初夏の風が吹く残雪の渓谷を歩く 北海道芦別岳・本谷ルート

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※緊急事態宣言による外出自粛要請が出ている状況ですが、来年以降の登山の参考のため、また、外出ができないなかでも山行の楽しみを記事を読んで感じていただければと思います。

北海道、夕張山地の最高峰芦別岳。5月には残雪の渓谷を歩く本谷コースも楽しめます。雪崩の危険もあるため、経験と念入りな計画が必要なコースです。

限られた山でしか見られないツクモグサ(写真=谷水 亨)

芦別岳は、北海道中央部・夕張山地の最高峰にして、日本二百名山に選定されています。富良野芦別道立自然公園内にあり、登山道は富良野市山部にある「太陽の里」キャンプ場から、難易度の異なる4時間30分で登れる新道コースと6時間40分で登る旧道コースの二本が整備されています。

また、5月初旬から下旬にかけて、渓谷に残雪がある季節限定のコース「芦別岳本谷」は初夏の爽やかな風と深い渓谷の風景を堪能しながら残雪の中を登る最短のルートもあります。

頂上からは、南方に連なる夕張山地の夕張岳や布部岳、北方には富良野西岳、富良野スキー場で有名な北の峰の頂稜線が一望でき、また富良野盆地を挟んで十勝連峰、大雪山、南方には日高山脈まで見渡せる絶景が楽しめます。

新道コース登山口は、「太陽の里」敷地の南端にあり、鹿柵を開場して出発します。眺望の良い反面山までは深い樹林帯の森の中を登ります。急勾配や原生林の中を何時間も登る登山スタイルは大雪山や十勝連峰とは異なり、日高山脈の要素が多いようです。しかし、反面山からは風通しも良くなり、眺望と高山植物、芦別岳山頂を望みながら登るので、さわやかな気持ちで登ることができるでしょう。ルートも明瞭で体力のある方なら初級者でも十分に楽しめるコースです。

旧道コースと本谷コースは「太陽の里キャンプ場」から延びる林道入口の鹿柵を開場して旧道登山口に車を走らせます。旧道をユーフレ川沿いに何度も高巻をしながら登ります。

山頂から左が本谷。右の稜線が新道コース(写真=谷水 亨

渡渉が終わるとまもなくユーフレ小屋手前の分岐で旧道と別れます。山小屋で一休みしてから旧道コースに戻る登山者も多いようです。旧道コースは、長いルートに加え、整備も不十分ですので、体力があるだけではなく登山リスクの対応能力が求められます。しかし、稜線に登ってからの登山道は明瞭で芦別岳を前方に眺めながらお花畑、岩稜帯のアップダウン、下界の風景など長時間にわたって楽しめるので、夕張山地そのものを十分に楽しむことができます。

芦別岳ユーフレ小屋(写真=谷水 亨)

モデルコース:旧道・本谷コース登山口~本谷コース~芦別岳~新道コース~新道登山口

コースタイム:
【日帰り】約6時間30分

⇒芦別岳周辺の地図

残雪の本谷コースを歩きツクモグサが咲く山頂へ

今回は、2017年5月7日に登った芦別岳本谷コースをご紹介いたします。芦別岳ユーフレ小屋までは旧道コースと同じです。そして、小屋からはアイゼン・ピッケルの装備で残雪を登っていきます。最初にででくるゴルジュが雪で埋まっていることがこのコースの最大のポイントで、ここを通過できなくなると、このコースのシーズン終わりとなりますので、5月初旬の2週間ぐらいの季節限定コースとして、とても希少な登山となるのです。

この年は1週間前の気温30度を超える暖気で、おそらくその日の日中に大規模な雪崩が起きたと想定され、約1kmに渡ってデブリが続いていました。

デブリの上を警戒心を持って登る(写真=谷水 亨)

本谷コースでの最大の注意点は、雪崩と滑落であり、谷の左右の岩壁からの雪崩が多く、そのリスクを避けるための念入りな計画とスケジュールを立てる必要があります。標高1250mからは旧勾配のためジグをきりながらコル(旧道合流)まで登り、最後は70m程旧道を登って山頂です。

最大斜度40度以上の急斜面が400mも続く(写真=谷水 亨)

開花時期と重なるこの時期の山頂にはツクモグサが咲いており、山頂からの眺望以外の楽しみの一つです。

下りは、新道を使って尻セードやグリセードを楽しみながら残雪を楽しみ、展望台からは草木帯の高山植物を楽しみながら新道登山口へと降りていきます。そこから旧道へは、デポ車や徒歩で出発地に戻ります。

 

※積雪期の山は、雪の状態や天候によって、難易度、コースタイムが大きく変わります。計画時には必ず出発前後の天候やエスケープルート、山小屋などの避難できる場所を確認しておきましょう。また、バックカントリースキーは、特に雪崩等の危険を伴います。初心者のみの入山は避けましょう。

 

プロフィール

谷水 亨

北海道富良野市生まれの富良野育ち。サラリーマン生活の傍ら、登山ガイド・海外添乗員・列車運転士等の資格を持つ異色の登山家。

子育てが終わった頃から休暇の大半を利用して春夏秋冬を問わず北海道の山々を年間50座ほど登って楽しんでいる。

最近は、近場の日高山脈を楽しむ他、大雪山国立公園パークボランティアに所属し公園内の自然保護活動にも活動の範囲を広げている。

Youtubeでも北海道の山々の魅力を動画で配信中。Youtubeチャンネル

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