山で食事を楽しむクッカーの種類と選び方。「素材」と「形」に注目しよう

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食事に必要な器を用意するとき、登山では「クッカー」と呼ばれる道具を使います。これは、お鍋と器が一緒になった便利なアイテム。基本的な種類と、用途別のおすすめモデルを紹介します。

Contents

素材|軽さが魅力の「チタン」と料理が得意な「アルミ」
形状|料理を食べやすい「浅型」と、収納性に優れる「深型」

角型
吊り下げ式
フライパン

 

クッカーってどんな道具?

 

クッカーはアルミやチタンといった金属で作られる鍋のこと。英語で「Cooker」と書き、辞書を引くと「炊事用具、調理器具」と書かれています。

素材が金属なので火にかけることができ、茹でる、煮る、焼くのほか、炊飯といった調理も可能。持ち手がついているのでそのまま食器にもなり、食べ終わったあとの汚れを落としやすいという利点もあります。

大きなサイズから1人用まであり、調理に使う鍋はすべてクッカーに含まれるのですが、ここでは1人で使うソロクッカーについて説明します。

 

大きさは一食分650mlが目安

 

まず最初に、ソロクッカーを選ぶ上で気になる「容量」について紹介します。ここでは、カップラーメン1個、フリーズドライのスープ1袋、スティックコーヒー1本を一食分とした場合の容量を考えてみましょう。

カップラーメン:約300ml
フリーズドライのスープ:約160ml
スティックコーヒー:約180ml

合計:約640ml

もちろん用意する食材によって必要な容量は変わりますが、ソロクッカーはひとまず650ml以上を目安に考えておけば、小さすぎて必要な量のお湯を沸かせない、と後悔することはなさそうです。

 

選べるタイプは4種類。素材と形で好みを選ぼう

 

クッカーは素材と形状によって4つのタイプに別れます。

素材:チタン、アルミ
形状:浅型、深型

近年クッカーに使われている素材は「アルミ」と「チタン」が主流です。ステンレス製のクッカーもあるのですが、とくに装備の軽さを重視する登山では重たいステンレス製のクッカーを見かける機会が減りました。

素材と形状について、それぞれの違いを見ていきましょう。

 

素材|軽さが魅力の「チタン」と料理が得意な「アルミ」

 

まず、チタン製とアルミ製のクッカーは「値段」「重量」「熱伝導率」が違います。

値段に関していうと、チタン製はアルミ製よりも高価です。それでもチタンクッカーは多くの登山者に選ばれている人気アイテム。そこには、チタンクッカーは圧倒的に軽いという特長があります。

実は、チタンはアルミよりも重たい金属(比重で比べた場合、純チタンは4.51なのに対してアルミ合金は2.8)なのですが、強度がアルミ合金より約3倍も高いため、アルミと同じ強さの製品を作った場合、結果として軽くすることができるのです。

 

チタンクッカーでお湯を沸かすと、中央部分から沸騰し始めた

 

しかし、万能そうに見えるチタンですが、「熱伝導率」が低いという欠点があります。

熱伝導率とは熱の伝わりやすさを表す数値で、数値が大きいほど熱が伝わりやすく、数値が小さいほど熱は伝わりにくくなります(純チタン:17.0 w/m・k、アルミ合金:137.0 w/m・k ※数字は参考値)。

熱伝導率は、焼く、炒める、お米を炊くといった調理に影響が出る性質で、たとえば熱電度率が低いと熱にむらができるため、火が当たる真ん中の食材だけすぐ焼けて、周りは生焼けといったことにもなりかねません。一般的にチタンクッカーは調理に不向きといわれますが、それは熱伝導率の低さに理由があります。

 

アルミクッカーは熱が広がり全体から沸騰が始まった

 

一方、熱伝導率が高いアルミクッカーはまんべんなく熱がまわるので、とくに炊飯にはもってこい。焼き物や炒め物も得意なので、調理目的でクッカーを選ぶならアルミ製がいいといえます。

 

値段
チタン > アルミ
重量
チタン < アルミ
熱伝導率
チタン < アルミ

 

形状|料理を食べやすい「浅型」と、収納性に優れる「深型」

浅型クッカーと深型クッカーは、「食べやすさ」と「収納性」に違いがあります。

 

モンベル/アルパインクッカー14は、平たい形に蓋が付いてくる浅型クッカーの代表例

 

浅型クッカーは開口部が広く底までの距離が短いので、よそった料理を食べやすい点が特長のひとつです。さらに、底板の面積が広くなるほど形がフライパンに近づくので、焼く、炒めるといった調理がしやすくなります。

 

浅型クッカーは深さがないので、カートリッジを入れると蓋ができない

 

ただし、浅側クッカーは収納性の悪さが少々ネック。

荷物をパッキングするとき、一緒に使うガスカートリッジとバーナーをクッカーの中に入れると効率的です。しかし、浅型クッカーにガスカートリッジを入れると蓋ができない問題が。バーナーだけでもと思ってクッカーの中に入れてみると、今度は余分な隙間が生まれてしまい、カタカタと鳴る音がストレスに感じます。

 

 

一方、深型クッカーはガスカートリッジがピッタリ収まるサイズで作られているものが多く、なおかつバーナーも一緒に収納できるものが大半。不快な音が鳴ることもなく、効率的にパッキングできます。

 

シンデレラフィットでガスカートリッジが収まり、その上にバーナーをのせても蓋ができる

 

ただし、深型クッカーにはよそった料理が少々食べにくいという欠点があり、食材を焼く、炒めるといった調理にも向きません。

 

左は蓋が浅型クッカーになっているモデル。プリムス/イージークック・ソロセットS。右は蓋がフライパンになっている。プリムス/ライテックトレックケトル&パン

 

そんなとき便利なアイテムが、浅型クッカーと深型クッカーがセットになった商品です。クッカーの形で悩んだら、こちらのタイプを選ぶことをおすすめします。

 

食べやすさ
浅型 深型
収納性
浅型 < 深型

 

ほかにもある、変わり種のクッカーたち

素材、形状とクッカーの種類と特長を紹介してきましたが、その中に含まれない、変わったクッカーも存在します。

 

角型

角型クッカーはお弁当箱のような形が特長。モンベル/アルパインクッカー スクエア 12+13セット

 

一般的なクッカーは丸い形をしているのに対して、四角い形をしたクッカーがあります。角があるとパッキング時に余分な隙間が生まれにくいといったメリットがあり、沸かしたお湯を注ぎやすいという特長も。

 

 

そして、なにより魅力的なのは、四角い即席麺がぴったり収まる点でしょう。麺をクッカーの中に入れて持ち運べば崩れる心配がなくなり、麺を折らなくても調理することが可能です。

 

吊り下げ式

吊り下げ式クッカーは、普段から焚き火を楽しむ沢登りなどで人気が高い。エバニュー/Backcountry Almi Pot

 

ハンドルではなく弦のような持ち手がついているクッカーがあります。一見使いづらそうに見えますが、棒やワイヤーを使えば吊るすことができ、火にかけても持ち手が熱くなりにくいといった点が特長です。焚き火を利用した調理場面でよく使われています。

 

フライパン

焦げ付きにくいフライパンがあると調理の幅がグッと広がる。エバニュー/Ultra Light パン #14

 

クッカーにそっくりな調理器具に「フライパン」があります。こちらは食材を炒める、焼くといった、調理に特化したアイテム。ひとつ持っているだけで料理のバリエーションが広がります。

 

内側で光るコーティングが焦げ付きを防いでくれる

 

ちなみに、フライパンの表面には基本、焦げ付きを防ぐノンスティック加工(テフロン加工やセラミック加工が有名)が施されています。クッカーにも同じ加工が施されているモデルがあるので、山でしっかり料理を楽しみたい方はチェックしてみるといいでしょう。

 

用途別のおすすめ紹介

最後に、用途別のおすすめモデルをまとめて紹介します。山で楽しむ食事シーンを思い浮かべて、ベストなクッカーを手に入れてください。

 
お湯を沸かすだけ、軽量化重視 素材はチタン一択。形は浅型、深型どちらでもOK。とにかく軽いものをチョイスする。
簡単な調理も楽しみたい 素材はアルミがおすすめ。浅型か、浅型と深型がセットになったもが使いやすい。フライパンがあるとなおいい。

 

写真=福田諭

プロフィール

吉澤 英晃

1986年生まれ。群馬県出身。大学の探検サークルで登山と出会い、卒業後、山道具を扱う企業の営業マンを約7年勤めた後、ライターとして独立。道具にまつわる記事を中心に登山系メディアで活動する。

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