きさだが、下げれば額に冷気が当たることを防ぎ、防寒性をアップする。また、目の位置ギリギリに下げれば、この大きさでも効果的に陽射しを遮ってくれる。

それでもいくらか視界は損なわれるので、不必要なときは跳ねあげて使用したほうがよいだろう。

ツバを上げたときは、マグネットで固定できるようになっている。下の写真で薄っすらと丸い2つの部分が、そのマグネットだ。

じつはこれ、本当は不要ではないかと思う機能なのであった。というのもツバは上にあげただけで頭部に沿って曲がり、力を入れないと下げられない状態になるからだ。もちろんマグネットがあればツバの固定力は増すので、無駄とは言い切れないのだが……。無くても不自由はしなさそうだ。

僕は途中から浜立山に直接向かう尾根に入った。そこは一般登山道ではないが、実際には多くの人が使用しており、踏み跡がある。なにより見晴らしがよく、気持ちがいい。冬場は周囲の木々の葉が落ちているために道迷いを起こしにくいが、やはり一般登山道ではなく、誰にでもお勧めできるルートではないことはお伝えしておこう

2時間少々で浜立山の山頂に到着。小さなプレートが下げられてるだけだが、標高1500m近い山頂である。僕はここで休憩をとった。

 

さらに防寒性を高めるパーツが! 寒さが増す山頂に留まり、防寒性をチェック!

山頂までは急登が続き、多少は風が吹いていたものの、僕はかなりの汗をかいていた。テストということもあって、暑くても帽子は脱がないでいたが、そのために内側のフリースはだいぶ濡れてしまった。

このフリースは吸汗性にも優れているようで、汗を吸ってしっとりと濡れている。速乾性もそれなりに高く、昼食を兼ねた30分ほどの休憩中に乾燥し切るほどではないとはいえ、不快感が薄れるくらいは乾いていった。

このルートは途中から寂ショウ尾根の一般登山道と合流し、滝子山山頂へ向かう。

途中からは雪を踏みしめて歩き、少しすると山頂に到着する。開けた山頂には日光が当たりやすく、雪は溶けて地面の大半が露出しているような状態だ。しかし、風は思ったよりも強く、次第に体温が奪われていくのがわかる。

滝子山は富士山の展望台としても有名だ。だが、このときは山頂付近と南側は真っ白な雲で覆われてしまい、富士山の姿を見ることはできない。そこで僕は下山にかかる時間から山頂に滞在できる時間を逆算し、雲が切れるまで待つことにした。ここまであえて触れないできたが、フロストラインハットには防寒性を飛躍的に高めるユニークなパーツが隠されており、それを使ってみたかったことも待機を決めた大きな理由だ。

それでは登山口で撮影しておいた「フェイスマスク」を見ていただきたい。これが隠されているのは、イヤーフラップに付けられているポケットの内側。ファスナーを下げると伸縮性が高い幅広のマスクが現れ、引き出して口元を覆うことができるのである。

イヤーフラップとのコンビネーションもよく、首下にはほとんど隙間が空かず、寒気の侵入をシャットアウトしてくれる。

ファスナーは引き下ろしやすく、帽子をかぶったままでも簡単にフェイスマスクを取り付けられる。フェイスマスクをした状態でツバも下ろせば、外部に肌が露出しているのは目の周りだけになる。

こうなるとバラクラバを別に持っていく必要はない。防寒体制としてはかなりのレベルだ。

マスクの裏側はわずかに起毛し、保温力は高い。だが、息は十分に抜けるが、長時間使っていると湿りやすいのは否めない。これは一般的なバラクラバにもいえることで、帽子に付属する簡易的フェイスマスクとしては及第点なのではないかと思う。

フェイスマスクの固定も面ファスナーだ。イヤーフラップと同様に固定力が気になったが、フェイスマスクのほうの面ファスナーはイヤーフラップよりも面積が広く、しっかりと固定できる。安心して使えそうだ。

この日は陽射しが弱く、サングラスを必要とするほどではなかった。だが、待機時間を無駄にしないようにと、ここで帽子とサングラスとの相性を見てみる。

ツバとイヤーフラップを上げていれば顔はすべて露出し、サングラスは普通にかけられる。だがつばを下げるとサングラスの上側が押され、圧迫感を覚えてしまう。サングラスがあれば目に入る光は遮られるのだから、こういう場合はツバは上げておけばいい(写真1枚目)。一方、フェイスマスクはサングラスに干渉せず、いっしょに使いやすかった(写真2枚目)。

結局、富士山は現れず、遠くまで見渡せるようになったのは東側や北側の稜線のみ。今回は富士山を諦めるしかない。

僕は薄暗くなる前に駐車場へ戻ろうと、コンドウ丸を経由する西側の登山道へ向かっていった。

北斜面も通過する下山道は、登り道の南斜面とは異なり、雪や凍結箇所が多い。チェーンスパイクが必要だった。周囲は真っ白なガスで覆われ、山頂以上に気温も低い。

僕はテストのために帽子の形状を何度も変え、フェイスマスクを外したり、再び取り付けたりしながら、ゆっくりと下っていった……。

 

まとめ:「フロストラインハット」は、冬山用の帽子として、満足度の高いアイテムだ

さて、フロストラインハットで気になる点は、先に述べたようにイヤーキャップに付けられた面ファスナーの固定力が足りないことだ。僕はアウトドアリサーチの他の帽子も数タイプ持っており、そこに使われている面ファスナーも固定力が弱く、使用中に緩んでしまうという問題を起こしていた。だからこそ、フロストラインハットの面ファスナーも心配になってしまう。もっとも、面ファスナーが弱ったとしても、代わりに自分でスナップボタンなどを取り付けて固定するのは簡単だ。だが、やはり面倒ではないか。

そんな心配事項はあるにせよ、これは非常に満足度が高い冬山用の帽子だと思う。パーテックスクァンタムを使った表面生地には雪が付着しにくく、雪が降るなかを歩いても帽子に水が浸透しにくいのは、大きなメリットだ。保温性も十分で、気温によってはむしろ行動中に暑すぎるくらいである。そして、フェイスマスクという機能的なディテールがうれしい。いろいろと形状を変えて使う楽しさも感じられ、冬山登山の相棒として幅広く活躍してくれそうだ。

 

今回登った山
滝子山
山梨県
標高1,615m

関連する登山記録はこちら
関連する山道具はこちら

 

冬山用品
教えてくれた人

高橋 庄太郎

宮城県仙台市出身。山岳・アウトドアライター。 山、海、川を旅し、山岳・アウトドア専門誌で執筆。特に好きなのは、ソロで行う長距離&長期間の山の縦走、海や川のカヤック・ツーリングなど。こだわりは「できるだけ日帰りではなく、一泊だけでもテントで眠る」。『山登りABC テント泊登山の基本』(山と溪谷社)、『トレッキング実践学 改訂版』(枻出版)ほか著書多数。

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