ツクモグサを眺めつつ赤岳から硫黄岳まで縦走し、下諏訪温泉三代目おくむら旅館でさくら鍋を味わう
ひとり気ままに山と温泉を楽しむ温泉登山。登山前後に泊まりたい至福の温泉宿を紹介します。第17回はツクモグサが咲く八ヶ岳を下山後、下諏訪温泉へ。
写真・文=月山もも
首都圏から交通の便も良く、季節とルートを変えて何度でもおとずれたい八ヶ岳。中でも、赤岳から橫岳を経由して硫黄岳に向かう縦走路は、八ヶ岳のゴールデンルートと呼んで差し支えないであろう、楽しみの多いルートです。
特に、橫岳の周辺にツクモグサが咲く、5月下旬から6月上旬頃に歩くのがお気に入りです。今回は赤岳天望荘に1泊して美濃戸からの周回ルートを歩いてきました。
岩場歩きの最中、心なごませてくれるツクモグサ
茅野駅から美濃戸口までバスを利用し、行者小屋まで3時間少々、ゆるやかな樹林帯を歩きます。
行者小屋から先は地蔵尾根を登っていきますが、ガレた急坂をひたすら続き、鎖もあちこちにあって体力を削られます。
稜線上の地蔵の頭にある道標とお地蔵様が見えたときはホッとしました。宿泊する赤岳天望荘まではここから5分ほどです。
赤岳天望荘ではバイキングの食事を楽しみ、翌朝は小屋の前で雲海と日の出を見てからまずは赤岳へ。
山頂で360度の展望を楽しんだ後は硫黄岳の方向に向かって歩き始めます。
岩場が続く、気の抜けない縦走路の途中に、ひよこのような黄色い産毛に包まれたかわいらしいツクモグサの姿があちこちに見られました。
硫黄岳の広々とした山頂では、さっき歩いてきたばかりの赤岳と橫岳を眺めつつのランチタイム。その後は赤岳鉱泉を経由して美濃戸口に戻ります。
こたつのあるお部屋は、実家のようにくつろげる
バスで茅野駅に戻った後は電車で2駅移動して下諏訪駅へ。本日のお宿「三代目おくむら旅館」にチェックイン。
下諏訪駅から徒歩7分の家庭的な小旅館で、これまでも何度か泊まったことのあるお気に入りの宿ですが、実は2020年に代替わりをし、リニューアルオープンされたとのこと。
どんな風にリニューアルされたのか気になっていましたが、実家のようにくつろげる部屋は以前と変わらずホッとしました。こたつの上に、熱いお茶がたっぷり入ったポットが置かれていたのもうれしかったです。お茶菓子と一緒にいただいて一休みした後は、もちろんお風呂へ!
昔ながらのタイル張りの浴室で熱い湯に浸かる
温泉浴室は、1階の奥に男女別の内湯があります。
脱衣所に足を踏み入れると……リニューアルオープンの際にリフォームされ、脱衣所が広く明るくなっていました。
洗面台も増えて身支度がしやすくなったので、女性にはうれしい変化ですね。
浴室は特に変わっておらず、昔ながらのタイルがとても美しい浴室なので、そのままで残していただけてよかったです。
この、石を敷き詰めたようなタイルが風情があっていいんですよね。
弱アルカリ性のピリッと熱い源泉が、湯口である岩の隙間から絶え間なく浴槽に注がれていました。
新鮮な源泉をたっぷりと楽しんで部屋に戻り、夕食の時間を待つことにします。
個室でいただくレタスたっぷりのさくら鍋
食事は、泊まっている部屋とは別の個室に用意していただきました。広い部屋でテレビも見れるし、鍋物のにおいが寝具につく心配もないのがうれしいですね。
お酒は、日本酒の「剣菱」を1合、冷酒でいただきます。
お刺身は美しいサシの入った霜降りの馬刺しでした。柔らかく、舌の上でとろけそうな脂のうまみが感じられます。
後から熱々で提供された、たっぷりの野菜あんがかかっているのは「鯉の甘辛揚げ」。
長野県では鯉料理をいただける宿は多いのですが「甘煮」や「あらい」などの決まった調理方法で提供されることがほとんどです。野菜たっぷりのあんかけで鯉をいただくのは初めてでしたが、鯉の特有のクセも感じられず、大変おいしかったです。
メイン料理はさくら鍋。1人分とはとても思えないほど馬肉も野菜もたっぷりで、特に、きのことレタスが甘めの出汁によく合いました。1人鍋でも固形燃料ではなくカセットコンロと鉄鍋を用意していただけるので、火力の調節も簡単で、最後までおいしくいただきました。
〆のご飯はキノコの炊き込みご飯!お腹いっぱいなのに、ついおかわりしてしまいます。デザートにりんごもいただいて、ごちそうさまでした!
翌朝の朝食も個室に用意していただき、テレビを見ながらのんびりといただきます。
おかずの種類も多く、大きな焼き鮭、甘い卵焼きと野沢菜漬けでご飯がすすみます。お味噌汁が生姜風味で体が温まりました。
代替わり前のくつろげる雰囲気はそのままに、食事は工夫を重ねているのがうかがえる宿でした。また八ヶ岳や霧ヶ峰の帰りに泊まりたいです。
*紹介した食事、サービスは2021年4月取材時の内容です。
しもすわ温泉三代目おくむら旅館
料金:1泊2食付き/1室1名利用12,100円~、2名11,500円~(平日料金)
住所:〒393-0073長野県諏訪郡下諏訪町3149-5
電話:0266-27-8106
HP:https://sandaime-okumura.com/
プロフィール
月山もも
山と温泉を愛する女一人旅ブロガー。山麓の温泉宿を一人で巡るうちに「歩いてしか行けない温泉宿」に憧れを抱き、2011年から登山を始める。ゆるハイクから雪山登山まで、テントも一人で担ぐ単独登山女子。 ブログ「山と温泉のきろく」https://www.yamaonsen.com/に、温泉と登山のすばらしさについて綴っている。山と温泉に魅せられる人を増やすことが、人生のよろこび。著書に『ひとり酒、ひとり温泉、ひとり山』(KADOKAWA)。
ひとり温泉登山
山と温泉を愛する月山ももさんによる月1連載。登山前後に入りたい極上の温泉宿をご紹介します。