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「シェルパ」とは 彼らと「道」とは『「シェルパ」と道の人類学』

登る前にも後にも読みたい「山の本」
たしなみ 2020年05月30日

評者=鹿野勝彦(文化人類学者)

「シェルパ」と道の人類学

著者:古川不可知
発行:亜紀書房
価格:3200円+税

シェルパはネパール北部高地のソル・クンブ地方に故地をもつチベット系民族の名称だが、ヒマラヤ登山の優れた高所ポーターとしても知られ、また20世紀後半以降、登山やトレッキングが観光産業として発展してきてからは、多民族国家ネパールのなかで、最も経済的に成功した民族の一つとして注目されるようにもなった。本書は、著者が2010年代前半にクンブ地方のポルツェ村を拠点として行なった長期のフィールドワークに基づく民族誌で、序章、終章と本論のⅢ部8章からなる。

Ⅰ部では、クンブ地方と民族としてのシェルパの概要と歴史を、先行研究をたどって記すとともに、自らの調査に基づいて、観光地としてグローバル化した21世紀という「現在」の状況が示される。続くⅡ部では、観光業に従事するシェルパにとって、仕事である荷運びや道案内という行為そのものや、それがなされる場としての道の意味が、観察や聞き取りを基に記される。そしてⅢ部においては、以上の記述から、人々にとって道やそれと向き合う自らの身体や行為とは何なのかが、あらためて問い直される。

本書は、人類学になじみのない読者には難解な部分もあるが、急速に変化しつつある現在のネパールやそこに住む人々、観光産業、ヒマラヤ登山やトレッキング等に関心をもつ者にとって、新しくかつ刺激的な情報や考察が多く含まれている。著者の今後の研究の進展にも期待したい。

山と溪谷2020年5月号より転載)

書籍・書評
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