せっかくの親子登山で険悪ムード?! “親・祖父母”という立場の弊害をクリアする方法

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はじめての親子登山に疑問はつきもの。子どもの野外体験や野外教育を手がけるアウトドアプロデューサーの長谷部雅一さんが、子どもと山に登る楽しみや成功のヒントを紹介します。

 

親子登山の弊害は“親”や“祖父母”であること?

自分の子どもや孫は可愛い。そして何に変えても守りたいという無償の愛を持って接したい対象でもあります。そんな子どもと一緒に山を登るわけですから、「あれをしたい」「こんな思い出が欲しい」「これを食べさせてあげたい」「こういうふうに時間を過ごしたい」などなど、やりたいことがいっぱいあるのが当然です。

でも、近しい関係であるが故の弊害もあります。人は千差万別ですが、親は「感情」が入ってしまい、祖父母は「優しすぎる」ことが弊害になることが多いです。

感情は冷静な判断ができなくなるため、時には険悪な空気を生みます。優しさは時には単調で安心、安全すぎてつまらない時間になってしまうことも…。

みなさんも思い当たる節はないでしょうか? かくいう僕も、悲しいかなその経験者(しかもたくさんあります)のひとりです。

 

役割を変えながら山登りを楽しもう!

親や祖父母という立場故の不都合を少しでもなくして子どもと楽しい時間を過ごすためには、登山中に自分の役割を時々変えてみるのがおすすめです。親族に言われるとイラッとするのに他の人に言われると素直に受け入れられるといったシチューエーションは、みなさんも経験があると思います。これが役割を変える効果のひとつです。

この差には、もちろん親族と他人という大きな違いもありますが、実はどんな役割の人が自分に言っているのか?というのも心の動きに大きな影響を与えます。僕の経験でも、いつもの妻に、「少しダイエットしたら?」と言われるとイラッとするのに、妻が僕の身体を気遣ってくれるドクターモードで言われると、なぜか受け入れやすいといった事があります。

これが面白いほど効果があるから不思議です。みなさんもシチュエーションに合わせて少し「役割」を意識しながら子どもと登山をしてみましょう

 

おすすめの3つの役割

では、親や祖父母といった立ち位置以外にどんな役割をすればいいのか?これから紹介していきます。僕の著書『自然あそびで子どもの非認知能力が育つ(東洋館出版社)』ではこういったシーンにも有効な6つの役割を紹介していますが、ここでは特に実践しやすい3つの役割を紹介します。

 

1:ガイド

ガイドは、安全に案内する人のことです。山でいえば、ガイドは対象者の体力や技術、精神状態を加味して、いま目の前にある自然現象とフィールドを可能な限り安全に案内することを優先して行動をします

この役割を演じているときは、感情は抜き。「なんでできないの?」「やってあげるね」といったのは心の中でストップをかけて、子どもが安全に挑戦できる場づくりをし、時にはコース変更や撤退までを想定した登山計画を現場で判断しましょう。

 

2:ティーチャー

ティーチャーは、そのまま「先生」のことです。相手が知らない知識を、相手の学習レベルや言語レベルや意欲に合わせて教えるのが役割です。最近では、対象者自ら学びたいことを見つけ、そして追求するための援助をすることも含まれます。

この役割の時は、イライラはなし。分刻みでやってくる「なんで攻撃」は学びの欲求サインです。可能な限り、子どもの学習欲を満たしてあげられるように素敵な学びの場にしていってあげましょう。

 

3:エンターテイナー

対象者の趣味や趣向、性格に合わせて楽しませる人のことです。楽しませる手段は、相手が嫌な気持ちにならなければ問いません。歌でも、踊りでも、トークでも、ちょっとしたいたずらでも、対象者が楽しい気持ちになれることがポイントです。

山登りをしていると、疲れ、ちょっとした怪我、雨、風、気温の変化、空腹など、様々な要因で気持ちが下がってしまうことがあります。そんな時は、エンターテイナーの活躍時です。どんな状況でも楽しむ気持ちを大切にすれば、きっと登山は最後に「楽しかった」になります。

 

親や祖父母と役割の比率を大切に!

心から伝わるメッセージや、何にも代えがたい安心感、そして愛など、親や祖父母だからこそできることはたくさんあります。ですから、決して親や祖父母を完全に消す必要はありません。あくまでも親や祖父母の役割が弊害になりがちな部分を、紹介した3つの役割でクリアしていくイメージでいていただければいいと思います。

また、紹介した3つと親や祖父母の役割は、瞬間瞬間で比率を変えていくとより効果的な場になります。イメージとしては、合計4つの役割をグラフにするとわかりやすいと思います。ある時は、「親・祖父母は20%」「ガイドは10%」「ティーチャーは50%」「エンターテイナーは100%」など、その時々のシチュエーションに合わせて変えていくと良い場づくりをしていくことができます。

長い年月をかけて積み重なって育った心をコントロールするのはとっても難しい事です。役割を変えながら、さらには演じる気持ちで子どもと楽しい登山や登山前の山が好きになる自然遊びの時間にチャレンジしてみてください。​

 

「夏休みは子どもと山に行こう!」オンライン講習会のアーカイブを公開中!

 動画の中でも、今回紹介した役割の考え方を紹介しています。ぜひチェックしてください。

プロフィール

長谷部雅一

アウトドア・プロデューサー。アウトドア系プロジェクトの企画・コーディネート・運営のほか、幼稚園や保育園のコンサルタント業務も行なう。『アウトドアファブリック大全』(グラフィック社)、『自然あそびで子どもの非認知能力が育つ』(東洋館出版社)、『ネイチャーエデュケーション』(みくに出版)など著書多数。
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はじめての親子登山のヒント

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