スノーシューの選び方を解説!種類や目的別のポイントについて

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雪化粧した世界を満喫するスノーハイキングを楽しむには、“スノーシュー”と呼ばれる道具が必要です。最初はレンタルがお手頃ですが、いつかは所有したいと思うはず。「どれを買えばいいか分からない」と迷わないように、基本的な種類と選び方をチェックしておきましょう!

文=吉澤英晃、写真=福田 諭

目次

スノーシューの基礎知識

スノーシューは、足に装着することで雪上での歩行をサポートする道具です。

スノーハイキングを楽しもうと思ったとき、積もったばかりの雪に足を踏み入れたらどうなるでしょう。おそらく、足元がズボッと沈むはず。このとき、雪の深さが膝上まであったら、全然前に進めません。

そこでスノーシューの出番です。

スノーシューを使うと雪に接する面積が広くなるので、足元が沈みにくくなります。それはまるで「雪の上に浮いている」ような感覚といえるでしょう。

雪に足を取られなければ行動範囲が広がり、移動距離も稼げます。さらに、裏側には雪面を捉えるブレードが付いているので、スリップを防ぎつつ前に進もうとする力を得ることもできます。

スノーシューは、スノーハイキングや積雪量が多い雪山を登るときに欠かせない装備です。

スノーシューの種類は主に3つ

スノーシューは主に「山岳用」「ハイキング用」「ランニング用」の3つのタイプに分かれます。

【山岳用スノーシュー】グリップ力が高い登山向き

左)MSR/ライトニングアッセント 中央)ATLAS/レンジMTN 右)TUBBS/フレックスVRT

山岳用は登山での使用を想定したタイプです。3つの中でもっともグリップ力が高く、斜面を横切るようなルート取りでも足元が滑りにくいモデルが多いです。坂を登るときにかかとを支える「ヒールリフター」と呼ばれるパーツが標準装備されています。

おすすめのアクティビティ

  • バックカントリースキー
  • スノーボード
  • 雪山登山

【ハイキング用スノーシュー】雪原散策にちょうどいい

左)MSR/EVOエクスプローラー 中央)ATLAS/ヘリウムTRAIL 右)TUBBS/フレックスTRK

ハイキング用と山岳用の主な違いは、本体の裏側に備わるブレードの数が少ないといった点になります。山岳用と比べると若干グリップ力が劣りますが、充分な歩行性があり、ヒールリフターを備えるモデルも多いです。

おすすめのアクティビティ

  • 雪原など比較的傾斜がゆるいフィールドでのハイキング

【ランニング用スノーシュー】スノーランに特化した軽量タイプ

ATLAS/スノーラン

名前の通り、雪上を走るために作られたスノーシューがランニング用です。グリップ力はハイキング用よりも劣りますが、圧倒的に軽いという特長があります。軽量化を図るためにヒールリフターは付いていないことが多いです。

おすすめのアクティビティ

  • スノーランニング

スノーシューを選ぶときは、目的のアクティビティに向いているタイプの中から検討しましょう。

「長さ」と「収納サイズ」にも注目

タイプが絞り込めたら、スノーシューの「長さ」と「収納サイズ」についても考えましょう。

サイズが長いほど沈みにくい

かかと側の長さの違いでスノーシューの足元の沈み込みを抑える力に差が出る

スノーシューにはサイズがあり、縦に長いほど足元の沈み込みを抑える力(浮力)が高くなります。体重+背負う荷物の重さに適したサイズを明記しているメーカーもあるので、選ぶときの参考にしましょう。

しかし、長くなるほど小回りが利かなくなり、重たくなってしまうデメリットも。

そのため、山登りで使うなら多少の浮力を犠牲にしても、軽さを優先させた方が有利に働く場合もあります。逆に、半日程度のハイキングが主な目的なら、重量に対して充分な浮力を得られるサイズを選びましょう。

バインディングで収納サイズが変化

スノーシューに靴を固定するパーツを「バインディング」と呼びます(「ビンディング」と表記されることもある)。スノーシューを選ぶときは、バインディングによって収納サイズが異なる点にも注目しましょう。

特に意識したいのは、アイゼンに履き替えたあとにスノーシューを持ち運ぶ必要がある登山のときです。

伸縮性のあるバンドやストラップで靴を固定するタイプのバインディングは、両足のスノーシューを重ねたときに、かさばりにくいという利点があります。

これなら、バックパックの雨蓋に挟む場合や、左右それぞれをサイドストラップに固定するときも、コンパクトにまとめられます。

一方、素早く靴を固定できるBOAフィットシステムやラチェット式のバインディングは、硬いパーツがあるため重ねたときに少々かさばってしまいます。

終始スノーシューを履いたまま行動する場合は問題ないですが、いざバックパックにスノーシューを取り付けようと思ったとき、このかさばりが気になるかもしれません。

山岳用とハイキング用のおすすめはこれ

スノーシューを使用目的から選ぶ場合、以下の2つの考え方が参考になるでしょう。

頂上をめざす山登りで使う

タイプ
山岳用
サイズ
適正サイズか小さいもの
バインディング
コンパクトに収納できるバンドやストラップタイプ

麓を歩くハイキングで使う

タイプ
ハイキング用
サイズ
適正な大きさ
バインディング
好みで選んでOK

目的にぴったり合うスノーシューを手に入れて、どこまでも白い大自然を楽しみましょう!

さらに詳しいスノーシューのパーツと機能については下記の記事で解説しています!

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スノーシューが役立つフィールド、適さない地形

便利なスノーシューにも、役立つフィールドと適さない地形があります。雪山を安全に歩くには、その場に合った道具を選ぶことが大切です。

スノーシューが役立つフィールド

踏み跡が一切ないノートレースの雪原を歩く(大渚山)

1.積もったばかりの雪が多い

降雪直後の雪は柔らかく、登山靴のまま歩こうとすると、すぐに足を取られてしまいます。スノーシューはこういった状況でこそ本領を発揮。足に装着することで格段に機動力がアップします。

2.踏み固められたトレースがない

積雪量が多いフィールドであっても、足元が沈まないほど明瞭な踏み跡がついていたらどうでしょう。もしそこが滑落の危険がないなだらかなエリアなら、チェーンスパイクなど軽い装備を選んだ方が歩きやすくなるかもしれません。

3.起伏の少ないなだらかな地形

スノーシューは12本爪アイゼンほどグリップ力がなく、急斜面の登下降も苦手です。滑落の危険がある場所は避けて、「起伏の少ない雪原」や「傾斜がゆるい広い尾根」がスノーシューの適切な使用範囲と覚えましょう。

スノーシューに適さない地形

スリップが許されないシビアな場面。アイゼンを装着して慎重に歩く(鹿島槍ヶ岳東尾根)

1.森林限界以上の細い稜線

スノーシューを装着すると、足幅が広くなり小回りも利かなくなります。切り立つ稜線上では細やかな足さばきが必要になるので、ここではアイゼンの出番です。

2.硬い雪面

スノーシューにはアイゼンほど鋭い爪が付いていないため、スリップする危険があります。

3.爪先を蹴り込みたくなるほどの急傾斜

スノーシューは爪先を斜面に蹴り込んで足の支えにすることができません。下りも本体が邪魔をしてかかとを蹴り込めないので、バランスがわるくなってしまいます。雪が深く傾斜が急なルートでは、ワカンの方が有利です。

コラム:スノーシューとワカンは何が違う?

現代のワカンはアルミ製が主流。数は少ないが木製のワカンも作られている

スノーシューと同じく雪面での足の沈み込みを抑える道具に、古くから日本の雪国で使われてきた「ワカン」(輪かんじき)があります。

ワカンは、アルミ製のパイプや木の枝を曲げて輪っかにした形状で、浮力を得ながら、急斜面の登り下りでは靴の爪先とかかとを蹴り込める利点があります。アイゼンと重ねて装着することもできます。また、軽くて小回りが利く点もワカンの大きな特長です。

スノーシューは“面”で重さを分散する一方、ワカンは輪っか状のフレームが足元の沈み込みを和らげる

ただ、雪面を捉えるブレードが両脇の2枚しかないので、グリップ力は低いです。接地面積もスノーシューほど広くないため、浮力でも劣ってしまいます。

スノーシューと比べた場合、性能の差は以下のようになります。

グリップ力
ワカン < スノーシュー
浮力
ワカン < スノーシュー
小回り
ワカン > スノーシュー
軽さ
ワカン > スノーシュー

雪山で足回りをスノーシューにするかワカンにするかは、悩みが尽きない問題です。ただ、積雪がそれほど多くない山域や急斜面の登下降が予想できるルートに行く場合は、スノーシューではなくワカンを選んだ方がいいといえるかもしれません。

目次

プロフィール

吉澤 英晃

1986年生まれ。群馬県出身。大学の探検サークルで登山と出会い、卒業後、山道具を扱う企業の営業マンを約7年勤めた後、ライターとして独立。道具にまつわる記事を中心に登山系メディアで活動する。

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