ツクモグサ咲く八ヶ岳。険しい真教寺尾根から残雪の杣添尾根をたどる

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6月上旬に咲くツクモグサを求めて、八ヶ岳へ。クサリ場やハシゴの難所がある真教寺尾根を登り、赤岳・横岳をめぐる1泊2日のコースです。

稜線は花盛り。赤岳、阿弥陀岳の背後は南アルプスもくっきり

 

ツクモグサは、高山に咲く花のなかでもで最も早く開花する一つです。本州で見られるのは白馬岳山頂と八ヶ岳の横岳付近の稜線の限られた場所しかありません。横岳では、例年6月上旬に開花します。

ツクモグサを求めて長く険しい真教寺尾根を登り、残雪が残る杣添尾根を下降する1泊2日の山旅を紹介します。

 

モデルコース:美し森~真教寺尾根~赤岳~横岳~杣添尾根~横岳登山口

 

コースタイム:1日目約6時間50分、2日目約4時間40分

⇒赤岳周辺のコースタイム付き登山地図

【1日目】真教寺尾根の難所を越えて、赤岳山頂へ

梅雨の合間の晴れの日を狙い、見頃を迎えたツクモグサとの出会いをもとめて、八ヶ岳の稜線をめざします。まず、車で杣添尾根の登山口である海ノ口自然郷別荘地の横岳登山口に行き、自転車をデポ。真教寺尾根起点の美しの森駐車場からスタートします。

下界は晴れているのに、稜線はガスの中、風冷たし、というやや不安な気象条件のなかで出発。向かうは、赤岳山頂まで高低差1400m、長大な真教寺尾根をたどります。 

牛首山までは樹林帯のゆるやかな登りで日差しも強くたっぷり汗をかきましたが、稜線に近づくにつれガスが出始め、冷たい北西の風に一気に体温を奪われます。2600mまでの急登でもかなり足を使ってしまいました。 

真教寺尾根クサリ場の前半にあるもっとも斜度の強いところ。浮き石が多く、落石の危険大。下降パーティーが下り切るまで待機する必要がある

 

頂上までの200mは八ヶ岳最難関といわれるクサリ場が続きます。三点支持で確実に登りますが、傾斜が強い場所はクサリにセルフビレイをとって登りました。浮き石も多く、ホールドがぐらつく箇所もあります。クサリはところどころ番線で補修されているものもあり、100%安心できるものではないように思えます。縦走路のクサリ場とはレベルが違うと思った方がよいでしょう。

赤岳山頂をへて赤岳天望荘へ。夕刻にはガスも晴れてきて、明日への期待が膨らみます。

登ってきた真教寺尾根を振り返る

 

【2日目】可憐なツクモグサに癒される

翌日は快晴に恵まれ、陽光にあたって開花するツクモグサをねらって、ゆっくりスタート。地蔵の頭から横岳・奥の院までの稜線をピストンします。

朝陽を浴びる赤岳を背に横岳稜線を行く

 

稜線上に雪はないものの、気温は低く、日の当たらない北西面では凍っている箇所もあり、要注意です。

三叉峰付近の岩壁付近でようやく群生するツクモグサに出会うことが出来ました。まだつぼみ状態でしたが、こまかな産毛に包まれたかわいい姿に心を癒されました。保護のために張ってあるロープをこえないように、望遠でねらいを定めます。同じくツクモグサをもとめてツアー客が大勢押し寄せていました。

産毛がなんともかわいらしいツクモグサ。陽を浴びて開き始めた

 

下りは、三叉峰から延びる杣添尾根をたどります。杣添尾根は2600m付近から雪渓をトラバースするところが数ヶ所出てきますが、ステップがしっかりついており、アイゼンは使いませんでした。トレッキングポールはあった方が安心でしょう。

樹林帯の中をゆっくり下って横岳登山口へ。デポしておいた自転車で美しの森へ向かいます。ずっと下りで楽だと思っていましたが、国道から美しの森への登りが予想外にこたえ、へとへとになりました。(取材日=2014年6月14日)

プロフィール

奥谷晶

30代から40代にかけてアルパイン中心の社会人山岳会で本格的登山を学び、山と溪谷社などの山岳ガイドブックの装丁や地図製作にたずさわるとともに、しばらく遠ざかっていた本格的登山を60代から再開。青春時代に残した課題、剱岳源次郎尾根登攀・長治郎谷下降など広い分野で主にソロでの登山活動を続けている。2013年から2019年、週刊ヤマケイの表紙写真などを担当。2019年日本山岳写真協会公募展入選。現在、日本山岳写真協会会員。

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