子どもが好きな「動作」や「行動」を知れば、子どもとの登山が変わる!
はじめての親子登山に疑問はつきもの。子どもの野外体験や野外教育を手がけるアウトドアプロデューサーの長谷部雅一さんが、子どもと山に登る楽しみや成功のヒントを紹介します。
「登る」だけでは子どもはつまらない!
子どもからすれば、ただ山道を登るだけでは、はっきりいってつまらない時間が過ぎていくだけと感じてしまうことがあります。前半戦は、ワクワク感や大人との会話(大人が頑張って盛り上げる会話)などで楽しい時間だとしても、中盤からはもうそれだけでは耐えがたい時間になってしまうことも…。
「これはまずい!」と大人が気付き、「ほら、あれを見てごらん!」「そういえばこのあいだ○○○・・・」など、もう大人側から場を盛り上げようと何を発信しても、もう子どもが興味を持ってくれないこともあります。大切なのは、子どもが“自発的”に何かをはじめたくなる場を演出することです。
ではどうしたら大人側から何かを提案して、そこから子どもと楽しい時間を過ごすことができるのか?それを考えるためのキーワードは子どもが好きな「動作」や「行動」です。それらを知ることで、きっと子どもへの提案内容や楽しい山時間を過ごすためのきっかけになってくれるでしょう。
子どもが好きな「動作」や「行動」とは?
では、実際に子どもが好きな「動作」や「行動」にはどんなものがあるのかを紹介していきます。「動作」と「行動」は共に大きく5つずつありますので参考にしてみてください。
1:子どもが好きな動作
・走る
読んで字のごとく、まさに「走る」ことです。子どもはスピードを上げるのが大好きです。とくに下り坂を走るときは、「ジェットコースター!!」と叫びながら永遠に走って行く子どももいます。
・飛ぶ
「飛ぶ」は、上に飛ぶ、高い所から下に飛ぶ、遠くへ飛ぶなど、子どもは様々な「飛ぶ」が大好きです。小川を飛び越えたり、ちょっと高い所から飛び降りる動作は、遊びがエスカレートすること間違いなしです。
・投げる
「投げる」は、文字通り何かを投げることです。小石でもドングリでもマツボックリでも、とにかく投げるのは楽しい。特に的を決めて投げ当てたり、遠くに投げたりする動作は何度もやりたくなってしまいます。
・登る
「登る」は、「山を登る」の登るではなく、身体全体を使って上に登る動作です。ちょっとした木や岩場、そして鎖場など、ちょっと怖いけど上に登っていく動作は、子どもの挑戦心に火がついて興奮の時間が待っています。
・転がる
「転がる」は、身体をつかってゴロゴロ転がることです。地面に対して身体を横にして転がったり、前転の様に転がったりと、このダイナミックな動きが子どもは大好きです。ちょっとした坂と広場があれば思わずやりたくなってしまいます。
2:子どもが好きな行動
・競争する
誰が一番「早いか?」「遅いか?」「遠くまで○○か?」「高い所から○○か?」「○○を探せるか?」など、子どもは競争が大好きです。勝つか負けるかの瀬戸際感が子どもの興奮度を数段も上げてくれます。
・見つける
「○○な看板」「○○な形」「○○色」「一番○○な△△」など、何かを見つけるという行動も楽しいです。何かを見つけるのに集中すると、気付けば山の頂上に到着しているかもしれません。
・自慢する
「これいいでしょ〜」「これ可愛いでしょ〜」「これできる?」など、子どもは何かを自慢するのも大好きです。自慢は“自分ができることを見て!褒めて!知って!”のサインでもあります。しっかりとキャッチしてあげたい。
・教える
「これは○○なんだよ」「これはこうやってやるんだよ」など、子どもは誰かに自分が知っている、できることを教える(または説明する)ことには大きなエネルギーを使います。子どもに何かを教えてもらう。そんな時間を過ごしてみましょう。
・真似する
子どもは誰か、何かの真似をする行動も大好きです。大人と同じ石の上を真似て歩く、野鳥の鳴き声を真似る、見つけた昆虫の動き方を真似るなど、気になる対象の真似をするのは子どもにとって楽しい時間です。
「動作」と「行動」に子どもの「好き」も組み合わせてみる
子どもが好きな「動作」と「行動」を知ったところで、今度は活用方法です。
ポイントは一緒に山へ行く子どもの趣味嗜好や考え方、得意なこと、つまり「好き」をテーマにして、「動作」と「行動」に当てはめることです。また、「動作」と「行動」を好きなように組み合わせてみるのもいいと思います。いくつか例を紹介してみます。
※動作→○ 行動→△ 好き→□
- ○投げる×△競争する×□ドングリ=どちらが先に○○の木にドングリを当てられるか?
- ○飛ぶ×△真似する=大人が小さな小川を思いっきり飛び越えるのを子どもが真似をする(したくなる)
- △見つける×□動物好き=野生動物の足跡探し
- ○登る×□冒険=できるだけ難しそうなコースを探して先に進んでみる
紹介したのはほんの一例です。子どもが自発的に楽しいことが始められる環境やきっかけがあれば、きっと山登りがその楽しい時間に変化します。ぜひ一緒に山へ行く子どもがワクワクする、いろいろな組み合わせを探してみてください。
次回は「動作」「行動」にミックスするとさらに子どもが楽しくなる、遊びのエッセンスを紹介します。
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プロフィール
長谷部雅一
アウトドア・プロデューサー。アウトドア系プロジェクトの企画・コーディネート・運営のほか、幼稚園や保育園のコンサルタント業務も行なう。『アウトドアファブリック大全』(グラフィック社)、『自然あそびで子どもの非認知能力が育つ』(東洋館出版社)、『ネイチャーエデュケーション』(みくに出版)など著書多数。
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