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高度順応を図るために周囲をトレッキング。そして標高4095mのカンバチェンへ

アウトライヤー 萩原編集長のヒマラヤ未踏峰挑戦記
ガイド・記録 2020年04月10日

先発隊に合流して、いよいよ遠征の開始。最初は標高4000m付近で高度順応を図る。その間、お世話になったキャラバンでの生活の様子、現地での食事などをレポートする。

 

心配だった高所順応は問題なし!

Date 2013年09月24日(火)


いきなり3590mに飛んでしまったので高所順応が心配だったのですが、事前に富士山頂とミウラベースの低酸素室で睡眠体験をしたおかげか、すんなりと高度に慣れることができました。

SP-O2(血中酸素飽和濃度)も92と、まずまずの数字(90を超えていればほぼ安心。高山病になると70以下の数値になることもあり、危険な状況となる)。食欲も旺盛で、ロッジで頼んだダルバード(カレー薄味の豆のスープとご飯に、付け合せの肉類などがつくネパール独特の食事メニュー)もおいしくいただき、おかわりまでたっぷりといただいてしまいました。もうしばらくは苦しくて動けません・・・。

グンサでお世話になったロッジ。電気も通っていて、バラ・サーブ(総隊長)のために、シングルルームを用意していただきました


午後になって先発隊のメンバー全員が到着。前半、お腹をこわした者が数名いたようですが、全員、いたって元気のようです。高所に慣れるためにさっそくフルシロ、ホンダ、ナカニシの3人を連れて午後の散歩に出かけることにしました。

グンサの谷の周囲は切り立った岩壁になっています。集落のはずれで、数百メートルもの高さで落ちる立派な滝をみつけたので、滝壺まで歩くことにしました。

渓谷沿いの道を飛び石づたいに登り、ガレ場をよじ登って滝壺を見下ろす丘に到着。プロトレックの高度計は3700mを示しています。霧雨のような飛沫を浴びながら、大滝の下でマイナスイオンを深呼吸。ロッジに戻ってSP-O2値を図ってみたら95に上がっていました。

ロッジでダルバートを作る女主人。わんこそばのようにお代わりを強要されました


これが現地での主食、ダルバード。ネパール語でダールは豆のスープで、バードはごはんの意味。このダールをごはんにかけ、おかず(タルカリ)とつけもの(アチャール)とともに食す。このときのおかずはヤクの肉の炒めものでした。干し肉のようでアゴが痛くなるほど堅かったけど、おいしかった!

 

キャラバンで実感・食事の幸せ

Date 2013年09月24日(火)


キャラバン中の楽しみは、山の景観もさることながら、やっぱり食事の楽しみが大きなウエイトを占めるものです。その点、わが隊は恵まれていました。

キッチンのリーダーの名前はジャガティス。前回の遠征でもお世話になった方で、その後、竹内洋岳さんがダウラギリ登頂の際に「炎の料理人」として紹介されたので、ご存じの方も多いかもしれません。とにかく勉強熱心で、日本人登山者が何を望んでいるのかをよく知っているのです。

先発隊と合流した日の夕飯は、すき焼きにゴーヤ・チャンプルー。朝食では卵焼きやインゲンのゴマ和えなど、なかなか泣かせる料理の連続です。毎日、幸せの食卓を楽しませていただきました。

で、それに加えて、今回はOBの岩井名誉隊長から肉の差し入れをいただいてきました。岩井さんは3年前のアウトライアー遠征時に総隊長をつとめられた方で、OB会のなかでも食通として知られています。ジャガティスにフレンチトーストの作り方を教えたのも氏でした。

今回、いただいたステーキ肉は、知る人ぞ知る人形町の日山から仕入れたもので、味噌漬けにして計20枚を日本から持ち込みました。保冷剤つきのため、重さは8キロ。重かったけど、これがまた強烈においしいのです。底なしの胃袋を持つ現役部員3名は、すき焼きで十分に食べたはずのごはんをさらにお代わりしてステーキをペロリと平らげていました。こちらも負けじと肉を完食。こんなペースで食べ続けて、登る前に胃拡張になってしまうのでは…と、密かに恐れている萩原なのでした。

すき焼きを食べたあとにこのステーキ! 現役部員はまだしも、OBには胃薬必携の夕食メニューでした

 

標高4095mのカンバチェンへ

Date 2013年09月25日(水)


「バラサーブ、ティー プリーズ」

キャラバン中の朝はモーニングティーで始まります。6時に起床。レモンティーを飲んでボーっとしていると、続いて洗面器に入ったタトパニ(お湯)が運ばれてきて、洗顔タイム。それからおもむろに出発のためのパッキングを済ませて7時に朝食。8時に出発、といったパターンが以後、毎日続いています。

今日は標高4095mのカンバチェンまで約4~5時間の行程です。重い荷物はすべて運んでもらえるので、サブザックに雨具と水筒と行動食、カメラなどを入れて元気に出発。

ヒマラヤ・トレッキングはかつて「マハラジャ(王様)の散歩」と呼ばれていたように、こんなふうに至れりつくせりの行動パターンは標準的なんですよね。そしてこれから目指すカンバチェンは集落があるため、牛が行き来する道なので歩きやすく快適なのです。

カンバチェンの裏山から集落と山々を望む


川に沿って、しばらくはサルオガセが繁る森のなかを抜け、いくつかの橋を渡ると景色が一変、4000m近くになって、ようやく樹林限界を抜けました。荒涼とした河原歩きから、ガレ場の大高巻きをしているときに気がつくと、雲の切れ間からヒマラヤ襞をまとった巨大な峰が・・・。ジャヌーです。いよいよ岩と雪の世界に足を踏み入れたことをまざまざと実感させられました。

ふたつの川が合流する平地にカンバチェンの集落はありました。到着と同時に雨が降ってきてラッキー! と思ったのですが、新しい高度を経験したときは高所順応のためにもう少し高いところで体を慣れさせなければ・・・、ということで、傘をさして裏山へハイキングに出発。

小雨の降るなか、天気待ちをするメンバー。東の空は晴れているのに・・・


足下には可憐なエーデルワイス(の仲間)が咲いていた


標高4300mまで高度を上げて30分後に他の隊員たちは下山したのですが、写真を撮りたいため私だけ残ることにしてさらに待機。すると、上空の雲が完全にあがり、写真で何度もみたことのあるジャヌー北壁が西日を受けて輝き出したのです。待ち時間に、周囲に咲くエーデルワイスなども撮影することができて、ひとり、待った甲斐があったというものでした。

遅れて下山してみると、3人のメンバーが体調不良を訴えていました。高度と寒さの影響とは思いますが、明日には元気になってくれることを祈りつつ、ひとり、ロッジのダイニングルームでこれを書いています。

まさに「怪峰」の名がふさわしいジャヌー北壁。手前の尾根がじゃまなので、機会があれば、あの尾根の上から撮影したいものだ

⇒次号/ベースキャンプに向けて出発。迫るアウトライヤーの姿

教えてくれた人

萩原 浩司

モットーは「ウラヤマからヒマラヤまで」。あらゆる山登りに対して深い興味と愛情を注ぎ、南高尾山稜の陽だまりハイキングから北アルプスの縦走登山、残雪の南会津スキーツアーに奥秩父の沢登り、小川山のフリークライミングや八ヶ岳のアイスクライミング、中央アルプスの冬季登攀、そしてたまには海外登山と、オールラウンドに山を楽しんでいる。普段の仕事は山と溪谷社の編集者。

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