スノーシューのディテール紹介。フレームやバインディング、ヒールリフターの特徴や違い

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店頭やネットショップでスノーシューを見たとき、一目で特徴を把握できると買い物に有利ですよね。スノーシューはひとつひとつのパーツに意味があり、それぞれの違いが商品の個性となって使い勝手に影響します。ディテールを確認しながら、機能と特徴を学びましょう。

文=吉澤英晃、写真=福田 諭

目次

ディテールを知れば特徴が分かる

スノーシューの特長は、ひとつひとつのパーツが担っています。

スノーシューの核ともいえる浮力を生み出すのが、フレームもしくはデッキと呼ばれるパーツです。そのメインボディを中心に、表側には靴の装着や斜面の歩行性に関わるパーツ、裏側にはグリップ力に関連するパーツが組み合わさっています。

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【フレームとデッキ】浮力をつかさどるメインボディ

雪に足を置いたとき、接地する面積を広げるスノーシューの本体がフレームとデッキです。種類は主に3つ。構造の違いがグリップ力にも影響します。

金属製のフレーム+ファブリック

周囲の金属フレームが360度のグリップ力を提供。さらに、横に2列並ぶブレードが前後のスリップを防ぐ(MSR/ライトニングアッセント)

金属製のフレームの内側に高強度のファブリックを取り付けた構造は、フレーム自体が雪面を捉えるブレードになっていて、グリップ力に優れます。山岳用のスノーシューは、この構造を採用しているモデルが多いです。

プラスチック製デッキ

ブレードは2本左右に備わる。斜面を横切るときなどにスリップを防ぐ役目がある(TUBBS/フレックスTRK)

デッキがプラスチックで作られているタイプは、フレームがなく、耐久性の高さが特長です。裏側にグリップ力を生み出す金属製のブレードが取り付けられていて、金属フレームと比べるとしなやかさがあるので、地面の起伏に対してフラットに接地しやすいという利点もあります。

金属製のパイプフレーム+ファブリック

大きなブレードは付かなくなり、代わりに中央付近に小さな爪が取り付けられている(ATLAS/スノーラン)

パイプ状の金属フレームに高強度のファブリックを取り付けた構造があります。大きなブレードが付かないモデルが多く、軽さを意識したランニング用やハイキング用の低価格帯のモデルに採用されることが多いです。

【バインディング】靴を固定する連結部分

足を入れて靴を固定するパーツを「バインディング」(ビンディング)と呼びます。装着方法は主に3種類。スノ―シューの使い勝手にも関わる大切なパーツです。

ストラップ

MSRが開発した“面”で靴を固定するパラゴンバインディング。左右のストラップでフィット感を調整する。複数のストラップを使って“線”で固定するモデルもある

伸縮性のあるゴム製やナイロン製のストラップで固定するタイプは、もっともオーソドックスな装着方法といえるでしょう。靴を固定するまでに少々手間がかかりますが、万が一ストラップが切れたとしても、替えを持っていれば簡単に直すことができます。収納するときにかさ張らないのも、このタイプの利点です。

BOAフィットシステム

BOAフィットシステムは、ダイヤルを押し込んでから右に回すとワイヤーが締め込まれる。ダイヤルを持ち上げると一発でワイヤーをリリースできる解除の素早さも特長だ

ダイヤルを回すことでワイヤーが締め込まれ、均一なフィット感を得られる方法が「BOAフィットシステム」です。しかもこのダイヤルは片手で操作可能。ほとんど力を使わずに無段階でフィット感を調整できる点もこのシステムの特長です。ただ、修理には交換用パーツと専用の工具が必要になります。

ラチェット

いくつもの刻みがあるストラップをラチェットに差し込んだあと、黒いレバーを持ち上げるとストラップが締めこまれていく。リリースは赤いレバーを持ち上げて行なう

レバーを操作してバンドを締め込み、靴を固定する方法がラチェットです。装着の素早さはBOAフィットシステムに劣るものの、弱い力でフィット感を得られる点は魅力的。レバーが故障した場合の修理は難しいですが、障害物が少ないフィールドで使うぶんには過度に心配する必要はありません。

【ヒールリフター】急な斜面で登りをサポート

グレーの引手が付く黒いパーツが「ヒールリフター」。「テレベータ―」と呼ばれることもある

斜面を登るときに役立つのが「ヒールリフター」と呼ばれるパーツです。メーカーによって名称が異なりますが、本体のかかと側にあるコの字型のパーツがそれに当たります。

ヒールリフターは手で持ち上げてもいいし、トレッキングポールのグリップの突起部分を引っ掛けてもいい。トレッキングポールを使うと立ったまま操作できる

斜面を登るときにヒールリフターを立ち上げると、足が水平に保たれるのでふくらはぎが疲れにくくなります。逆に、平らな地形や下り坂では体が前のめりになってしまうので畳んだ状態に戻しましょう。

【クランポン】トラクションを生む鋭い爪

TUBBS フレックスVRT(山岳用モデル)のクランポン。計6本の爪があり、前方の2本は長く尖っている

バインディングの裏側に付いている爪を指して「クランポン」と呼びます。モデルによって形状に差がありますが、役割に違いはありません。爪が雪面に食い込むことでスリップを防ぐグリップ力が生まれ、同時にトラクション(=牽引力:地面と足が滑らずに引っ張る力)も得られます。また、フレーム上部についているブレードも高いトラクションを生み出すのに重要な役割をはたします。

TUBBS フレックスTRK(ハイキング用モデル)のクランポン。爪の数は3本になり、長さや形も山岳用のフレックスVRTと異なる

クランポンの爪が長く大きくなるほどグリップ力は高まりますが、重くなり雪面に引っ掛けやすいったデメリットも。逆に短く小さくなると重量は軽くなりますが、グリップ力は低下してしまいます。いくつかモデルを見比べて、そのスノーシューが重視する性能をチェックするといいでしょう。

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プロフィール

吉澤 英晃

1986年生まれ。群馬県出身。大学の探検サークルで登山と出会い、卒業後、山道具を扱う企業の営業マンを約7年勤めた後、ライターとして独立。道具にまつわる記事を中心に登山系メディアで活動する。

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