青空の下、遠見尾根で鹿島槍ヶ岳・五竜岳の絶景を楽しむ雪山登山

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五竜岳への登路となる遠見尾根。積雪期には、天候に恵まれれば雪化粧した鹿島槍ヶ岳と五竜岳の雄姿を眼前に捉えることができ、絶好の雪山ハイキングを楽しめる。

幾多の岩稜と雪稜が突き上げる鹿島槍ヶ岳北壁とカクネ里雪渓(写真=奥谷 晶)

 

2017年の3月12日、晴れ、ほぼ無風という絶好の登山日和に恵まれました。冬型気圧配置の続く1月、2月の気候から、3月になると移動性高気圧による晴れの日が周期的に訪れる様になります。なかなか天候と山行のスケジュールがあわず、一ヶ月半もご無沙汰していましたが、待望の登山日和の到来の予報を聞いて、たまらず五竜岳遠見尾根にやってきました。記録的な暖冬の今年は、冬型が長続きせず、1月後半からチャンスがありそうです。

豪雪地帯でいったん荒れると猛吹雪とドカ雪でその道を閉ざしてしまうことが普通なだけに、貴重なチャンスを無駄にする手はありません。

 
五竜岳と鹿島槍ヶ岳の絶景に思わず満面の微笑み。佐久から来られた母と娘のふたりパーティ。しっかりスリングで安全確保されていたのが印象的(写真=奥谷 晶)

 

モデルコース:第一アルペンリフト~小遠見山~中遠見山~小遠見山~アルプス平駅

行程:【日帰り】計約5時間

⇒遠見尾根周辺のコースタイム付き登山地図
※夏山のコースタイム

 

快晴の下で雪の稜線歩き

白馬五竜スキー場のテレキャビンとリフトを乗り継いで、地蔵の頭直下にあるゲレンデトップの登山口のゲート付近まで、一気に高度を稼げるのは、やはり便利です。降雪直後なので、登りはスノーシューをつけて出発します。八方尾根と同様、こちらも登山者は少数派のようですが、前日からのバックカントリースキーヤーやボーダーによってトレースがしっかりできていましたので、ツボ足でも十分対応でき、踏み抜くことは少なかったと思われます。

雪庇の発達した遠見尾根を進むと、いよいよ鹿島槍の北壁が姿を見せる(写真=奥谷 晶)

 

2020年1月末の小遠見山。極端に雪がすくなく、まだブッシュが出ていて稜線も狭い(写真=奥谷 晶)

 

小遠見山までの樹林帯もすぐに雪稜となり、灌木も雪の下になって広々した尾根が広がっています。小遠見山に近づくにつれ、澄んだ青空に武田菱が際立つ五竜岳とそれに続く鹿島槍ヶ岳への稜線がぐいぐいと迫ってきます。中遠見からは荒々しい岩と雪の襞をまとった鹿島槍ヶ岳とカクネ里雪渓を正面から捉えることができ、大感激です。久しぶりの山行にペースも上がらず中遠見山までしか届きませんでしたが、貴重な天空の雪の稜線歩きの機会をとらえることができたのは、十分満足です。

黒々した武田菱もくっきり。五竜岳の雄姿(写真=奥谷 晶)

 

大遠見山に幕営して五竜岳頂上を目指したパーティも二、三いたようですが、大遠見からはラッセルでかなり苦しんだ様子で、登頂できたかどうかは不明です。小遠見山や中遠見山では多くの登山者が、青空を背景に五竜や鹿島槍の絶景を楽しむ様子が見られました。下りはアイゼンに切り替え、素晴らしい展望を何度もふりかえりつつ、なごり惜しみながら下りました。

鹿島槍ヶ岳から五竜岳の稜線を背景に遠見尾根のトレースが伸びる(写真=奥谷 晶)

 

この素晴らしい稜線も天候不良時には強風とラッセルに苦しめられ、雪庇の踏み抜きや雪崩に厳重な警戒が必要なルートに一変しますので注意が必要です。

 

※積雪期の山は、雪の状態や天候によって、難易度、コースタイムが大きく変わります。計画時には必ず出発前後の天候やエスケープルート、山小屋などの避難できる場所を確認しておきましょう。

 

プロフィール

奥谷晶

30代から40代にかけてアルパイン中心の社会人山岳会で本格的登山を学び、山と溪谷社などの山岳ガイドブックの装丁や地図製作にたずさわるとともに、しばらく遠ざかっていた本格的登山を60代から再開。青春時代に残した課題、剱岳源次郎尾根登攀・長治郎谷下降など広い分野で主にソロでの登山活動を続けている。2013年から2019年、週刊ヤマケイの表紙写真などを担当。2019年日本山岳写真協会公募展入選。現在、日本山岳写真協会会員。

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