行程・コース
天候
1日目:雨のち晴れ、2日目:快晴のちガス、3日目:曇りのち快晴、4日目:曇りのち晴れ
登山口へのアクセス
バス
その他:
行き:新宿23:15発 中央高速バス扇沢行き 扇沢05:32着
帰り:高瀬ダムよりタクシーで信濃大町駅まで 7700円(相乗りで2500円)
この登山記録の行程
【1日目】
扇沢(06:45)・・・大沢小屋(07:49)・・・針ノ木峠(10:17)[休憩 68分]・・・針ノ木岳(12:13)[休憩 27分]・・・針ノ木峠(13:09)
【2日目】
針ノ木峠(05:58)・・・蓮華岳(07:00)[休憩 12分]・・・北葛乗越(08:21)・・・北葛岳(09:10)[休憩 10分]・・・七倉岳(10:43)・・・船窪小屋(10:55)
【3日目】
船窪小屋(05:12)・・・船窪乗越(05:52)・・・2459m峰(07:07)[休憩 3分]・・・不動岳(09:18)[休憩 23分]・・・南沢岳(11:05)[休憩 5分]・・・山頂分岐(12:02)[休憩 5分]・・・烏帽子岳(12:25)[休憩 5分]・・・山頂分岐(12:45)[休憩 2分]・・・烏帽子小屋(13:12)
【4日目】
烏帽子小屋(05:55)・・・三角点(06:46)・・・ブナ立尾根登山口(08:22)・・・高瀬ダム(08:45)
高低図
標準タイム比較グラフ
登山記録
行動記録・感想・メモ
北ア中部の針ノ木岳から烏帽子岳まで縦走してきた。蓮華岳のコマクサや烏帽子岳の岩峰、ランプの火も温かい船窪小屋の佇まい、不動沢の激しい崩壊地と楽園のような四十八池の対比・・・地味だが味わい深いコースである。
8月の天候不順で計画の延期が続き、気がつけば夏山シーズンも残りわずか。発想を変えて、一週間かけて針ノ木岳から烏帽子岳の空白区間を歩き、そのまま裏銀座コースを槍ヶ岳までつなげる計画を立てた。幸い4日間の好天に恵まれ、順調に烏帽子岳までの前半を歩き通したが、4日目以降の強風、天候が複数日にわたって崩れるとの予報や疲労を考え、計画半分で中断とした。
<「最後の空白」を埋めにベテランが集まるコース>
後立山縦走コースや裏銀座に挟まれたこのコースは、こだわりの道である。蓮華岳にコマクサを訪ねる人や烏帽子岳のちょっと槍ヶ岳を思わせるような尖峰を目指して登る人はいるだろうが、そこを過ぎてしまえば人影もまばらだ。不動沢の崩壊地の縁をめぐるコースは緊張を強いるし、アップダウンも大きい。森林限界を超えた爽快な縦走が魅力である北アルプスにあって、ピークの標高もせいぜい2500〜600mと周囲の山々から一段沈み込んだ区間で、稜線が樹林に覆われている部分も多い。だから北アルプスをかなり歩いた人でも「まだ行ったことがない」という人が多いし、その空白を埋めにベテランが集まってくるところでもある。そんな印象だ。
でもこのコースの魅力は、そんな埋め草に止まらない。人が少ないが故に静かな道行き。素朴だが温かいもてなしが嬉しいランプの宿、船窪小屋。大崩壊地の縁に咲く可憐な花々。北アルプス中央部に位置するだけに、ひとたび蓮華岳や不動岳、南沢岳の高みに立てば、北は立山連峰、後立山連峰、南は槍穂高連峰まで大パノラマが広がる(パノラマ写真をお見せできなくて残念、ぜひ仕様変更を!)。常に展望が広がる稜線歩きもいいが、樹林帯から這い上がった時に急に大展望が広がるドラマチックな場面転換も捨て難い。そして不思議なことに、いやだからこそか、人が少なかったこのコースで出会った人々の温かい印象は、むしろ他の山行の時よりも深いのだ。
<蓮華の大下り、船窪岳ー南沢岳間は滑落に注意>
このコースは、いくつか注意を要する箇所がある。まず、二日目の蓮華岳からザレ場を下る「蓮華の大下り」。前半部分はザレ、後半はこれが急峻な岩場となり、長い鎖も出てくる。厄介なのは、岩場がザレで非常に不安定なことだ。慎重にゆっくり下りたい。
もう一つは、三日目の船窪岳から不動岳、南沢岳間の崩壊地の縁を進む箇所。花崗岩が風化したザレで滑りやすい。場所によっては両側が崩壊して大きく切れ落ちている。ロープなども張ってあるが、足元をしっかりと踏みしめながら、ロープはバランスを取るための補助くらいに考えて進みたい。ロープも崩壊地の縁に根を張っている樹木に固定してあったりするのだが、その木自体が土壌流出で根元が半分ほど空中にむき出しになっていたりする。こんなところに生える植物の根っこというのはすごいものだと思う。雨天時の通過は、自分なら避けたいところだ。核心部は、船窪岳第二ピーク(地図上の表記は2459mピーク)から不動岳に向かう下りだろう。三日目の船窪小屋から烏帽子小屋までは、距離も長く、コースタイムは8時間、前述の崩壊地を通過する上にアップダウンも大きいので体力を充実させ、体調を整えて臨みたい。
これで高校生当時の記録を合わせると白馬岳から前穂高岳まで北アルプスの主稜線を一本に繋げることができた。本当は、当初の計画通り槍ヶ岳まで歩き通せればよかったのだけれども、まあそれはまたの機会に。
ルート定数95.2。長野県山のグレーディングでは蓮華の大下りなどの区間がCとなっているが、本コースの大半はグレードが付与されていない。主観的には船窪岳から不動岳の崩壊地などはD難度でもいいように思われる。
フォトギャラリー:73枚
扇沢にかかる禍々しい雲 夜行バスで翌朝扇沢に到着した時には強い雨。だが、それもしばらく待てば上がりそうだったので、出発を1時間ほど遅らせて、雨が止んでから歩き始める
綺麗に晴れ上がる
大沢小屋にあった注意書き
すっかり小さくなっている針ノ木雪渓
崩壊している針ノ木雪渓。7月からすっかり様変わりだ
チングルマとスバリ岳
針ノ木岳頂上付近より北面 高瀬ダムの手前は今回歩く七倉岳、船窪岳、船窪岳第二ピーク、不動岳の連なりで周囲よりも標高がかなり低いことがわかる。かなたに最終目的地の槍ヶ岳も
針ノ木岳山頂より黒部湖を挟んで立山連峰、剱岳
7月に歩いたスバリ岳から鳴沢岳の稜線
針ノ木小屋から望む残照の北葛岳
夕映えの槍穂高連峰
この日の夕焼けは美しかった
二日目も快晴。蓮華岳への登り。左右の砂礫地はコマクサの大群落が広がる
朝日を浴びるチングルマ
盛りはとうに過ぎているが、それでもかなりのコマクサが
「蓮華の大下り」の前半はザレた斜面
蓮華岳をすぎると人もぐっと少なくなる
マツムシソウ
蓮華の大下りを途中から振り返る
蓮華の大下りの後半はザレた岩場で、長い鎖もかかっている。足場が不安定な急斜面なので注意
北葛岳への登りから蓮華岳を振り返る
北葛岳山頂より手前が七倉岳と船窪小屋への登山道。中景に崩壊の激しい不動岳、かなたに赤牛岳、薬師岳
北葛乗越への下りと七倉岳への登り返し
激しいアップダウンで、高山植物でも愛でなければやっていられない。ミネウスユキソウ
七倉岳山頂から望む、針ノ木岳から蓮華岳の稜線
二日目の宿、船窪小屋。かなたに槍ヶ岳や前穂高岳が見えている
小屋の前からは立山連峰の絶景が広がる
心づくしの夕食を楽しむ
囲炉裏にランプの小屋というのも珍しくなってしまった
三日目の朝焼け
三日目の今日は、不動岳などの崩壊地を通過し、烏帽子岳まで歩く長丁場
深く切れ込んだ不動沢の崩壊地
船窪岳と第二ピークの鞍部でわずか数メートルだが、左右とも崩壊したナイフエッジを渡る。「進む」と決めたら、立ち止まるな、振り向くな!
崩壊地の脇には愛らしい花々が咲いているというコントラスト
ミヤマキンポウゲ?
タカネナデシコ?
ざれた崩壊地のトラバースとナナカマドの実
崩壊地の縁は印象深いが、コースの半分以上は崩壊している不動沢とは反対側の斜面の安定した樹林帯をトラバースしていく。
アップダウンがきつい。不動岳がまだあんなに高い・・・ため息
船窪岳第二ピーク(第二なのにこちらの方が標高が高い)から不動岳との鞍部への下降。この辺りが核心部だろうか。ザレた急斜面をロープ、ワイヤー、丸太の桟橋と通過していく
不動岳へ登りつめると本峰より高い2601mの岩頭。平坦な不動岳山頂より、展望もこちらの方が良い。
不動岳にて、つがいの雷鳥
不動岳から下りにかかると、槍ヶ岳からぐんぐんと流れ落ちる滝雲が見えた。程なくして槍ヶ岳はガスに覆われてしまった。
南沢岳を目指してたおやかな歩きかと思いきや・・・
中景に特徴的な隆起を示す烏帽子岳。烏帽子岳はミニ槍ヶ岳のような尖峰のイメージが強いが、こちらから見ると丸いドーム状で印象がかなり違う。あそこまでまだまだ遠い〜
ハイマツの海の底を潜るように、抉れてザレた急斜面を下り、まだ続く崩壊地を南沢岳目指し登る
ハイマツの斜面から飛び出すと、一気に展望が広がる南沢岳。これはドラマチック!
その先には一転して楽園的雰囲気をたたえた四十八池と烏帽子岳。遠景は三ッ岳
あ〜なんとたおやかな道。烏帽子岳もいい感じ
チングルマと烏帽子岳。
紹介しきれないが花もたくさん咲いていた。鳥のさえずりさえのどかだ
先ほどまで崩壊地の縁を緊張して歩いていたことも夢の彼方・・・笑
烏帽子岳。これで学生時代の記録も合わせると白馬岳から前穂高岳まで主稜線が一本に繋がった!
烏帽子岳山頂から三ツ岳
烏帽子岳山頂から四十八池を見下ろす。
小屋の前にはリンドウの群落
三日目の宿は烏帽子小屋。蚊取り線香も炊かれていたけれど、周囲には蚊が多いので留意を
明日歩く(予定だった)三ツ岳を経て野口五郎岳へ向かう稜線
烏帽子小屋の食事も野菜たっぷりで美味しかった
小屋前に咲いていたコマクサの白い花。蓮華岳の下り斜面でも白い株が見られたそうだ
三日目の夕焼けも美しかった
四日目の朝。夜来の強風と天候が下り坂との予報、ここまでの疲労などを考慮して裏銀座を槍ヶ岳まで縦走する後半の計画を断念。ブナ立尾根を下ることにする。
この初志を貫徹しない中途半端さは、いつも65点くらいを狙っている私の人生そのもののような・・・(苦笑)
信州側の雲海
ちょっと幻想的
ブナ立尾根の名前の通り、ぶなの木々の間を高瀬ダムに向け降る
美しいブナを見ていたら、ふと秋には丹沢に行きたいなあ、と思った。
尾根を下ったら土砂の浚渫工事現場に立つ赤旗を目印に進む
つり橋から不動沢。そりゃああんなに崩壊していたら高瀬湖に莫大な土砂が流れ込むわなあ。
高瀬湖は、いざという時のための揚水発電所としての役割を担っているそうだが、これでは果たして・・・
不動沢トンネルを進み、ダムサイトへ。なんだかね、高瀬湖までの立派な道路とか見ても思うのだけど、電源開発というのは人里離れたところへ、膨大な資源とエネルギーが投入されているんですね。まあ、そのおかげで私みたいな登山者が便利に北アルプスにアプローチできるわけだけど、なんだか考えずにはいられません。




