中央アルプス・木曽駒ヶ岳 千畳敷カールの深雪を踏みしめ、快晴・烈風の稜線へ

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本格的雪山登山の第一歩として人気が高い木曽駒ヶ岳。新雪の千畳敷カールをかき分け、烈風にさらされつつ快晴の木曽駒ヶ岳登頂をめざします。

写真・文=奥谷 晶

木曾駒ヶ岳より、厳冬期の姿を見せ始めた宝剣岳。檜尾岳、空木岳へ連なる稜線の前に現前とそびえ立つ

中央アルプスの木曽駒ヶ岳は、標高2612mまで駒ヶ岳ロープウェイでアクセスができるため、3000m級の本格的な雪山登山が日帰りでも楽しめる山として人気があります。短いコースとはいえ、雪崩や滑落の危険もあるので、充分な注意が必要です。

MAP&DATA

木曾駒ヶ岳地図

コースタイム:千畳敷~乗越浄土~中岳~木曾駒ケ岳(往復):4時間30分

ヤマタイムで周辺の地図を見る

異常なほど雪が少ないと言われた2016年の冬ですが、昨日までに30cmから40cmほどの積雪があり、千畳敷カールも、白一面となり、ようやく厳冬期の姿を見せ始めたようです。昨日は今季最初の小規模の雪崩が発生したと聞きました。

千畳敷駅からは、前泊したと思われる登山者の先頭グループが八丁坂にさしかかり、早くも新雪にトレースを刻んで、稜線に向かう姿が見えます。先頭はワカンで、膝下くらいのラッセルのようです。そのあとを続々と登山者が続いて、後ろはアイゼンで充分なほどトレースがついていきます。

新雪の千畳敷カール。八丁坂から稜線をめざす登山者

乗越浄土への急傾斜は新雪の吹きだまりで、トレースを外れると膝まで踏み抜きがあるほどでしたが、稜線上は、新雪は吹き飛ばされて、クラストした状態でアイゼンがよく効きました。気温はマイナス15℃で、時折10m前後の風が吹いており、目出し帽や厚手の手袋など防寒装備は必須でしたが、次第に落ち着き、中岳を越えて、木曽駒ヶ岳に登頂する頃には快晴の日射しを浴びて絶好の登山日和となりました。

頂上からは三ノ沢岳、檜尾岳、空木岳へと連なる稜線をバックに宝剣岳の岩壁が映えて見事でした。

駒ヶ岳神社が鎮座する木曽駒ヶ岳山頂
乗越浄土から八丁坂の急斜面を慎重に下る

帰路は往路のピストンで戻りましたが、乗越浄土からの急下りは雪が凍った状態だと滑落の危険が大きいところですが、適度な積雪があり、比較的順調に降りることができました。千畳敷カールから、ロープウェイ駅までの斜面ではせっかく持ってきたので、ワカンをはいて登高の足慣らしをすることもできました。(取材日=2016年1月16日)

※積雪期の山は、雪の状態や天候によって、難易度、コースタイムが大きく変わります。計画時には必ず出発前後の天候やエスケープルート、山小屋などの避難できる場所を確認しておきましょう。


木曾駒ヶ岳データ

プロフィール

奥谷晶

30代から40代にかけてアルパイン中心の社会人山岳会で本格的登山を学び、山と溪谷社などの山岳ガイドブックの装丁や地図製作にたずさわるとともに、しばらく遠ざかっていた本格的登山を60代から再開。青春時代に残した課題、剱岳源次郎尾根登攀・長治郎谷下降など広い分野で主にソロでの登山活動を続けている。2013年から2019年、週刊ヤマケイの表紙写真などを担当。2019年日本山岳写真協会公募展入選。現在、日本山岳写真協会会員。

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